爽快視界
「取り敢えす顔洗って着替えて準備して……のわっぶ、へ」
ぶつぶつ予定を呟きながら階段をタンタンタン、と駆け下りていると
足を滑らせて、ずででででと変な格好のまま階段を滑り降りてしまった。
「……っっ……ぅ……!」
頭を押さえながらゆっくりと立ち上がる。肘のあのぶつけたら痛い所も思いきりぶつけてしまったようだ。
それも押さえつつふらふらしながら洗面所に向かい、取り敢えず顔を冷水でバシャバシャと水を辺りに飛び散らしながら洗う。
そのあと1DAYのコンタクトを慎重に、そっと人指し指で目に入れた。
今日はすんなりと目に痛みもなく入ったみたいで、なんだか嬉しい。朝からぼやけていた視界が鮮明になり、気分がすっきりとする。
肩より少し下まである金色の髪をゆっくりと櫛で梳かし、黒い髪ゴムで二つに結う。そして両耳には水色のピアスを一つずつ付けた。
ピアスは付けていても校則違反にならないので、本当にありがたい。装飾品の一つでも身に付いていないと、なんだか落ち着かない。
余談かもしれないけれど、あたしの髪は、金色一色ではない。頭頂部の髪の色だけ、こげ茶色に染まっているのだ。
まあ、そんなプリンみたいな色層にしたのは、趣味なのでご了承を!
また階段を駆け上がり、クローゼットのある部屋に行き制服を引っ張り出す。
あたしの通う学校は、男女とも冬夏通して似たような制服で、冬服は白ブラウスに濃紺のブレザーもしくは各自で好きな色のセーター。
指定セーターが無いので楽。そして女子は黒い布地に白いラインが一つあるスカート。男子は上は女子のそれに黒いズボンの組み合わせ。
リボンとネクタイはどっちも赤色で、靴下は黒。こんな感じの一般的な制服。
中学生の時のセーラー服よりは可愛いからマシかな? と思う。
夏服はブレザーが無くなってブラウスが半袖になっただけ。もしくは、ベストとか自由に着てもいい。
リボンとネクタイは基本付けるけれど、付けなくても怒られないからあたしは付けていない。
本当に自由な制服スタイル。どうせなら私服にしてくれって思う。
けど制服じゃなくなったら何年ですかアナター、みたいな感じになるよねー。それはそれで面白いと思うけど。
そうこうしている内に制服に着替え終わった。部屋に戻って通学鞄に必要な物だけを放り込む。
現在時刻AM6:47。携帯電話も鞄に放り込んで、準備完了。
本当に急げばこんなに早く準備ができると知って、感心。
滑り落ちないように階段を急いで降りて、鍵を持って玄関に向かう。
一軒家の割に靴は二、三足しかない玄関で指定のローファーを履いて立ち上がる。
家を出る際に「いってきます」と言った。
あたしの他に、この家にはもう誰もいないというのに。