例外が好
「まず、百合奈はあんたが好きというか、気になっております」
「ほう」
気になっている、という程度である時点で、好きとかそういう話ではない気がする。
女子ってのは分からんが、気になったら夜も眠れないもんだとは聞いたことがある。
それは好き、ってことで解釈はいいと思うが。
「それで、私がその事に気づいているということを、百合奈はおそらく知らないと思う。そこでね。
友達の機転を利かせてやって、その恋を成就させてやろうという友達の思いやりが、今回の呼び出しに繋がってるの。
ただ、そこで問題点が発生するわ。
何しろ私と百合奈は、あんたと一切の接点がないから、その考えがそれ以降発展しないということに気づいたの」
「クラスメイトなんだから普通に話しかけりゃいいんじゃなかったのか?」
鎮西はそこで首を横に振って否定する。
「それがね、百合奈の恋心に私が気づいたのは昨日今日の話じゃない。学年の上がるそれ以前、半年前からだった。
百合奈が、あんたの事を何時から好きだったのかは、私の知る所じゃないけど多分、何年も前から好きだったんじゃないかしらね」
片思いってのは長ければ長いほどその恋焦がれる気持ちが強まるらしい。北上も、例外ではなかったんだろう、
当時は親友とは言えない程度に仲の良かった鎮西ですら、何となく気づいたという。
恋愛事に関してはワクワクするのは鎮西もらしく、北上の恋がすんなり叶うように少し前から北上にはばれないよう、こそこそと準備していたらしい。
そこだけ聞いたらただの友達思いか、ただのお節介のように聞こえる。
でもいいやつなんだろう。しかし鎮西は大きく溜息を吐いた。
「けどまあ、百合奈ったら当時から何時まで経っても、告白する様子が見られなくてねー。それで、数ヶ月前にちょっとした実行に移ったの」
その実行とやらが、俺と唯一親しい瀬七に干渉することだった。らしい。
何でも、俺の情報を確実に手に入れるため先程瀬七が言っていたように、脅迫紛いの事をして親しくなったとか。
俺としては迷惑極まりないが、鎮西としては必死だったそうだ。
脅迫紛いの事をされても仲良くなれるとは。瀬七の懐の深さというか、腹の黒さで息が合ったんだろう。
それはさておき、美しい友情だと感心した。
それから色々とやっている内に細かいことが面倒くさくなり、今回のような実行に移ったらしい。
「飽きっぽいんだな」
「だって何やっても実にならないのよ!? じれったいったらありゃしないわよ」
半年なんて長い長いー、と言いながら手を横に振る。
しかし、やっぱり鎮西の行動に違和感を覚えた。
「けどさ、そんなこと俺に伝えてどうすんだよ。そんな事言われても、逆に強く拒否することしかできねぇ」
「あぁ、そのことは私も思ったわ。でもね、そこを利用するの」