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でいばいyouth  作者: TOKIAME
00 「超人は傍観的な態度で見つめよう」
5/60

敗北の感

 翌日。

 朝早く登校した俺が教室の扉を開けると、目の前に赤石がいた。



「……うぉっ」

「おっはよーございます? 宮本くん」


 疑問系で挨拶した赤石はニヤッと笑ってその場からピョンッ、と一歩分ジャンプして後ろに下がった。

 そしていつの日か見た、あの見下すような目付きで俺を一瞥すると、すぐ傍にあった机の上に座った。


「んー、挨拶でさえ返してくれないのかい? 宮本くん。

 他のクラスから君のためにわざわざ来てあげた同級生に一言もくれてやらないなんて、冷たい男だね宮本くん。

 ほらほら、挨拶挨拶!! 友好な関係を築くにはまず挨拶からってね」


 ははっ、とさも楽しそうに赤石は笑う。

 俺が眉を寄せて赤石を睨めば、そいつは不満そうに唇を尖らせる。


「ここまで完璧に無視されるとはおもわなんだよ!!

 これ位すれば大抵は挨拶とか返してくれるのにねぇ。ま、それも怒りながらだけど。

 何がそんなに不満なのやら。全く理解できないよ」

「……んな挑発されるように話されたら返す言葉もねぇよ」


 俺がやっと言葉を返すと、赤石の頬がニヤッと緩み口元はニタッと歪んだ。



 赤石が手を上げ、俺に向かって、こっちに来いとでも言うように、前後に振った。

 手を伸ばせばぎりぎり赤石に触れられるかどうか、くらい近くに寄ってやると、赤石は俺の目をじっと見つめてきた。


 相変わらずあの不躾(ぶしつけ)な瞳で見てくる。

 あまりに不快感が(つの)って視線を逸らす。


「お、照れてるのかい?」

「違う。んなわけあるかよ。それにしても、何だよ?

 お前違うクラスじゃないか。しかも俺に話があるのか?」

「んー、あるといえばある。無いと言えば無い、ってところだね。

 君がさっきの僕の言葉に違和感を覚えたかどうかで、これからの話は変わるんだよ」


 赤石は、そう言って口笛を吹きだした。

 よく知らないが最近流行りのCMの曲っぽい感じがする。

 無駄に上手いからそれをBGMに赤石の言葉を脳内で反芻(はんすう)した。



『おっはよーございます? 宮本くん』

『んー、挨拶でさえ返してくれないのかい? 宮本くん』

『他のクラスから君のためにわざわざ来てあげた同級生に一言もくれてやらないなんて、冷たい男だね宮本くん』

『ほらほら、挨拶挨拶!! 友好な関係を築くのはまず挨拶からってね』



 違和感、発見。



「……おはよーございます?」

「違うっ! つーか挨拶は確かにしてなかったけど!」

「嘘。冗談。今のはただの朝の義務的な挨拶だ。……友好的な関係を築く、ってところだろ?」

「せーかいー」


 俺が言おうとした事を牽制するように右手がすっと上げられた。

 その手に目を向けている間に赤石は、左手をポケットに突っ込んで、小さな袋に包まれた赤い飴玉を出した。

 無言でそれを俺の方に投げ渡し、正解賞品でーす、と言ってピースしてきた。


「おいしいよその飴。僕の一押し。ちなみに味は梅干。すっぱいよー」

「渋いな、お前」

「渋いよ」


 少し文句を言いつつもその飴を口の中に放り込む。

 梅干の独特なすっぱさと、少しの甘さが口の中に広がった。

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