探索喫茶
「じゃー、まー、行こっかー」
そう一声上げ、駅の出口目指して二人で歩き出す。
最終的な目的地は駅前の大通りに面しているカフェ。
そこはこの前地域のローカル番組で紹介されたこともあって、そこそこ有名な店。
あたしも二週間に一度は行くお気に入りの店だ。
値段は少々張るが、味は保障つきでとても美味しい。
駅からの距離はとても近いから、二人とも口を開けない沈黙の時間が過ぎていく。
あたしが道を歩くコツコツ、という音と悠太の履いている靴のとんとんぱたぱた、という音だけが耳に入る。
あと、道を走る車の音。
どうやら今日は車の通りが多いようで車道を何台もの車が、明らかにスピード違反な速度で駆け抜ける。
あたしの前を歩く悠太。
背丈はやはり高くて、6㎝の高さのあるブーツを履いたところで、一向にその差を埋めれたようには、思えない。どれだけ追っても届かない。
あたしでさえこの差だ。琴音が横に並んで歩いている時は、お父さんと娘のように見えるから、おもしろい。
ああ、これって、あやと悠太が結ばれて、琴音がその娘なんじゃないかな。
これってぴったり。完璧な未来予想図。全く、違うけれど。
フフッ、と自嘲気味に笑う。
「……何、笑ってんだ?」
「未来予想図描いてたの。あやと悠太の子供が琴音だな、って」
「やめてくれよ」
あたしの方に首だけ軽く振り向かせて話しかけてきた悠太が、今度は嫌そうに少しだけ顔を顰めた。眉間に皺が寄っていて、少しだけ怖い。
これってきっと、喧嘩をするときの悠太の顔なんだろうな。
視線で小動物くらい、殺せそうだよ。
鋭いその視線に射抜かれぬよう、視線を逸らす。
また、無言の時間。けれどその沈黙はすぐ破られる。
「おい、着いたぞ」
「はいはい」
立ち止まった悠太が指差す先を見れば、そこにはあたし達の目的地、<Cafe Charm>があった。
悠太が引き戸を開けて中に入り、扉が閉まらないうちにあたしも体を滑り込ませるようにして中に入る。
扉には鈴が付いていて、チリンチリン、という可愛らしい音がした。