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兄弟  作者: Sugary
SS
21/22

2 低レベルな質問

 日曜日の夕方六時三十分。

 何十年経っても、決して年をとらないアニメが始まった。毎週見ているというものでもないが、BGM的になんとなくテレビをつけていると、日曜日のこの時間帯には大概このアニメが流れてくるのだ。そして何気なくオープニングの歌を口ずさむのは、もちろん克己。

「♪お魚くわえたドラ猫、おぉっかけぇて~ 裸足で、かけてく──」

 ──とそこまで歌って、ハタッと止まった。洗濯物を取り込むべくベランダに出ていた秀行は、急に声が途切れた為〝?〟と部屋を覗き込む。しかしテレビを見る後姿は先ほどと変わらず、故になぜだか分からない。とりあえず何もなければそれでいいか…と、再び洗濯物を下ろし始めたのだが、同時に秀行の名が呼ばれた。

「なぁ、ヒデ?」

「…あぁ?」

「ドラえもんって、〝ドラ〟の〝えもん〟なのか?」

「…………?」

「ヒデ…?」

「どういう意味だ?」

「だからよ。〝ドラ猫〟は飼い主がいねぇ猫で、ドラの猫ってことだろ?」

「ああ」

「〝ドラ息子〟は、なんかどうしようもない息子ってゆー意味で、ドラの息子だし。──ってことは〝ドラえもん〟も、どうしようもない、ドラの〝えもん〟ってことになんねーか?」

「………………」

 二十歳にもなって、なぜにそんな疑問が湧くのだろうか?

 しかもドラ猫やドラ息子の〝ドラ〟は、カタカナではなく、ひらがなの〝どら〟だ。だからといって、〝どらえもん〟だったら〝どら〟の〝えもん〟かというと、そうではないのだが…。

 答える気にもならない秀行に対し、〝また、黙りやがった…〟と呟く克己。

 洗濯物を下ろしながら深い溜め息を付けば、タイミングよく玄関が開き直哉が入ってきた。そして当然の事ながら、先ほどの質問が直哉に向けられた。しかも〝ただいま〟の挨拶を遮って…。

「山ちゃん、ドラえもんって、なんだよ?」

「はぁ!?」

「だから、ドラえもんだ、ドラえもん。〝ドラ〟の〝えもん〟なのか?」

 話の筋も何もあったものじゃない。帰ってきて早々、唐突な質問に、さすがの直哉も一瞬黙り込んだ。しかし慣れたものだ。

「なんだ、今頃気付いたのかよ? オレなんか小学校で知ってたぞ」

 ──と、真顔で答える。

「マジで!?」

「あぁ。ちなみに、ドラミちゃんの本名はミーちゃんだ」

「うわっ、マジかよ!? ──ってことは、ドラのミーちゃんってことか?」

「あんまり知られてないけどな」

「へぇ~。兄妹揃って〝ドラ〟とは…。〝のびた〟より全然マシなのにな」

「まったくだ。かわいそうな〝えもん〟君と〝ミー〟ちゃんだぜ」


 なんともまぁ、バカな会話だ。

 直哉が冗談で答えているのは誰が見ても明らかなのだが、肝心の〝一人〟には気付かれない。

(カツの常識欠如が直らない原因のひとつは、直哉か…)

 黙って洗濯物をたたんでいた秀行は、再び深い溜め息を付くこととなった……。

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