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3.新たな仲間

騒ぎが収まったあと、子供たちは大人に連れられて再び草原を歩き出し帰路に着いた

だが、ラオンは一歩も前に進めなかった。


「……俺、何もできなかった」

木槍を握る手は汗で滑り、膝は小刻みに震えていた。


「ラオン、大丈夫?」

心配そうに近づいたのはカノンだった。


「だ、大丈夫だよ!」

強がる声は裏返っていた。


その視線の先では、レオンが召喚した幻獣と共に父から褒められている。

「よくやったな、レオン」

「ありがとう、父さん」


ラオンの胸に、熱いものが広がる。

(まただ……。いつもレオンばかり……)


彼は歯を食いしばった。

助けてもらった感謝よりも、圧倒的な差を見せつけられた悔しさの方が勝っていた。


「俺だって……! いつか絶対、負けない!」

小さく吐き捨てるように言う声は、誰にも届かなかった。

ただポチタだけが、その言葉に耳を動かしていた。


ーーー


あそこには本来、ゴブリンのような魔物が出るはずがない。

村に戻った後、大人たちは会議を開いていた。


――魔王、魔族、魔物の活性化。

それが起こる時、必ず勇者が誕生する。


それは人類の歴史において何度も繰り返されてきた節目だった。

そして時に、勇者が敗れ、人類が滅亡の淵に立たされたこともある。

だからこそ、この世界の生活水準は前世と比べて著しく低い。発展する前に何度も戦いに巻き込まれ、破壊されてきたからだ。


――そんな重苦しい出来事から、数日後。


「今日も勝負だ!」

ラオンの肩はかすり傷程度だったようで、カノンとの騎士ごっこに、最近はラオンも混ざるようになっていた。


そしてゴブリン出現から半年。

レオン、カノン、ラオンの三人はそれぞれ鍛錬を続けてきた。

カノンは剣術に磨きをかけ、力と体力が子供離れしてきた。

ラオンは父から槍を習い、焦りを力に変えるように基礎を叩き込まれた。

レオンはスライム狩りを日課にし、魔力量の増加で召喚できる数が4体まで増加した


「私たち、強くなったよね」

騎士ごっこの延長のような稽古でも、互いに成長を実感する場面が増えていた。



ある日、三人で森の外れに遊びに行ったときだった。

「……なんか、音がする」

カノンが足を止める。


ドカァーン


石の破片が飛び散る。大人の腰ほどもある巨大な猪が砂埃の中から現れた。

毛は逆立ち、牙が陽光を反射している。


「イ、イノシシ……!」

子供にとっては立派な“魔物”だ。


猪は威嚇するように地面を蹴り、突進の構えを見せる。


「逃げ――」

そう言いかけた瞬間、カノンは突撃していた。

レオンは反射的にポチタを前へ召喚していた。

「ポチタ、猪の動きを止めろ!」


ポチタが必死に食らいついて猪の動きを止める。

その隙にラオンが槍を突き、カノンが横から木剣を叩きつけた。

猪の命は尽きていないようで死の淵に直面し全身を大きくふりラオンとポチタを吹き飛ばす。

そしてラオンに向けて再度突進を行う。小さい岩を砕くほどの突進だ。


レオンは魔力のほとんどを使ってポチ1.2.3号をその動線に召喚した

猪は突進の速度を落とされながらも足を進める。正面のポチ1号は光に包まれ消滅する。

しかしその間にカノンそしてレオンも自ら猪に剣を叩きつける

そのスキにラオンは体制を立て直し正面から槍で突き刺す。


すると猪は崩れ落ちた。


「……倒せた、のか?」

全員が肩で息をしながらも、互いの顔を見て頷く。


初めて“自分たちの力”で危機を乗り越えたのだ。

その日を境に、三人の結束はさらに強まっていった。

またポチタもレオンへ歩み寄る


猪退治から数日後。

夜更け、眠れないレオンはひとり部屋で考えていた

ポチタが隣に寄り添うように座っている。


(猪のとき……もう少し動けていたら、誰も怖い思いをせずに済んだかもしれない)

仲間を守りきれなかった悔しさが胸に残っていた。


「もっと……強くならないと」

そう願った瞬間、体の奥から魔力が波打ち、手のひらが淡く光る。


「……来い!」


光が集まり、ポチタの隣に新たな影が姿を現した。

――灰色の毛並みをした小さな狐。瞳は月明かりのように澄んでいる。


「キュンッ」


狐はレオンの足元にすり寄り、淡い光の粒を散らす。

その瞬間、レオンの体がふっと軽くなった。木剣を構えると、さっきまでより速く、正確に振れている。


「……体が、動きやすい……!」

狐は周囲の味方に短時間だけ身体能力を底上げする――支援の力を持っていた。


(これは……)

ポチタと違って戦闘力はほとんどない。だが、この力は仲間を守るために必ず役立つ。




翌日。

カノンやラオンと遊ぶとき、レオンは新しい幻獣を呼ばなかった。

「なぁレオン、なんか昨日から動きが良くなってないか?」

「……気のせいじゃない?」

レオンは曖昧に笑ってごまかす。


胸の奥で、もうひとつの繋がりが温かく灯っている。

(この子は……俺だけの秘密にしておこう)


狐の幻獣に、レオンは小さく囁いた。

「君の名前は……ルナだ」

「キュン」


こうして二体目の幻獣《灰狐のルナ》が生まれた。

これから様々な幻獣の召喚が可能になるのだろうと考え、力を隠すためにできるだけ秘密にすることを決めた。

秘密の力を胸に、レオンは少しずつ「自分だけの戦い方」を形にしていくのだった。


ルナ

レベル 1

体力 5/5

力  5

魔力 10/20

知力 10


スキル

魔力強化 1

明日以降数話22時に投稿していきます。


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