鮮明断髪
髪の毛を切ったら失恋した証。
そう考えるのは漫画の読みすぎとか、メルヘンチックな乙女なんだろうけど。
じゃあ、男の場合はどうなんだろう。女子のように肩まであった髪の毛をばっさりと切って、うなじが見え隠れするような長さになった。
「切りすぎじゃね?」
「そうでもないよ」
俺たちはあれから一旦教室に戻り、運良く鍵のかかっていない教室の中で髪を切っていた。
というか、俺が瀬七に髪を切られている。
理由は単純明快。鎮西に奇妙な髪型にさせられたから。
あれから帰ろうとはしたけれど、この髪型のまま帰って道行く人に注目されるのは嫌だ、というわけで髪を切り慣れている瀬七にちまちまと髪を切り揃えてもらっているのだ。
なぜ髪を切り慣れているか、というと俺は知らないわけだけどぺちゃくちゃと楽しそうに話しながらジャキンジャキン、シャキンシャキンと切っている。
そのぶんにはあぁ、慣れているんだなと納得。
耳元で鋏が髪を切ったり空気を切ったりする音が聞こえる。
それが交互に聞こえるもんだからなんだか眠くなってくる。
眠気を吹き飛ばすように頭を軽く振ると、ぎゃ、と瀬七が言って頭を抑えてきた。
「動くなよー宮本」
「おーごめん」
乾いた笑い声を一つ上げ、少しだけ姿勢を正して前を見据える。
普通に俺の席に座っているから、前方には本とか置いてある棚があるわけで、右斜め前にはでかい黒板が、でーんと構えている。
目線だけを下に向けると俺の髪の毛が少し散らばっていて、左にある窓から差し込む夕日でキラキラと少しだけ光っていた。
地毛だからねー、綺麗だねー。
* * * * * * * *
「よし、終わったよー」
ポン、と背中を叩かれてハッとした。
あれから何時の間にか眠ってしまったみたいで、時計の長針が3から5に移動している。
床下にある俺の髪の毛もさっきより量が増えていて、時間が経っていることを証明していた。
「気に入らない部分があるかもしれないから、鏡見てきな」
瀬七が俺の肩にかけていたタオルを除けて、首筋を払ってくれる。
言われるがままに廊下へ出て行き、水道にある鏡の前に立つ。
鏡を覗き込んでみると、いつもと何か違う俺の顔があった。
「髪が短いから当然か」
自分でノリツッコミ、自問自答をして顔を横に向けたりして全体的にどう変わったか見てみる。
肩まであった髪の毛が一気に短くなったから違和感が満載で、恥ずかしい。
でも何を間違ったのか、以前はセミロング風の女子みたいな髪型だったのに、今はショートカットの女子みたいな髪型になっている。
頭をわしわしと掻いて少しだけぼさぼさにしてみる。
でもサラサラとした髪質のせいで、少し撫でたらすぐに元に戻ってしまった。
髪形を少しだけ変えるのを諦めて、瀬七の待つ教室に戻る。