爆弾舞台
「友達じゃあ、ないんだよなぁ」
ふと呟く。
学校の敷地内から出て、朝とはまったく違うスローペースな二足歩行で家までの距離を縮める。
朝も、もちろん二足歩行だったけれど。
悠太に言った言葉をもう一度呟いたのに意味なんてない。
もしかしたら、あんな風に悠太の弱みに付け込んで、パフェを奢ってもらうのも意味はなくて、弱みに付け込むこと自体意味はなくて
琴音と悠太がこの先どうなろうとあたしが関わる事じゃなかったりしたら、それこそ意味のない事を繰り返してきたことになる。
『つまり、君のすべてが無意味で無味無臭なんだねッ!!』
ええ、そうかもね脳内マイダーリン。鬱陶しいから少しだけ黙ってちょうだい。
無味無臭なんて形すら実在しないあなたに言われたくないわ。
あたしはついに頭でもおかしくなったのか、突然現れた脳内マイダーリン(仮)に文句を言う。
四月も後半になって少しだけ春が終わりそうな予感がする。
今年は暑くなるのが早いのか、少しだけアスファルトから来る熱気にうだりそうになった。
照りつける太陽の暑さにも負け、立ち止まってブレザーだけを脱ぐ。ブレザーの下にはカーディガンも着てたから、暑いのは当然。
あたしのカーディガンは茶色の長袖だけれど、黒じゃなくて本当によかったと思う。
黒ならさらに熱を取り込んで暑くなること間違いなしだ。来週からはカーディガンだけにしよう。うん。
鞄を肩にかけ、その鞄とあたしの体の間にブレザーを挟み、再び歩き出す。
歩くのが遅いのに定評のあるあたしは、15分位かけて家に辿り着く。
相変わらずひっそりとした佇まいの小さな家だ。一般家庭にあるような家に見合う小さな駐車場には、もちろん車なんか止まっていない。
門を開ければ少しだけ植木鉢が並んでいる。中には肥料と土が植木鉢らしく入っているけれど、その中に美しい花を咲かせる種子は入っていない。
それどころか、土は最近雨が降っていないのや水をやっていないのも相対して、乾ききっている。花を嗜む趣味のないあたしにとっては、当然の結果だ。
スカートのポケットに入っている携帯と同時に小さなキーホールダーの付いている、家の鍵を取り出した。
右手の中指と薬指と小指で携帯を持ち、残りの二本の指で鍵を持ち、苦戦しながら鍵をガチャリ、ガチャリと開ける。
ワンドアツーロック。防犯対策もばっちりだ。
鍵を持ったその手をもう一回スカートのポケットに入れ、それらを中に入れて手を引き抜いてから家のドアを開ける。