表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
でいばいyouth  作者: TOKIAME
05 「はじめましての次は何でしょう」
42/60

顔面優男

「……こんにちは、ございまーす……」



 緊張のあまり日本語の文法もぐちゃぐちゃで、妙に裏返った声が喉を通って吐き出される。

 扉を開ければクラスメイトのほとんどが視界に入りきらなかった。顔を出さずに眼球だけをぎょろぎょろと動かして、瀬七を探す。

 案外すぐ見つかり、俺の席に座って携帯を弄っていた。そそくさと教室の中に入り、足音を立てぬよう俺の席に近づく。


「こ、こんにちはッス」

「ん? やっと来たのかい宮本。待ちくたびれてしまったよ。やあ、こんにちは。どうやら言った通りぐっすり眠れたようだね」


 いつもより顔色がいいじゃないか、と瀬七がにこやかな笑顔を浮かべて言う。

 スライド型の白い携帯電話を閉じ、アイビーグリーン色、というらしい色のカーディガンの裾ポケットにしまう。そして、立ち上がった。


「今日は良い知らせと悪い知らせがある。どちらから聞きたいかい?」

「なんだそのよく聞く台詞は」

「まあまあ、いいから。選んでよ、早く」


 早く早く、と瀬七が急かしてくる。

 事情や状況は飲み込めないが、俺がいない間に何かあったのだろうか。

 うーん、と悩んでいるとチッ、という舌打ちが聞こえた。


「え……何事。今の瀬七?」

「あったりまえだろ。さっさと決めやがれ優柔不断野郎」

「……いやん、瀬七怖い」


 茶化すように軽く語尾に星が付くような喋り方をしてみると、瀬七の眉間に思いっきり皺がよった。

 あからさまに不快そうな表情がありありと浮かんでいる。

 すいません、と自分なりに誠意を込めて謝るとよきかなー、と許された。

 このあたり、女王様の鎮西とは違う。瀬七は優男と呼んでやろうか。



「今考えたことを全部吐き出せば、怒らないけど、どうする?」

「優男だなー、と思ってました。申し訳ありません」


 前言撤回。やはり鎮西と同格なほど瀬七の性格は悪かった。

 この事は昔からよく分かってたはずなのに、どうして俺の口は減らず、頭の中が見透かされるほどに単純なんだろうか。

 それって、やっぱり俺が馬鹿なせいなのだろうか。


 でもさ、優男っていいことじゃないのか。いい言葉だろ? どう考えても。

 ぴくぴくと頬を引き攣らせながら笑う目の前にいる赤石くん。優しいって言葉が気に食わないのは、初耳だ。

 それなら反対の言葉を言ったら喜ぶのか? そんな事はないだろうなあ。

 ちなみに、優しい事が極端に罪というなら、反対の言葉は何にあたるのだろうか?



 難しい事は、考えてもわからない。


 それなら、考えることを放棄しようじゃないか。


 脳味噌を、ショートカット。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ