『私』
【はじめに】
本作品は、2021年に某新人賞に応募したものを改稿して投稿しております。
AIの講評によると、エロやグロの部分が許される範囲を超えていたようで、本作ではその部分を調整しております。完結までほぼ十万字になる予定です。
本作品は、キリスト教外典(グノーシス派)をベースにし、戦中戦後に改竄された日本史についても言及しております。歴史解釈については、「アメリカの鏡・日本」を主軸にしました。同書には、太平洋戦争時、アメリカが自国民の支持を得るために、日本について情報操作をしたことが書かれています。
同書はマッカーサーによって日本での出版を禁止され、その禁止措置は1995年まで続いていました。現在の歴史や近隣国との歴史問題は、その当時の情報操作に沿ったもののようです。
グノーシスおよび日本史の裏事情については、拙書「D・M ~古き穴はランプで」で詳しく説明しておりますので、興味のある方はそちらをお読みください。
【著作権・法的管轄に関する注意事項】
本作品を取り扱う場合は、以下の契約条件に同意したものとみなされます。
・本契約は日本法に準拠し、日本法に従って解釈されます。
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見知らぬ男たちが村にやって来た。
皆、金属製の平べったい棒を持っている。
彼らの顔はのっぺりしていて目が細い。
彼らは私たちのように『みずら』を結ってはいない。
私たちとは全く違う種族のようだ。
彼らは知らない言葉を話している。
何を言っているかわからない。
表情やしぐさから、こちらに好意を持っていないことはわかる。
村の者が来意を聞くために近寄ると、男たちの一人が棒を振り上げた。
男はそれを近寄った村の者に叩きつける。
血が噴き出す。
最初の村人が倒れると、男たちは散開し、ほかの村の者たちに襲いかかって行った。
私は自分の妻と子のもとに走ろうとした。
しかし、かなわず後ろから襲われた。
こうして私は命を失った。
あのときの私は、戦いというものを全く知らなかった。
私たちの社会には争いごと自体がなかったから。
無知であるがゆえに――
無知であるがゆえに、私は自分の家族を守ることができなかった。
私はいま『一者』の元にいる。
ただ前にいるだけなのに、その威で押しつぶされそうだ。
いまの自分の中には、『一者』への畏れ以外、何もない。
ついさきほどまで感じていた酷い喪失感は、この上ない畏れによって、どこかに押し流されてしまった。
いまの自分の中には、『一者』への畏れ以外、何もない。
逃げることもできない。
叫ぶこともできない。
身動きすらできない。
これ以上ない畏れの中で、威に押しつぶされながら、只管じっとしていることしかできない。
そして、私はまた別の生に飲み込まれる。
私の前にはたくさんの旗指物がたなびいている。
一人の男が私を穴の中に蹴り落とす。
私は、穴の中に積み重なる、死体でできた小山の上から彼らを見上げる。
穴に火が投げ込まれた。
その火は、あらかじめ死体の上に撒かれていた油に引火する。
私の身体も燃え上がる。
指先には神経が行き渡っている。
痛みは感じなくなっているが、指先が炭化し、縮んでいくのを感じる。
命が燃え尽きようとするいま、私が感じるのは、指先のちりちりする感触。
ちりちりする範囲がどんどん小さくなっていき――
私はまた『一者』の前にいる。
畏れが死の名残を拭い去る。
そして、私はまた別の生に飲み込まれる。
そして――
私は目覚めた。
いまの私はたぶん一歳くらいだろう。
目覚めたとき、「ここではない」と思った。
再度眠りにつき、眠りの中から無理やり瞼を二度動かす。
その行為が私を身体へと引き戻す。
私は自分の身体のひとつに宿り、目覚める。
そして、また「ここではない」と思った。
何度かそれを繰り返し、ようやく私は正しい何かにたどりついた。
そのときには、何が「ここではない」だったのか、思い出せなくなっていた。
記憶は彼方へ去っていく。
思い悩む理由も去った。
私は安心して眠りにつく。
眠りの中で、私は『一者』の前にいる。
そして、また別の生に飲み込まれる。
子どもの頃、私はよく熱を出し、座敷で寝かされていた。
その日も布団に入って目を瞑るなり、私は地に飲み込まれるように落下し、闇の中を落ちて行った。
恐怖に包まれて光を求めると、落ちていく通路は光と闇の市松模様になった。
そして――




