5 人生は短い
「君たちは、教えてもすぐ死んじゃうじゃないか」
あの方は、私に比べてはるかに寿命が長い。その長さは私には想像もできない。十倍かそれ以上かもしれない。虚無に服している私たちには、想像もつかないほど長く、深いものらしい。
「ノオン」
問いかけられても、こう答えることしか知らないし......
「うなされているのかい? 呻いているのかもしれないね……君の病気はリンパ腫だということだ……抗がん剤もそんなに長くは効かない……せめて、君には残りの時を充実して生きてほしいね」
そう言われてもねえ……たとえ、不治の病だとしても、私は今まで一生懸命生きてきたわけだし、これからも一生懸命生きていくだけ……病気でない他の者たちと、生き方は大差ないと思うけど。
「君には希望がないわけだ......絶望も無いらしいけどね」
そんなことはないんだけど....。私たちは、啓典の父様の思いをなんとなく初めからわかっているから、啓典の子たちが現れるのを切に待ち続けている。私たちにとってはそれが未来への確実な希望に繋がっているから……いつかは必ず滅びの隷属から解放されて、啓典の子供たちとともに、栄光に輝く自由に与れる……
「寝ている姿を見ると、何もかも悟っているように見えるんだけど……」
うーん、あれ、これは......クンクン、良い匂いがしてきた.......マグロと鮭……た、たまらん。
「なんだ、結局はいつも胃袋のことを考えているのか」
その通り。....先ほどまでは、無心の心で希望を心に描いていたのが、魚の匂いがした途端に心に浮かんだのは胃袋のこと。結局、私たちはそういう存在なんだ。
「ほら、一緒にご飯を食べよう……その後は、二人でベッドに行こう」
あの方はそう言って、私をいざなった。そう、そこであの方が私の顎を指で撫で、耳をくすぐり、背中を下へあの手で撫でてくれる。
「ゴロゴロ、しよう....ゴロゴロゴロ」
やっと二人だけの時間が来る。今の私にとっては、これが全て、あの方が全て。




