5.レオンの休暇
翌日、レオンは草原でひとり実験を行っていた。
(ルナも追加で召喚できるようになったし、色々試してみるか)
「まずは……ルナ!」
「キュウ!」
一度召喚した幻獣は維持に魔力を必要としない。
そして“オリジナル”は削除できない。
(もし死んでしまったとき、次の召喚はどうなるのか……気になるが、今は保留にしておこう)
「次はポチタ、出てこい!」
「ワンッ!」
ポチタは昨日レベル10に到達し、そのタイミングでスキルレベルも上昇した。
(幻獣のスキルは、やっぱりレベルに比例して成長する……と仮定できるな)
自分自身の剣術スキルが上がったのは素振りの最中だった。
筋力が増したおかげで日課の素振り回数を少しずつ増やし、合計およそ千回で上昇した。
(スキル成長には“回数”も関係しているかもしれない。
レベルアップのときは、剣の重さが軽くなったような……扱いやすくなった感覚があった。
ステータスに変化はなかったから、やっぱりスキルも勝敗を大きく左右する要素なんだな)
「じゃあ次は……」
ルナを召喚したとき、魔力は20ほど消費した。
つまり、魔力量だけで見れば以前から召喚は可能だったはずだ。
だが幻獣召喚スキルのレベルが上がったわけではない。
(違うのは……俺の思考。猪との戦いで“ポチタだけでは足りない”と気付いたからだ。
今わかっている条件は――発想・思考、そして魔力。この二つか?)
「幻獣召喚!」
「ピヨッ!」
姿を現したのは一羽の小鳥だった。
「……ふん。索敵用を意識したら鳥が出たか。名前は……ピースケにしよう」
ピースケ
レベル:1
体力:5/5
力:2
魔力:8/8
知力:20
スキル:共感覚 1
「知力が高いな。《共感覚》……魔力量からして連発は難しそうだが」
「ピッーー!」
「よし、森で何か見つけてきてくれ」
⸻
「出てこい、ポチタ!」
「ワンッ!」
ポチタ
レベル:10
体力:30/30
力:50
魔力:10/10
知力:5
スキル:噛みつき 2
さらに「ポチ1号から6号」まで召喚する。
サブ個体はステータス7割減・魔力消費は増加する。
(まぁ、こんなものだろう。ルナの支援能力がある分、戦術は大きく変わるな。
今のところ召喚のインターバルは12時間。レベルアップに期待するしかない)
――その時。
「ピーッ!」
ピースケの鳴き声が森の方から響いた。
(……何か見つけたな。《共感覚》!)
視覚や聴覚が繋がるわけではないが、ピースケが感じた“危機感”がそのまま胸に伝わってくる。
(なるほど……危険がある方向を直感的に共有できるのか)
確認しに行きたい気持ちはあったが、最近のきな臭さを思い出し首を振る。
「戻れ」
「ピーッ!」
意志が伝わったのか、ピースケは元の場所に戻ってきた。
(……なるほど。《共感覚》は一方通行じゃなく、意思疎通も可能みたいだな。
今日はもう魔力が尽きそうだし、このくらいにしておくか)
――ステータス――
レオン=ヘムロック
レベル:8
体力:80/80
力:40
魔力:40/120+100
知力:50
スキル:剣術 2、鑑定 2
エクストラスキル:幻獣召喚 1