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第十五球~不審者?~

 優那の話は地域では有名な話である。だからななだろうか、最近彼女への勧誘が増えているらしい。ここ最近で十以上のチームから誘いの声がかかっているんだとか。掛け持ちでも構わないから入ってくれとか助っ人でもいいから、といった様々な条件が提示されているようだが彼女はどれも丁重にお断りしているとのことらしい。

「もうこれで十四チーム目だよ。あははは」

 中には地区ベスト八くらいのチームもあったという噂もあるが、どうやら彼女はWS一筋でいくらしい。俺達にしてみれば喜ばしい限りだ。何て言ったって優那はウチのエースなのだ。それを引き抜かれたりなんかしたらチームの士気に関わる。

 いや、それよりももう彼女のピッチングを受けることが出来なくなるかもしれない。

 ……あれ?どうしてだろう。何故か俺はそう思ったのだった。









 夏の地区草野球大会が近付いてきた。レットナインズやシークレットウェポンズなど同地区のチームならどこも参加しているそこそこ規模の大きな大会である。この大会で優勝すると県の大会に進めるんだとか。優勝目指してやるしかないよな。絶対に勝ってやるよ。

 練習が終わって居残り練習をしている時、隣でボール拾いを手伝ってくれていた天野さんがこんなことを言った。

「あ、あの……成宮君、相談したいことがあるんだけど」

「どうかした?」

 普段、あまり話すことのない天野さんが珍しく居残り練習を手伝ってくれると言ったから、何か話でもあるのかとは思っていたけど。

「優那ちゃん、最近誰かに付きまとわれてるらしいの」

 はあ?

 思わずそんな声を上げそうになった。

「この前、練習から帰る途中に誰かが後をつけてきたらしくて。アパートの場所は知られないように色々工夫はしてるって言ってたけど私、心配で……」

「俺には何も言ってなかったぞ?」

「それは……優那ちゃんが成宮君には言わないでって。成宮君に心配かけたくないからって。だから……」

 おいおいおいおい。

 一大事って奴じゃねえのかこりゃ。所謂ストーカーか。まずは皆の味方、正義ではなく治安を守る国家権力ことポリスメン、つまりは警察(ちなみに将来警察官を目指している船木先輩の前でこんなことは口が裂けても言えない)に相談してみるのが一番だろう。

 が、そんな話を聞かされた以上、俺としても黙っている訳にはいかない。チームメイトに迷惑かける奴を許す訳にはいかない。

「あ、あの……成宮君?何だか顔が怖いよ?」

 そんなことを言われた。どうやら表情に出てしまっていたらしい。

「ところで優那はもう帰ったのか?」

「いや、まだグラウンド周りを走ってるんじゃないかな」

 自主練でグラウンド周りをランニングって、やっぱり彼女はウチのエースだよまったく。

 彼女がまだ帰宅していないことを確認。俺は辺りに転がっているボール拾い始める。こういう場合、さっさと警察に連絡するのが無難な手段なのだろう。けれどそれじゃあ駄目だ。俺の気が済まない。少しばかり危険な手段かもしれないがやってみるのもありかもしれない。

「なあ天野さん、ちょっと頼みたいことがあるんだけどさ……」










「い、いいのかな健翔君?」

「いいって。気にするなよ」

 後片付けを済ませ、ランニングを終えた優那とお隣さんである天野さんの三人で帰路を歩く。辺りは少し暗くなっていた。不審者が出ても不思議ではない。

「……今日はどうだ?」

「今日もつけられてるかも」

 尾行しているであろう人物に聞こえない程度の声で確認する。警察の前に策を打っておこうと考えた俺達は予定通り、俺と天野さんの住むアパートに入った。そして三人で部屋まで移動する。ここは最近建てられたアパートであり、最近のアパートによく見られる監視カメラという便利なやつが設置されている。もしかしたら犯人の顔が映っているかもしれない。

「それじゃあ今日もお疲れ様です」

「お疲れ珠子ちゃん」

「お疲れー」

 天野さんは隣である自分の部屋に戻っていった。俺は鍵を取り出し、部屋を開けて優那に言った。

「少し散らかってるけどどうぞ」

「お、お邪魔します」

 彼女を部屋に入れ、鍵をかける。そしてすぐにドアスコープを覗き込んで誰かいるかどうかを確認する。そこには誰もおらず、人がいるような気配はなかった。

 流石にここまでは誰もついてきていないか、そう思って俺はドアスコープから顔を離そうとした。その時、人影が俺の視界に映ったことに気付いた。慌てて覗き直すとそこには『誰か』が立っていた。俺からはそれが誰なのか、男なのか女なのか分からない。

「優那、予定通りに」

 部屋の奥に戻り優那にそう言って俺はベランダのドアを開ける。そして、玄関へ戻ると扉を開けた。

 それは一瞬の出来事だった。扉を開けた瞬間、そいつは俺を突き飛ばし、室内に侵入してきた。

 住居不法侵入。今なら警察に連絡しても大丈夫だろう。優那はベランダ伝いにお隣の天野さんの部屋に移動している。つまりこの部屋にいるのは俺とこの侵入者のみ。侵入者は黒いパーカーを身に纏っていた。フードを被っており、マスクをしているのでどんな顔をしているのかわからない。それが不気味だった。俺は部屋の中を見回していた侵入者に掴みかかり、そのまま床に倒れ込んだ。どんな面してるのか見てやろうと思い、マスクを剥がす。

 ………え?

「な、なななな何じゃこりゃあああああああああっ!!!!????」

 思わず大声を上げてしまった。その声を聞きつけたのか玄関から天野さんと優那が部屋に入ってきた。

「どうしたの健翔君……」

 二人とも侵入者の顔を見て言葉を失っていた。優那は目を見開いたまま「な、何でここに?」と呟く。侵入者は優那を見て楽しそうににやりとした。

「よぉ優那久しぶり。お姉ちゃんが会いに来てやったぜ」

 その顔は驚くほどに優那にそっくりだった。

 つーか、え?お姉ちゃん?

「ゆ、優那?この人は?」

「えっと……その人は」

「どうも初めまして!優那の姉の神川梨那かみかわりなでーす。よろしくね健翔君」

 何だよそれ!?

 俺は思わずそう叫んだ。

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