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兄妹の日常

最強の兄妹喧嘩

作者: 十奥海

 只今兄妹喧嘩中につき、学校の屋上は我々峰藤兄妹が占拠しております。

 お昼時でみんなが屋上でご飯を食べてすがすがしい気持ちになりたいところだが、俺たちはそれを邪魔している。別に好きで邪魔しているわけではない。

 学校の皆から、兄妹喧嘩をするのならば屋上でやれ、との言葉を頂いたので屋上を借りているのだ。教師も公認だ。

 俺は、別に喧嘩をしようと思ったわけではないが、妹の「峰藤みねふじ 紅流華くるか」が俺に何やら文句があるらしくやむなく屋上へ。

「お兄ちゃんなんで私の大事にしてた納豆食べちゃったの!あれはね、水戸から取り寄せたそれは、有名な納豆だったんだよ!」

 そう、今朝俺は紅流華より早く起きて朝食を食べていたのだ。そして、俺は白米だけで食べるのはなんだか味気が無かったので冷蔵庫を漁ったところ納豆を発見。それを食ったわけだ。

 それが、まさか紅流華の大事にしていた納豆とは知らずに。

 そもそも、なぜそこまで納豆にこだわるのか分からない。

「納豆ぐらい今度俺が買ってやるから勘弁してくれよ」

 俺は早急にこの状況から脱したいから、めんどくさいが納豆ぐらいならいくらでも買ってやっても金銭的にそこまで痛いわけでもないし買ってやることにする。

 だが、まだ納得いかない様子の紅流華。

「私は今日の朝納豆が食べれなかったことを怒ってるの!別に納豆なんて私が自分で買うもん!」

 その言葉を最後に紅流華は戦闘態勢に入った。

 腰を低く下ろし、こちらに駆けてくる紅流華。黒く短い髪は風になびいておでこが丸出しになっている。俺も身構えて迎撃の態勢をとる。

 ふと屋上のドアを見る。ドアは締め切られているが、なんだかざわついていた。恐らく野次馬って奴だ。なんせ俺たちの戦いは、

「死ねお兄ちゃん!」

 暴言と共に、包丁が飛んできたりするのだから・・・

 いつから隠し持っていたのか分からないが、紅流華の制服の内ポケットから包丁が出てくる。さらに出てくる、そしてまた出てくる。いくらでも出てくる。

 どこのマジシャンだと突っ込みたいが。こんなことは茶飯事だ。俺は無数に飛んでくる包丁をいくつかキャッチして他をかわす。

 最近はもうなれたものだ。

「なぁ、何をしたら俺は許してもらえるんだ?」

 軽く身をこなして俺は後退し、両手に包丁を構える。恐らくだが、この戦いは長引く。

 紅流華にとって納豆とはそれほどまでに大切なものなのだ。

「私の気が治まるまで」

 やはり、そう簡単に解決してくれそうな問題ではなかった。

 紅流華はさらにこちらに向かって跳躍してくる。それは、人間のそれとはまるで違って数メートルは飛んでいる。

 俺たち兄妹の戦いは、人並み外れているのだ。だからこそ屋上に追いやられるし、野次馬の数もそれはそれは多数だ。その大多数が格闘技の部活動をやってる奴らの野次馬が大半を占めているらしい。

 「せいや!」掛け声と共に、俺の頭上に落ちてくる。その手には右手にお箸、左手に胡椒と戦う気があるのかと問いたくなるものが用意されていた。

 しかし、侮ることは許されない。胡椒は目潰し。箸は攻撃手段として使ってくる。

 俺は、胡椒でくしゃみやら目潰しやらされたくないので逃げる。

 そのスピードは人並みから見れば韋駄天の如くと言った様子なのだろう。なんせ、俺たち兄妹は身体能力が普通の人の役2,3倍ある。

 身体測定の日には、適当にやっていてもいつもトップだ。砲丸投げなんて、野球のボールを投げるが如し。

 胡椒が効かないと判断した紅流華は、箸と胡椒をしまった。ってか、箸一回も使ってないし。そして、また内ポケットから出てきたのは二つのバタフライナイフだ。

「え~、包丁対バタフライナイフってちょっとずるくない?」

「いいの!」

 有無を言わさずその俊足の足で俺の方へと掛けてくる。

「はっ!」「てい!」「せい!」「ふん!」「納豆!」

 俺たちはまるで舞うかの如く近接戦闘を始める。

 カカカカカカカカカカカン

 包丁とバタフライナイフが織り成す金属音が鳴り響き、ドアの付近では、ついに近接戦闘が始まり盛り上がりは絶頂に達していた。観客にとっては近接戦闘が一番盛り上がるらしい。どうせ真似はできないというのに、参考にしているとか。

 しかし、俺は別に見られたくてやっているわけではない。さっさとけりをつけることにした。

 包丁を捨てて、紅流華の手の付け根を狙っててのひらで打ち込む。

 両腕に当てて、バラフライナイフは落とされた。

「にゃ!」

 驚いた様子で距離を取ろうとする。

「残念、時間切れ」

 俺は即座に紅流華の背後に回って首に腕を回し動きを止める。

 そして、動けなくなった紅流華のブレザーのボタンを外して脱がす。

「ん~!脱がすなー」

 もがきながら妖艶な声で抵抗する紅流華。

 ドアの向こうでは男たちが「うぉぉー!」と興奮しているが別にそういう行為をしようとしているわけではない。

 このブレザーには無限といっても過言で無いほどに凶器が詰め込まれている。だから脱がしているだけだ。

 ガスン!

 ブレザーは、元の重量とは数倍異なる重さになり金属音と共に地面に落ちた。

「はい、これで紅流華の負けね」

「う~…変態…」

 こうして、俺たちの最強の兄妹喧嘩は終止符を落とされた。

 外野からは、

「何やってんだ成也なるや!これからが本番だろー!」

 と俺の名前を呼んで、やじる野郎も居るが気にしない。正直疲れた・・・



紅流華「お、お兄ちゃん」

成也「ん?どうした?」

紅流華「な、なんかお兄ちゃんに服脱がされるのなんかちょっと、興奮したって言うかなんていうか」

成也「(こいつ…変態をこじらせたか)」



 この学校には、おかしな奴らが居る。

 そいつらは「紅流華新鋭隊くるかしんえいたい」だ。

 確かに、紅流華は身体能力も高く、胸は無いがスレンダーな体をしていて、なんといっても端麗な顔だちをしていてかわいいことこの上ないのだ。

 だが、俺は問いたい。新鋭隊ってのは一体何をしているんだ?

 近辺の世話は大体俺がやっている。むしろ俺以外では納得の行く結果を出せる人が居ないらしく最終的に俺に来るわけだが。

 紅流華に襲い掛かってくる奴なんてことごとく、すりおろし状態なほどに無残な結果になるわけだから、守っているわけでもない。

 やはり、何をやっているのかわからない…。

 そんな疑問を頭によぎらせながら俺は教室移動中。

 そこに、背後から紅流華が現れた。

「おにーちゃーん!」

 にっこりと微笑みながらこちらに近づいてくる紅流華は、内ポケットに手を入れていた。

 とりあえず、身構えておく。

「なんだよ?」

 気だるそうに返事をする。

「せい!」

 振り返った瞬間、紅流華の姿は消えて背後から包丁が飛んできていた。

 死角ではあったが、そんなブービートラップに引っかかるほど俺も甘くは無い。

 包丁は空しく俺を通り越していった。

 そしてその先に居た男子生徒に刺さる。「おふっ!」

「うわー!おい!大丈夫か!」

 俺は焦ってそいつの元へと駆け寄る。

「ふ…紅流華様の包丁で倒れるのならば本望……」

 ガクン

 現れた!これが新鋭隊って奴か。そして、こいつら結局何ができるわけでもないんだな。せめて言うなら、包丁の回収係りって奴か?

「えっと…大丈夫なのか?」

「ああ…大丈夫大丈夫急所は外れてるんであとは任せておけ」

 不意に、俺の目の前に現れた男の仲間と思われる人物が男子生徒の回収に入っていった。

 日々、こんなことが俺の知らない場所で起こっているのかと思うと、世の中案外俺の知らない場所で何か大きなことが動いてるんじゃないかと思える出来事だった。

「そ、そうか。じゃ俺は教室移動だから」

 そういって、俺はその場から立ち去っていった。

 そして包丁を投げた当の本人は

「お兄ちゃん遅いよ、なにしてんの?早くしないと次の授業遅刻するよ!」

 何が起きているのかは把握している様子は無かった。

 恐らく、こいつが新鋭隊の存在を知ることは無いんだろう。

「ああ、ごめんごめん。ちょっと、包丁の行方を捜しにな」

「そんなもの、誰かが片してくれるでしょ」

 無責任な妹で困ったもんだ。



新鋭隊員A「この包丁は?!あのよく通販でやってるよく切れる包丁!」

新鋭隊員B「まさか、この包丁で紅流華様がお料理を?!」

成也「(いいえ、投げる以外に使用目的はございません)」



 下校の時間だよ。

 他の生徒は普通に下校していた。

「お前今日の峰藤兄妹の喧嘩見てなかったの!?」

「え!?今日喧嘩してたの!?見たかったー」

 一般生徒と言うには少し違ったかもしれない。もしかしたら、新鋭隊か何かかも知れない。兎も角、そいつらは俺らの喧嘩の話で盛り上がっていた。

「お前今日は、紅流華ちゃんが脱がされてすっげよかったんだぜー。やっちまった小僧だなお前~」

「うるせえよ、また今度見るからいいし」

 観戦できなかった奴は何処か拗ねた様子。ま、俺にとっちゃどうでもいいことか。

 俺も下校中のその一人なのだ。

 だが、けして普通の下校途中じゃない。

「まてーーーー!ちょっと新しい技を試させろーー!」

 紅流華に追われているのだ。

 その紅流華の甲高い声が響き、下校中の男二人が振り向く。

 だが振り向いた瞬間、俺らはそこを過ぎ去って行った。

 俺らは、家の垣根を壁にして縦横無尽に駆けていく。それはもう、豹より早く。

 そして、縦横無尽に飛び交っているのは俺たちだけでなく包丁も飛び交う。

 そこの学生たち、気おつけてね。といっても、恐らく目にも留まらぬ速さで通り過ぎ去っていく姿を見るのが限界だろうが。

「お前の新技なんかに付き合ってられるか!他のやつに試せ!」

「やだ!ってか無理!」

「そんな危ない技をお兄ちゃんにしようとするんじゃありません!」

 そんなこんなで、俺は帰宅ルートをたどりながら逃げる。

「今の峰藤兄妹だよな?」

「あ、ああ、やっぱすげーな。通り風程度にしか認識できなかったぜ」

「って、お前体中すごいことになってるぞ!」

「うあ!なんじゃこりゃ!ってお前も体中納豆だらけだぞ!」

「これ、まさかさっき言ってた紅流華ちゃんの新技じゃないのか!?」

 ご名答。紅流華の新技「納豆投げ」。

 結局投げることに固執していることは変わらないが、食らった相手はねばねばでもう戦意喪失。って言うかこの一般生徒はなんか興奮してる様子だが。

「俺たちあの紅流華ちゃんの新技初めて食らった一人者だぜ!はっはー!」

「体中べとべとだがなんか元気が沸いてくる!これが納豆パワーか!ってこの納豆うまい!」

 体中をべたべたのねちゃねちゃにしながら、よく分からない方向へ喜びを感じる新鋭隊らしき人物なのでした。

 翌日学校では、近所で納豆まみれになって雄たけびをあげる不審者が現れると噂になったとかならなかったとか。



紅流華「包丁×納豆の擬人化・・・うん、これはいける」

成也「?」

紅流華「当然、包丁が受けで納豆が攻めよね…ウフフフ」

成也「(ついに、納豆と包丁に性欲をあらわしてきたか)」



 家のトイレ。

 俺は扉を開けて、まずは電気をつける。

 パチン

「よっ、お兄ちゃん」

 そこには、いつから居たか分からないが便器には、スカートを脱いだ紅流華が居た。

「・・・・」

 バタン


 小腹が空いたので、ちょっとコンビニに行こうと自転車を取りに玄関の横へと行く。

「よっ、お兄ちゃん」

 そこには、いつから居たか分からないが、荷台には紅流華が乗っていた。

「・・・・」

 とりあえず、コンビニはあきらめよう。


 買出しをしに、近くのスーパーまで出かけて、レジへと行く。

「いらっしゃい、お兄ちゃん」

 そこには、営業スマイル満点でレジに立つ紅流華が居た。

「・・・・」

 とりあえず、違うレジに行こう。

 後日聞いたが、潜入捜査の練習をしていたらしい。恐らく役に立つことは無いが…。


 風呂に入ろうと、風呂場の着替える場所に入ろうとする。

 だが、俺を甘く見るなよ、そう何度も引っかかったりしないからな。

 そう思い、今日は近くの銭湯へと行くことにした。

「いらっしゃい、お兄ちゃん」

 そこには、銭湯のカウンターに浴衣を来た紅流華が居た。

「・・・・・」

 結局、俺は銭湯に入って普通に帰った。


 お休みの時間。

 もう分かっている。どうせ俺の布団の中には紅流華が居るんだろう?

 しかも、布団が妙にもっこりしててもう隠れきれていない。ここまでバレバレなのは初めだ・・・まさか、今回はブービートラップ?

 考えていても仕方ないから、掛け布団をどかして寝る準備を始めてみる。

「おやすみ、お兄ちゃん」

 俺に背中を向けて、パジャマの背中に書いてある『ねんねころりぃ!』と書かれた文字を強調するかのように寝る体勢に入りきっている紅流華が居た。

 まさか、パジャマで想定外を狙ってきたか。

「・・・おやすみ、紅流華」

 俺は、一緒に寝るぐらいしてやっても良いか、と思い一緒に寝るのだった。

 最強の妹でも、甘えん坊な一面だってあるさ。むしろ、俺には甘えてばかりでいつも困るが……。そこらへんが、かわいいんだけどな。



体育の時間


紅流華「・・・・・」

成也「・・・・・」


 身体能力がチートとの事なので参加させてもらえませんでした。

今回は納豆が色濃くでてますね…もう自分でもやりすぎたって思いましたよ。でも此処は、俺のやりたい放題にやる場所だから気にしません。

やりすぎだよ!って思った方はご感想にお書きください。

作者が反省します。


しかしこのまま、シリーズを通して納豆はずっと出そうかと思ってます。

納豆にアレルギーがある方はご注意ください。

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