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28.軍略クラブ3

石造りの円形講義室。壁一面の黒板には、戦場の地図と駒が並んでいた。

ルディウス顧問がチョークを鳴らす。


「よし集まったな!今日は前回の好評をしてその後座学だ!一旦やってみないと座学の内容も入らんだろうから先に実践をした。今後は基本座学→実践の流れでいく。

さて…気づいてるかもしれないが4年生が抜けた。才能の限界を感じたようだ。無駄にはならないだろう。現場でやりながらある程度の戦術を理解できるのならそれは大きな強みになる。なので君たちもここにこだわりすぎのは良くないとも思う。今後は5年生2人と1年生2人で行く。また少なくなった分希望者を入れることも考えているのでそのつもりで。」


これまで多くの教師の授業を受け的だがガルディス先生の話は頭に入ってきやすいな


「で好評だがまず1年!2人ともセンスがある!それだけで言えば先輩たちより上だろうな。しかし兵の流れを組み立てることしかできてない。追加追加ばかりだ、連携はできてたのは確かだが足りない。もっと場に出した兵を再編成して戦うことを覚えないと取り返しがつかなくなる」


当然の指摘だ。次からはそこを意識して…


「上級生は予備兵もそれなりに投入されたあの状況から敢えてさらに兵を増やしつつ現場も整えていく…素晴らしい流石に2年間ここで学んだだけはあるな!しかしそれでも予備兵を0にするのは得策ではない。現場が優勢だとしても将の首が取られればそれは数百数千の兵を失うと同義だ」


「「はい」」



「では講義を始めよう今日のテーマは“包囲と囮”。

簡単に見えるが、戦場で最も多くの死者を出す戦術でもある」


ルディウスは淡々と続けた。


「まず問おう。なぜ包囲戦は危険だと思う?」


沈黙の中、リカルドがすっと手を上げた。


「敵を取り囲むということは、味方同士も視界を制限し合う。

 全体の統率が乱れやすく、敵が反撃に転じると自軍の内部が混乱します」


「ほう、正解だ」

ルディウスは頷き、黒板の駒を動かした。


「包囲は“制圧”であると同時に、“拘束”でもある。

 味方が敵を囲むということは、味方自身も戦場に縛られるということだ。また基本的に層は薄くなりがちだ。そのため破られると総崩れする」

「包囲の恐ろしさは、敵の“恐怖”にある。

 恐怖は判断を狂わせるが、同時に異常な力も生む。

 それを理解せずに包囲すると、逆に包まれる」


リカルドが静かに手を挙げた。

「つまり、戦場は盤上の駒じゃなくて、人間の心で動くということですか?」


「そうだ。完璧な図より、余白を持つ方が強い時もある」


レオンがその言葉に小さく反応した。

(……なるほど。自分の作戦が動かなくなる、か。後重要なのは人の心。先のゴーレムや幻獣とはまた違う視点になるな)


ルデイウスは黒板の駒を一度すべて払うと、中央に一つだけ残した。

その駒を指先で弾く。


「包囲よりは“余白”を与えて誘導することが必要だと話したな。

 敵に『まだ逃げられる』と思わせる、そのわずかな道こそが罠になる」


リカルドが頷く。

「締めすぎれば、敵は暴れる。逃げ道があると思えば、動きが読める…ということですね」


「その通りだ。だがその“逃げ道”を信じさせるには、誰かが“誘導”せねばならんことも多いそれが、囮の役目だ」


レオンが言う

「危ない役。…囮って、つまり自分が敵を釣るってことですよね?」


「釣る、という表現は悪くない」

ルディウスは黒板に線を引き、円の外に一本だけ長い道を描いた。

「囮は“余白”をただの隙から、“導線”に変える存在だ。包囲の成功は、この“誘い”をどれだけ自然に見せられるかで決まる」


レオンが口を開いた。

「でも、その囮が動くってことは……仲間との連携が前提ですよね。引きつけるだけじゃ終わる」


「そうだ。囮は孤立してはならん。“囮が生きて帰る道”を、味方が作り続ける。それが、戦術における信頼というものだ」

「敵から見たら美味しい餌。なのでリスクが伴うようだが連携して絡めとるわけだから実は囮と言う言い方の割には別に捨て駒としてのそれとは全く違う。

特に戦場で言うと安全な役割などないしな」


リカルドが静かに言う

「囮は犠牲ではなく、仕掛け。

 包囲を“動かす鍵”ということですね」


「そうだ。よく覚えておけ」

ガルディスはチョークを置き、黒板を見上げた。

「戦術とは駒を並べることじゃない。

 駒に“動く理由”を与えることだ」


授業が終わり、帰り際。

レオンが小さく呟いた。

「俺たちの戦術も“仲間を動かす力”で変わるってことだな」


ーー

光を受けて剣の刃が銀色に光る。

石畳に刻まれた古式の目印に沿って、第二王子シリウスは剣を構えた。


「王子殿下の剣は、国の象徴です。その一振りで士気は変わる覚えておくように」

教官の声は厳格で、訓練場に反響した。


シリウスは刀身をじっと見つめる。

(……戦場で美学が通じるなら、誰も死なないはずだ)

言葉には出さず、胸の奥で呟く。


一振りごとに正確な軌道と力加減を確認する。

切っ先は空気を裂き、音は規則正しく地面に響いた。

形式美を追求する剣術は、単なる攻撃手段ではなく、心を映す鏡でもあった。


訓練後シリウスは隣の心理学クラブに出席した。

机の上には資料が置かれている。

今日のテーマは「思考の誘導と動機分析」だった。


教官が淡々と黒板に書き出す。

「人は信念で動く。それは間違っていない。しかしそれを継続、向上させるためには“納得”が必要になる。力や命令では動かない場合もある。戦場で兵士を動かすのは、感情のコントロールであることを忘れるな」


シリウスはゆっくりと頷く。

(信念ではなく納得……か。レオンたちのように、仲間が信じて動く戦術も、結局は心理学の応用だな)


教官が続ける。

「例えば敵を誘い込み、囮の動きで揺さぶる場合、ただ命令するだけでは失敗する。『この行動が正しいと納得させる』ことが重要だ。また結果どうなるかと言うことまで伝えることで思い違いを防ぐことが出来る」


シリウスは心の中で剣を振るように考えた。

(包囲も、囮も、信頼も、すべて“心を読む剣”と同じだ相手の動きも自軍の動きも、一瞬先を読む)


小さく息を吐く。

「理想を貫ける戦場など、ありはしないならば、美学をどう活かすか、納得をどう作るかそこに全てを賭けるしかない」


資料に指先を滑らせながら、シリウスは静かに決意を固めた。

(この力が、いつかレオンたちと交わる時に互いの戦術がどう絡むか、楽しみにしておこう)


剣術の美学と心理学の理論を胸に、王子は訓練場を後にした。

その姿には、まだ見ぬ戦場での覚悟と、理想を現実に変える冷静な眼差しが宿っていた。

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