衝撃告白
「……ふー、いったいなあ。飼い犬に手を噛まれると言うかなんと言うか……。
ところで宮本、ここで突然ですがお知らせがあります」
「なんだよ」
漫画から顔を上げないまま瀬七の声に耳だけを傾ける。
りーでぃんぐナウやつに声を掛けるな、という俺なりの反抗心の表れ。失礼だとは思うけど。
早く続きが読みたいという考えで俺の頭の中はいっぱいで、ページをぺらぺらと捲り続ける。
しかしそんな少しの願いも叶わず、瀬七に両手で顔をグッ、と掴まれ漫画から顔を上げられる。
「聞いてください」
「はい」
渋々と話を聞く態勢をとると、実はなぁ、と手を離しながら前置きをして、瀬七が話し始める。
「お前を好きという子がいるという情報を手に入れまして。
なんて言うの? あなた、色恋は久し振りでしょう」
は?
「今はエイプリルフールじゃねぇぞ」
四月は四月でも四月十八日。
「いやいや冗談ではないし僕がちゃんと調査して手に入れた情報だから!
ていうかエイプリルフールならもっと凄いの吐くから!
僕の嘘と冗談はこんな物じゃないから! 来年は覚悟しな!」
やめてくれ。どんな嘘と冗談だよ。
溜息を吐いて、少し考える。
…………つまり、あれだろ。こういうのは
favoriteとかlikeとかloveとか、そういうことだろ?
favoriteは違うだろうけど。お気に入りじゃないよ。
「知り合いはあまり欲しくないのですが」
「あーそういえば宮本は友達と知り合いは門前払い主義者だったねえ。いやいや、いい話だとは思うよ?
特にこれといった特徴はないけど、どちらかと言えば可愛らしい子だし? ちょっと性格に難有りだけど」
「性格に難の有る知り合いとか彼女は欲しくないのですが」
「敬語止めてください」
むぅ、と頭の中でその俺を好きとか言う人について考えてみる。
同じクラス? 違うクラス? 同学年? 他学年? 性格に難有りってどんなだ? etc.
俺を好きなんて、そういう話は久し振りすぎて少し考え込んでしまっていた。
そうしている間に時間はどんどん過ぎていく。
「おー、赤石そこは俺の席だどけーい」
「んあーごめーん」
いつの間にかもうすぐチャイムが鳴る時間になっていて、俺の前の席の主が帰ってきた。
楽しそうに間延びした声で瀬七をどーんと押して、俺には一瞥もくれずに席に着く。
いつものことだから瀬七はそれを見ても何も言わない。
俺もなんとも思わない。悲しそうな表情はやめてくれ。
同情は、いらないから。
「じゃあ宮本、考えといて」
「……おう」
軽く手を振って自分の席に戻っていく。
手を下ろした後、漫画が下で潰れるのも気にせず俺は机に突っ伏す。
ぐしゃり、という音がした。
やっぱ、友達やら知り合いなんかいらねぇ。
心から思った。