吃驚吃驚
「つまらない旅行になりそうだな」
本心でそう思った。京都のことを古臭い、と言ってすまないとは思うが、本当に俺は中学生の時の旅行はつまらなかったのだ。
友達がいなくて、瀬七がいない時には単独行動になってしまう、というのはあったが。
自由行動は俺にとって、苦痛だ。一人は好きだが、楽しいわけではない。
「心配せずとも、今回の旅行ではずっと傍にいてあげるよ」
「言い方はどうかと思うが、取り敢えずありがとう」
はは、と瀬七は何年経っても変わらない笑い声を上げる。表情だけは変わっていないが。
「ああでも、今回は僕がいなくても平気かもしれない」
「……俺を馬鹿にする気か、貴様」
「え? 違う違う! そうではなく!」
睨まないでくれ、と瀬七が柔和な顔つきでいう。知らず知らずのうちに、瀬七を睨んでいたらしい。
額の辺りで力んでいた力を緩め、肩の力も緩める。
「悪い知らせーそのにー」
「良い事じゃないのかよ」
「良い知らせはさっき言ったんだから当然だろう?」
今度は蔑むような顔でハンッと笑われる。
こちらも、昔から変わっていない非常にムカつく表情だ。
「まずは皆が黒板の前に集まっている理由を説明しよう。
黒板に班分け決定の紙が貼っているんだけど、それ目当てで皆群がっているんだ。
百聞は一見にしかず、という事で悪い知らせもこれに関係しているから見てきた方が早いけれど、宮本があそこに突入する勇気は全くないだろうから、僕が直々に説明してあげるよ。
有り難く思いな」
「わー、ありがとーございますー」
今度は感情のこもらない感謝の言葉を送る。
俺は瀬七の言葉には何も言い返せなかい。全部事実であって、反論できる部分など、一つもなかったから。
俺は、臆病者で、他人に依存して生きる脳の無い虫のようなもの。人の生き血を啜って生きて人に殺されていく蚊の如く、俺は学習能力の無い人間だ。
悪い知らせ、という時点である程度の予想はついた。
大方、俺とあまり接点の無いやつでも班の中にいるのだろう。
それなら、関わらなければいいだけの話で、瀬七が心配するような事じゃではない。
確か班は四人構成で、男二人、女二人だったと思う。
男なら男で分けろよ! とは思うが、俺はどちらでも問題ないからどうでもいい。
「やだなあ、今日はやけに素直じゃないか、宮本。まあ、いいんだけれど、ね。
単刀直入に言おう。女子の二人は鎮西さんと北上さんだよ」
「わお」
驚いた。