29.ヴァレンツ商会
王都の商会街。その中心に構える〈ヴァレンツ商会〉は、王国最大規模の流通を担っていた。
重厚な扉の奥、書類が積まれた執務室で、当主オスカー=ヴァレンツが眉間に皺を寄せていた。
「…国からの要請か」
「はい。鉄材と保存食、それに医療用品です」
執事の報告に、オスカーは小さく息を吐いた。
「戦の気配がある。王家はまだ“訓練”と称しているが…見え透いているな」
今のうちから確保しておこうと言うことだろう。少しづつそっちの生産量を上げておく狙いだな
その場にいた少年エリオは、まだ11歳。だが父の背をまっすぐに見ていた。
「父上。俺にも手伝わせてください」
「ほう?」
「王国のために、うちの商会が動くなら…俺も商人として何かしたいです」
父はしばし黙り、やがて笑った。
「よかろう。ではお前に課題を出そう」
「課題?」
「“何かを運ぶ”のではなく、“何かを生み出す”ことだ。今ある物資をただ右から左へ流すだけでは、国も商会も潰れる。お前自身の手で、“新しい価値”を考えろ」
エリオの目がわずかに揺れた。
「俺が、考える…」
「そうだ。今の王都はきな臭い。だがこういう時ほど、人の欲も、知恵も動く。商人にとって最大の戦場は“戦ではなく、変化の時”だ。行け。試してこい」
その言葉を胸に、エリオは動き出した。
だが11歳の少年に、新しい価値など簡単に浮かぶはずもない。
悩んでいた時彼は偶然、レオンと再開する
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「新しい商材?」
「うん。父さんに言われたんだ。商人なら“時代にないもの”を作れって。けど、何を作ればいいか分からなくて」
商売か…今後何があるか分からないから前世の知識で何かできないかとは思っていたからちょうどいいかもな
「…この国、保存食って言っても、塩漬けか干し肉ばっかりだろ?」
「うん。輸送中に腐るって文句が多い」
「だったら、“乾燥魔法と密封”を組み合わせて、もっと軽くて長持ちする保存食を作れないか?」
「乾燥魔法と…密封?」
レオンは机の上に簡単な図を描く。
「こういう“真空保存”って仕組みがあった。空気を抜けば菌も腐敗も減る。魔力でそれを再現できたら、遠征用にも使える」
「…すごい。それ、できたら王国軍が飛びつく!」
エリオの目が輝く。
2人は試作を始め、魔法道具クラブに所属したマルコの協力も得て、“魔力密封保存袋”を作り上げた。
中の食材は1ヶ月経っても変質せず、匂いも逃げない。
試作品を手にしたエリオは、興奮を隠せなかった。
「これ…すごいものができたよ!これなら今回の要請内容とも今後関わっていくようなものになる!」
「それなら先に国も巻き込んでおくか?」
「ん?」
「第二王子殿下だよ。同じクラスなんだ、あいつの株も上がるだろうし」
翌日再度集まった。そこには第二王子シリウスがおり、試作品を手に取る。
「この軽さ、そして耐久。これレオンたちで作ったの?すごいね」
彼は微笑み、静かに言った。
「これすごくいいよ。正式に支援させてもらえたら嬉しい。商会も、学園も、こういう芽があれば国はまだ戦わずに済むかもしれない」
少年たちの小さな発明は、やがて王国全土の補給線を支える技術へと繋がっていく。
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