表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

朝と夜が出会う時

作者: 露(つゆ)
掲載日:2026/08/06

 私の名前は月日 朝陽(つきひ あさひ)。ごくごく普通の就活中、大学四年生。

 サバサバしてるとか少しローテンションだとか言われるけど、自分ではごくごく普通だと思っている。

 ゼミが終わって、企業の研究をして、帰る頃には空はオレンジに染まっていた。家の鍵を開ける。

「ただいまー」

 靴を脱いでリビングへと向かう。扉を開けると、そこにはいつも通り弟の真宵(まよい)がソファーでくつろいでいた。

「おはよう」

「おはよう」

 真宵の挨拶に私も返す。それだけ。これが私達の日常。


「朝陽、就活はどう?」

 夕飯時、お母さんの問いかけに私は、んーと答える。

「良い感触のがある」

「良かったじゃない」

「うん」

 その隣でお父さんと真宵が話している。

「真宵、昨日の配信スパチャたくさん貰ってたじゃないか」

「うん」

 お父さんは反対側の頬に手の甲を当て、テーブルに乗り出す。

「ぶっちゃけいくら?」

「そーいうのやらしいから言わない」

「えー」

 真宵も私に似て、というか真宵の方がローテンションだ。

 お母さんが「確定申告はきっちりね」と口を挟む。

 私達家族の食卓は賑やかだ。けれど、私と真宵の会話は無い。


 二十時。そろそろ真宵の配信時間かな。わざわざ観たりはしない。

 真宵は中学の時にいじめを受け、不登校からのそのまま中卒。私達は初めは心配していたが、いつの間にやら配信活動をしていて、普通にお金を稼いでいた。たくましい。私達は真宵を見守る姿勢をとることにした。

「(お風呂入ったら就活の勉強して寝よっかな)」

 私はタンスから着替えを出した。


 次の日の朝、眠け眼でダイニングに下りると、眠たそうな真宵がテーブルについていた。いつもの光景。

 真宵は昼夜逆転生活をしているから、朝ごはんを食べたら寝るのだ。

 真宵は私に気がつくとこう言った。

「おはよう」

 私も真宵に返す。

「おはよう」

 姉弟の会話はたったそれだけだ。


 私達は一日二回、「おはよう」と言う。それ以外の会話は事務的なことだけ。

 別に姉弟仲が悪い訳じゃない。姉弟ってそんなもんじゃない?


 私はいつもの様に帰宅する。リビングには真宵の姿が。真宵はいつもの様に言う。

「おはよう」

 私も返す。

「おはよう」

 でも、今日は他に言うことがある。

「ねえ、真宵」

「何?」

「姉ちゃんさ、都会の会社に就職決まって春からそっち行くから。ちょい遠いから一人暮らしするわ」

「ふーん」

 興味無さそう。まあ、姉弟って……。

 と思っていると真宵がおもむろに立ち上がってこっちに来る。そして拳を上げて言った。

「ふぁいとー」

 ……。私はなんだかおかしくなって笑った。そして私も拳を上げる。

「おー」

 そう言うと真宵がこちらに拳を突き出すので、私も突き出し、コツンと拳を合わせた。たったそれだけ。


 新しい生活に慣れて、気温が上昇し始めた頃、私はふと思う。

「(真宵、元気にしてるかな)」

 わざわざ配信を観たりはしない。

 お盆の時にお土産を買って帰ろうか。真宵は甘いお菓子が好きだから、喜ぶかな。

 別に会話なんてしないだろう。姉弟ってそんなもん。

 でも、それでいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ