警報警鐘
「うあぁ……」
パフェの上に乗っていた、バナナもクリームもその他のフルーツも白玉も食べ終わりアイスクリームも無くなる頃、頭がキーーンとなった。おう、イタイイタイ。
スプーンを紙ナプキンの上に置き、米神を強く押さえる。
こんな事をしても意味が無いのは分かっていたけれど、何かしていないと背筋に余計に力が入り張り詰めてしまいそうだった。
悠太がコーヒーを飲んでいた手を休め、こっちを不審そうに見てきた。やめてくれ。
「どうした」
「あったまいたいー……」
ぬああぁぁぁ、とテーブルに突っ伏しながら唸る。
あたしは基本、かき氷やアイス、ソフトクリームやシャーベットにしろ、冷たい物を食べ続けていたらすぐに頭が痛くなる。
冷たい器を額に付けたら治まる、とか聞いたことあったから家ではいつもやっているけれど、ここは家じゃなくてお店だ。
人目が憚られるからどうもできない。うー、今回はなかなか治まらないな。
「一条、ケータイ震えてる」
「ん? あぁ……本当だ」
悠太の指差す方向で、あたしの携帯電話が微かに震えていた。
バイブの振動のせいでテーブルが震えていたのだけれど頭痛に気がいっていて気づかなかった。
手に取り開くと、メール受信中だった。受信し終わるまで待つと、送信者の名前が出た。
【琴音】
何事かと思い、急いでメールを開く。題名は無し。
いつも題名からして凝っている琴音にしては、珍しい。メールの本文を見る。
[はろはろーももちゃん! ただいま、あややと一緒に駅にいるよー
ももちゃんの家に行きたいいんだけど、今いいかなぁ(・ω・?)
お金は二人とも持ってきてるからどっかに行くことも可能デッス(●>ω<●)
返信待ってるよ~お早めにヨロ~b]
うーん、女子高生だねー。顔文字がいっぱいで可愛らしいというかなんというか。
しかしこれは非常事態だ、とあたしの頭の中の警鐘が鳴り響いている。
ちょっと待ってよ、悠太と一緒にいることなんか知られたらいくらあたしでも嫉妬されるんじゃない? 面倒だー。
どうしようかなー、と思いながら悠太に相談してみる。
「どうされよう」
「何がだ」
ほらコレ、と言いながらあたしの携帯電話を悠太に差し出す。
受け取った悠太がその画面をスクロールしながら読んでいく。
読んでいく内に悠太の顔がどんどん青ざめていく。
読み終わったのか、携帯電話の画面をパタン、と閉じあたしに返してくる。
そこであたしが再び。
「どうされよう」
「どうにもこうにも……一条、腹括ってここに呼べ」
「……本当にいいの?」
「早く返さないと後々面倒だ。……今回一緒にいた理由を一から説明すればきっと大丈夫だろう」
「元はといえば、そっちが二年生女子と一緒にいたからだよ」
「じゃあ俺だめじゃん!!」
どっちにしろ! 殺されかねん! あーコーヒーが美味しいなぁ!
混乱と恐怖による悠太の半狂乱が始まった。
まだまだ熱いコーヒーを冷まさずに飲んだから、目の前でゲホゲホ言っている悠太を尻目に、琴音に返信のメールを送る。
[おはよー琴音今日は約束してないのにどしたー(*´▽)/
うーん、今は家にいないんだよね。皆大好きチャームのカフェなうー
だからこっちきなよー 近いからちょーどよいね。待ってるよー]
そこまで書いて一旦停止。悠太と一緒にいることを書こうかどうか迷った。
ここで書いて初っ端から怒られるか、店に来て初っ端からヒステリーになられるか。
……どっちも同じか。どうせ何かあるんだからそのまま送ろう。
そのまま編集を完了し、送信ボタンをぽちっとな。
さて、これで二人が来るのを待つのみだ。
いまだ咽ている悠太の足を、テーブルの下でガスッと蹴ってから楽しいパフェタイムを再開した。