33.軍略クラブ4
夏休みも終盤に差し掛かりクラブでの活動も大詰めになってきている。
いつもの訓練場とは違い、今日は王都外壁にある学園の巨大演習施設に来ていた。
そこ広大な演習場に二つの陣が組まれている。土煙を上げ、整然と並ぶのは人型のゴーレム兵。
1体ごとに魔力核が埋め込まれ、5年生の先輩たちの号令でわずかに動くたび、地が震える。
今日は上半期の総仕上げとなる中規模模擬戦の日だ。
参加者は現軍略クラブのメンバー6人。2チームに分かれて各班に1人5年生がリーダーとして抜擢され全体の戦術指揮と統制を競う。レオンとリカルド含めて他のメンバーにも指揮権が与えられていた。
構成はこうだ
A班
リーダー:ライト=アルフォンス(5年)
指揮下戦力:剣士 570 騎士 200 弓兵 150 魔
術師 80
副指揮:レオン(2年)
指揮下戦力:剣士 400 騎士 40 弓兵 60
副指揮:アディス=パラダイン(5年)
指揮下戦力:レオンと同構成
B班
リーダー:カイト=メロウ(5年)
副指揮:リカルド(2年)
副指揮:キール=メフィナス(5年)
戦力構成はA班と同じ。
改めて現在の判断と資質を見極めるためでもある。
ルールは簡単だ
1リーダーが倒されるか、自陣の旗を取られれば負け
2指揮者は単体で囲まれて自ら剣を振るうしか打開策がなくなれば負け。または弓兵、魔術師の攻撃を5回くらえば負け(防いでも)。
3指揮者へ使用可能な魔術は防具で自動的に防げる初級のみ
4指揮者の攻撃参加はなし
⸻
陽光に目を細めながら遠くの丘を見つめた。
あのあたりにB班の陣を張ることになるだろう。丘陵と林が複雑に入り組み、視界も悪い。
対してこちらの陣地はやや低地。防衛に不向きな地形だ。
「なぁ、レオン」
隣でアディスが肩を竦める。「また不利な地形じゃねぇか。なんか俺たち、いつも損してる気がするんだが?」
「…訓練ですからね。現場がどう転ぶかは誰にも分からないですよ。地形も味方も、運も全部ひっくるめて“戦術”ってやつです」
レオンは笑みを浮かべたが、その瞳は鋭く地形図を見つめ続けていた。
——どう活かすか。どう動くか。
勝敗は、初手で決まる。
ライトが声を上げる。「A班、配置につけ! 開始は十分後だ!」
掛け声が上がる。
それぞれの模擬兵が規律正しく列を成し、平原へと展開していく。レオンは伝令役に命を下し、右翼の小高い丘へ斥候を走らせた。
レオンの頭の中では、既に数十通りの布陣パターンが組まれていた。
守るか、攻めるか。
定石で行けば守勢が妥当だが、B班のリカルドはそう単純ではない。おそらく、彼なら動かずに動かす手を打ってくる。
「アディス、右翼に斥候を残して、弓兵は後方の丘へ移せ。魔術師は本陣左側だ。初動で広域展開を読まれたら終わりだ」
リーダーのライトから指示が出る
「了解!」
アディスが駆け出す。
陽光が剣の刃に反射し、空へ細い光の筋を放った。
レオンはふと空を仰ぐ。
——風が南から吹いている。
風向き、陽光、丘陵の陰影。その全てを頭に入れ、次の一手を思い描く。
「さて……リカルド、お前はどう出る?」
遠く、対岸の丘で白旗が掲げられる。開始合図だ。
模擬戦、開始。
その瞬間、レオンの号令が響いた。
「右翼、前進! 左翼は後退しながら防衛線を維持! 中央、弓兵準備!」
土煙が上がる。
数百体の模擬兵が一斉に動き出した。
金属音、魔力の唸り、砂塵。
空気が震え、模擬戦とは思えぬ迫力が戦場を包んだ。




