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7.入学試験

学科試験と実技試験――入学試験は二日間にわたって行われる。

学科は大きく魔術科と武術科に分かれており、入学後さらに細かく専門が分かれる。

クラス分けは成績順にA・B・Cと割り振られる。例年、受験者・合格者ともに武術科の方が多く、クラス数も年ごとに異なる。


今日は試験初日。学科試験の日だ。

科目は「戦術学」「一般数式」「王国歴史」「魔物生態学」「測量術」の五つ。

この世界で初めて学ぶ者にとっては難解なものも多いが、前世の知識を持つ俺にとっては大きな障害ではなかった。問題なく解き終えることができた。


――そして翌日、いよいよ実技試験。体調も万全だ。


まずは鑑定。ここではステータスのみを確認し、スキルまでは表示されない。

貴族の子弟も受験するため、重要な情報が漏れないよう工夫されているらしい。


続いて模擬戦。

最初の相手は剣士。同年代で背丈は同じくらいだが、筋肉質で力強さが際立つ。


「はぁッ!」

振り下ろされる大振りの剣。力任せだが速度もある。


俺は冷静に受け流し、足さばきで間合いをずらす。

(……なるほど、パワー型か。ただ型が単純だな)


三度、四度と同じ攻撃を繰り返す相手。観客席からは「逃げてるだけか?」とざわめきが起こる。

だが四度目の瞬間、俺は踏み込み、わずかな隙に木剣を相手の肩へ軽く叩き込んだ。


「っ……!」

体勢を崩した相手はそのまま転倒。勝負あり。


「冷静な判断だ。力押しに流されず、隙を見極めた」

教官が小さく頷く。


二戦目の相手は長槍の使い手。

「距離を制するのは槍だ!」と意気込み、開始と同時に鋭い突きを放ってくる。


(……リーチが長い。無理に突っ込めば刺される。なら――)


円を描くように動き、槍の軌道を観察。相手が焦り突きを連発した瞬間、槍の戻りが遅れた。

「今だ!」

石突きを木剣で弾き、軌道を逸らす。一気に間合いを詰め、喉元に木剣を突きつけた。


「くっ……」

悔しげに槍を引く相手。

教官は「戦術眼があるな」とメモを取り、評価を高めたようだ。


そして最後の相手――第二王子。

静かな足取りで場に上がると、観客の間からは落胆の声が漏れる。


「兄君ほどの才はない」

「凡庸な王子だ」


だが、構えを見た瞬間、背筋が粟立った。


(……無駄がない!)


合図と同時に踏み込み。軽いはずの木剣が、重さを伴って肩にのしかかる。

「っ……!」

受け止めた腕が痺れる。


そこからは流れるような連撃。小さな動きで俺の剣を逸らし、的確に急所を狙ってくる。

防ぐので精一杯で、反撃の隙はない。


(やばい……完全に押されてる!)


観客もざわめく。

「本当に凡庸なのか?」

「いや……上手すぎる!」


必死に攻めの糸口を探すが、ことごとく迎撃される。額から汗が伝った。


(勝てない……だが退けない!)


深呼吸し、最後の賭けに出る。

「うおおっ!」

力任せの突撃。王子は冷静にいなそうとする――その瞬間、俺はあえて体勢を崩す。


「……っ?」

生じた一瞬の隙に木剣を叩き込む。同時に、王子の木剣も俺の胴を捕らえていた。


「そこまで!」

審判の声が響く。結果は引き分け。


王子は汗を拭いながら一歩下がり、微笑んだ。

「ありがとう。君、強いね」


俺は息を切らせながらにやりと笑う。

「そっちこそ……強すぎるんだよ」


観客の空気は一変した。

「第二王子が……あんなに強いなんて!」

「そして、互角に渡り合ったあの剣士は誰だ?」


この一戦で、凡庸と蔑まれていた第二王子は「隠れた実力者」として再評価され、俺――レオンの名もまた強烈に刻まれることとなった。


模擬戦を見ていた教官は、そっと鑑定結果を確認する。

(体力も力も平均的……だが魔力量が突出している。普通なら魔術科を志すはずだが)

剣を振る姿は紛れもなく剣士。だが数値と実際がかみ合わない。


「……妙だな」

教官はそう呟き、レオンの動きを最後まで注視し続けた。


ーーレオン学科試験一部抜粋

戦術学

設問:あなたは応援として戦場に到着しました。

ゴブリン4体のうち、1体は後方で様子見。残りは、大盾使いと交戦している2体と、ヒーラーに迫る1体。さらに近くには気を失った剣士が横たわっている。

誰をどの順で助けるべきか。理由も答えよ。


解答

「ヒーラー → 剣士 → 大盾使い」の順で助ける。

理由:大盾使いは攻勢を失っているものの、本来の役割である防御は続けられるため、即座に命の危機には至らない。剣士は戦闘不能だが、すぐに攻撃を受けているわけではなく、救助までの数秒が致命傷になる可能性は低い。一方ヒーラーは戦闘力が低く、攻撃を受ければ致命的になりやすい。彼を失えば結果的に他の仲間を助ける可能性も下がる。よって最優先で守るべきはヒーラーとなる。



一般数式

設問:金貨10枚で3人分の武器を調達する。1人あたりの配分はいくらか。


解答

単純に割れば「金貨3枚と銀貨3枚、銀貨1枚余り」となる。

ただし、実際のパーティーでは職業ごとの武器価格に差がある。魔術師や弓使いは高価になりがちで、剣士は比較的安い。そのため一律に分けるより、「魔術師・弓使い:金貨4枚、剣士:金貨2枚」といったように割合を考えて配分する方が現実的である。



魔物生態学

設問:ゴブリンの特徴を述べよ。


解答

知能は高くないが、習性として必ず集団で行動するのが特徴。一体だけでも油断すれば不意打ちで倒される可能性がある。また明確な階級社会を持ち、上位個体である「ゴブリンロード」が誕生すると、群れの規模や殲滅難度は飛躍的に上がり、討伐依頼の危険度は一気にAクラスとなる。

夜にもう一話でます!

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