朗報機関
赤石瀬七は不思議なやつだ。
人の事には躍起になってでも干渉してきて、何もかも引っ掻き回してくる。
それが迷惑とか嫌だとかどうとか聞かれるとそうでもないんだけれど、むしろ感謝することも多々ある。
でもあの性格はなんとかならないかと、日々悩む俺がいるわけだが。
それを抜きにしたとしても、瀬七はやけに俺に構ってくる。
そりゃ、お節介とかそういうわけじゃなくて気紛れなんだろうけど友達になったあの日から、高校二年生になった今日まで
友達でいられて親友になったのは、互いに支え合うとかそういう青春臭いことをしてたせいだろう。
そういうことにしなくては、俺の気遣いの心が痛む。
そんなもの、無いけれど。
あまりに俺に構う瀬七に対して、自分のことはどうでもいいのか? と聞くと
「はは。自分のことどう思ってるかだって? 一番好きに決まってるじゃないか!」
と言いやがった。ナルシストかよ。
でもまあ、瀬七と俺の友情は不滅だぜ! とか少年漫画臭いことを言っておく。
それで、場を治めようか。
「おや、おはよう宮本。今日もお一人様ですか。まったく、寂しい奴だねぇ。
同情なんて通り越して一抹の哀れみさえ感じてしまうよ」
少しの気遣いを見せることもなく、気持ち良い程の毒舌で瀬七が朝の挨拶らしきものをしてきた。
……うん、泣きそうだ。耐えろ俺のメンタル。
瀬七の言葉通り、実際に俺は一人で自分の席に着いて漫画を読んでいた。
しかも、俺の席は教室の中でも一番後ろの一番窓際。校庭がよく見える。いい天気で何よりだ。
そんな席にしかも一人でいるもんだから、とても孤独な奴に見えるんだろう。
瀬七の席は対照的に一番前にあるが、そんなことを気にすることなく自然に俺の前の席に着く。
「どうやら、高二になっても登校時刻の20分前に学校に来る癖は治ってないみたいだね。
そんなに早く来ても暇だろう? 特に用事があるわけじゃなかろうに。
それとも、あれ? 一人で登校する様を見られたくねぇ、とか?」
後ろを向いたまま、椅子の背もたれに前傾姿勢で、もたれ掛かる様な格好のままで話しかけてくる。
俺は漫画をパタンと閉じてドン、と瀬七の頭を漫画で小突いた。
うるっさい。
「いたっ」
「ふん。登校する時間なんてどうでもいいだろ。癖はなかなか治らないとか言うし」
「そんなこと言っちゃって。本当は友達が僕しかいないから一緒に登校する相手が」
瀬七の言葉を遮るようにもう一回、ゴツン! と今度はより強く漫画を瀬七の頭に振り下ろした。
いってぇ! とさっきより大げさに喚く瀬七を横目に、また漫画を読み始めた。
これで、少しは静かになってくれたらいいものなんだがな。