表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
でいばいyouth  作者: TOKIAME
03 「健康な生活と跳ねる髪の毛」
25/60

几帳は面

「何やってんだ……」



 倒れていたのは、五歳年上の姉だった。

 俺とは違う、金色ではなくて綺麗な紫色の髪をしているが、今はうつ伏せになり、髪を振り乱したように廊下に広がっている。

 姉の髪は長く、ひどく邪魔だ。


 一先(ひとま)ず靴を脱ぎ、髪を踏まないように手で摘み上げる。

 しかし、ここで予想外の展開。その髪の毛は姉のばっさりと切られた髪の毛だった。故に、髪をぐっと持ち上げても姉が痛がることもない。

 今日は厄日とかじゃなくて、断髪デーなんじゃないかと一瞬思った。


「おい……おい!」


 肩を揺すって姉を起こそうと試みる。

 軽く揺すっても起きず、姉の体が揺れるほど揺するとようやく起きた。

 百年の眠りから覚めたように顔をのっそりと上げ、右手で目を擦る。


「……おーおーは」

「何やってんだよ」

「えーびーぞーりー」


 は? と言うと言葉通り姉がえびぞりをした。

 お前それは無理があるだろー、みたいに変なえびぞりではなく手を使わずに足と頭が付いている、綺麗なえびぞりだった。

 綺麗なえびぞり、というのは俺もよく分からんが取り敢えず、綺麗なうつ伏せブリッジ、みたいなイメージでいいと思う。


 それから姉はなぜか腹でジャンプし、高く飛び跳ねる。

 ジャンプするとえびぞりの体勢を崩し、綺麗に両足で着地する。

 飛び跳ねると同時に髪の毛も一緒に上に飛んでしまい、ワンテンポ遅れて髪の毛も地面に落下。


「お見事」

「でしょー」

「ところで」

「はい」

「これは」

「なんでしょーかっ」

「髪の毛だ」

「せーかいっ」


 まったく感情がこもっていない拍手をぺちぺちと送られる。

 1ミリも嬉しくなんかなかった。


 出来の悪い姉を持つと弟は苦労する、とはよく言ったものでその言葉の意味を俺は今、よく理解した。

 今までだってこういう面倒なこともあったが、その度に親父か母さんが説教していたから、何とかなっていたようなものだ。

 だが来週まで、二人とも仕事の都合で帰ってこない。

 その間俺はこの引きこもりの姉を世話しなければいけないのだ。



 しっかりしろ、俺。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ