レイジー サム
その昔、サムというカエルがいました。
サムと同じ年頃のカエル達は自ら水に飛び込み、食べ物を取っていました。
なのに、なぜかサムは泳ぐこともせず、食べ物も自ら取ろうとしなかったのです。
サムは言いました。
「だって水は冷たいだろ。それに、泳ぐと疲れるじゃないか」
「虫は素早く逃げちゃうだろう?どうせ上手くつかまえられないよ」
サムは、泳ぐことができないので敵から身を隠すこともできないし、誰かがエサを運ばないと食べることもできません。
どんな生き物でも、食べ物を自分で取ることができなかったら、生きていけません。
仕方なく父親は、捕まえた虫をサムの口にぴょんぴょんと跳ねながら運ぶ毎日で、天敵である鳥が来たりすると、サムを大きな葉で隠し、自分が囮になってぴょんぴょんと飛び跳ねなければなりません。
父親はかなり歳をとってきていたので、そういった毎日にも寄る年のせいで体力的に限界がきていました。
父親がサムに虫を運ぶことが出来ない時は、サムの兄のビルというカエルに代わりを頼んだのです。
ビルは父親に頼まれると、仕方なしに父親がするようにサムの世話をしました。
父親もビルも本当はサムの怠惰を知っていたのですが、二人ともサムに無理強いをすることは可哀相だと思って続けるしかなかったのです。
繁殖期になってもそんな調子なので、サムのところには嫁にくるカエルはいません。
みんなが嫁を見つけて子作りをしているのを見て、サムは言いました。
「なんで僕には嫁ができないんだろう……」
だけどそんなサムの疑問に、「自分のことさえ律することができないものに、嫁なんかくるものか」という答えを父親もビルも知っていました。
ある日、ビルのガールフレンドのチェルシーが見るに見かねてビルに聞きました。
「どうして貴方の弟は自分で何もしないの?」
ビルはため息をつきながら言いました。
「俺だってこんなことしたくないんだよ。だけど俺がしないと父さんがしないとならないだろう?父さん、もう歳だからサムの世話を続けるっていうのは無理だし。俺も父さんにサムの世話を頼まれたら断ることできないんだよ。そうしないと父さんが無理をしてでもサムの世話をするから……」
チェルシーは、ビルの父親がサムの世話を続けるのは体力的に無理だとはわかっていました。
何かいい考えはないものかしら?とチェルシーなりに一日考えました。
翌日、ビルとチェルシーが考え込んでいると、サムが「腹が減ったよ、水の上をトンボが飛んでいるよ、あれ食べたい」と父親に向かって叫びました。
チェルシーはビルの困りはてた顔と、父親のうまく動かない体を見て、さすがに腹が立ちました。
ぴょんぴょんとサムの近くまで大きくジャンプすると、「そんなに欲しけりゃ自分で泳いで取りにいきなさいよっ!」と後ろ足でサムの背中を強く蹴り上げたのです。
サムは「うわあーっ」という雄たけびとともに水の中にポチャリとしぶきを上げて落ちました。
父親はびっくり仰天、ビルも一体どうなることやらとはらはらしています。
ところが、水の中のサムはカエル泳ぎを始めたのです。
顔を真っ赤にして不満一杯の表情を見せていましたが、ちゃんと上手に泳いでいました。
チェルシーは父親の前に行き、こう言いました。
「自分でエサを取ることもしない怠惰なカエル、繁殖期に嫁も作れない可哀相なカエルのサム、そんなカエルを作ったのはまぎれもない、父親の貴方よ!」
父親はチェルシーの言葉をうなだれて聞きました。
解っていたけれど、父親はサムを「まだ小さな子ども」のように世話をやき続けてしまったのです。
だからいつまでたっても、サムは一人前のカエルになれなかったのです。
父親もビルも、サムが彼らを悩ませていたとずっと思っていたけれど、実は悩みの元凶を作っていたのは彼ら本人だということをすっかり忘れていたのでしょう。
それ以降、父親もビルもサムの世話を一切しなくなりました。
サムは、お腹を空かせ死にたくなかったので、しぶしぶ水の中で泳ぎ、自分でエサを取り始めたのでした。
文章のナレーターの統一の修正をしました。 かきかたえんぴつさん、ありがとうございます。
誤字の訂正を加えました。 あるとさん、ありがとうございます。




