赤の追撃
自慢ではないが、俺は勉強ができない。多分クラス中の周知の事実。
定期テストやらマークテストやら、それらのテストの順位は学年でも下から数えていったほうが断然早い。
ひーふーみーよーいつむーななやーここのつとぉー。
そんな極端に下の方ではないけれども。
それでも授業中だけは真面目に話を聞いてノートも取っている、つもり。
だから朝の内に何があろうと、本日も真面目くん風に全ての授業を受け続けた。
あーねむい。
そして場面は放課後へと切り替わる。
「あいやー宮本。片付けが終わったら屋上にカムカーム」
「おーけーおーけー」
帰る用意のできた瀬七が気だるそうに俺に声をかける。
そしてそのままフラフラと廊下に出て行った。
その後姿を少し眺めつつ、俺ものんびりのんびりのらりくらりと教科書を片付ける。
屋上とか面倒だな、何の話だろう、やっぱあれ? 告白話?
考えることはたくさんあれど時間は限られているから人間ってのは不幸だね。
鞄を片手に廊下に出てすぐ傍にある、三階と四階を通って屋上へと続く階段を上る。
俺も瀬七も、何の部活にも入ってないものだから、何ものにも咎められることなく階段をどんどん上り続ける。
俺の所属中の教室は二階にあるから屋上は遠い。
普段から運動だけはしているおかげか、しんどくも何事もなく屋上に入るための扉の前に辿り着く。
計94段、お疲れ様でした。
ガチャッとその扉を開けると同時にギィー……という音がする。古い扉特有のあの音。耳が痛い。
顔を上げ前方を見据えると瀬七の黒い髪が見えた。あと赤い髪。
ん? 赤い髪?
「おや、宮本。遅かったね。またのんべんくらりと片付けしてたのかい。まあいいけれど」
見慣れない髪色を見て呆然と立ち尽くしている俺に、座っている瀬七が話しかける。
瀬七の二言三言にハッと我に返ると、再び思考回路を起動させた。
屋上の床って汚くないか。
いや、そうじゃなくって。
よっこらせ、と瀬七がじじいよろしく立ち上がる。
赤い髪の女生徒も立ち上がった。
「ふむ、その呆然とした間抜け面を見たところ鎮西さんを知らないようだね。
紹介するよ。こちら鎮西和南香さん。名前くらいは聞いたことあるんでねえの?」
「いや……聞いたことない」
脳をフル回転させて記憶の倉庫を巡っても“鎮西和南香”という名前は出てこない。
つまり、聞いたことは無いという事であって、俺がどれだけ同学年のやつを知らないんだ、という象徴にもなった。
「おやまあ知らないとは。それで鎮西さん、こっちが宮本龍紀ね」
「初めまして、鎮西です」
その赤い髪の人物は鎮西和南香、という名前らしく一目見ただけで染めたんだ、と分かるような茶髪混じりの赤い髪と白い肌が対照的で映えている。
その肌の色は一見すると、ヨーロッパとかその辺の白人にもとれる。
目付きは悪いらしく、俺の方をじろっと見つめてきた。
人によっては嫌われているかのように見える。かもしれない。
俺何もしてねぇッス。