4 発熱
私の肝臓がおかしいらしい。
突然の黄疸にあの方はとても驚いたらしい。
「これは一体!? おい、どうしたんだ!?」
「ぐふぐふ」
「ここがいたいのか?」
「ニアー(近い!)」
まもなく私は熱を出した。すると、あの方は慌てたように体温計を買って来てくれた。
「さあ、体温を測るよ」
「エエ? ネエエ!」
「申し訳ないけど、これは下半身に突っ込まないといけない奴だよ」
あの方はそう言ったとたんに私にとびかかった。そのまま私はうつぶせにさせられて抑え込まれてしまった。
「あれえ、どっちに差し込むんだろうか? この格好からだと見えないんだよ……」
あの方の手が、私の下半身に伸びた途端、私はパニックになった。
「ネ、ネエ」
そこはちがいますよ、と言いたかったのだが、抵抗することで一杯だった私は苦し紛れの声を出すのが精いっぱいだった。私が抵抗できないのをいいことに、彼はそのまま間違ったところに体温計を突っ込み、そのまま私の尻尾に体温計を添えて抜けないようにしてしまった。
「ギギギギギー」
わたしは一生懸命に首を振って逃れようとした。ふと、目の前に「Lubricating Jelly Sterile」と書かれたチューブが転がっていた。あの方は、このチューブを失念している....いきなり、しかも間違ったところに、なんて......
「あれえ、抜けちゃったよ」
あの方はそういうと、一旦私を自由にしてくれた。
「入れる場所を間違えていたね、ごめんよ、でも、もう一回測定するからね」
そういうと、今度は体温計を消毒しなおした。私は、それを見て危険を感じて彼から逃げ出した。いつもなら、彼の背中に爪を立てているところだが、今回はそんな雰囲気でもなかったので、這う這うの体で逃げ出していた。
「あ、こら、まて!」
彼は体温計とジェリーチューブを両手に持ったまま、私を追いかけて来た。彼は私を風呂場まで追い詰めた。
「こんなところに逃げ込んだのかい? ちょうどいい……もう逃げられないよ! 優しくしてあげるから、もう逃げないでくれよ」
そんな言葉で私が大人しくなると思っているのだろうか? 差別意識も甚だしい男! わたしは最後の抵抗を試みた。その拍子にシャワーの線を開いてしまった。
「うへえ」
「ギャーオ!」
二人とも悲鳴を上げながら、もつれあって浴室の床に倒れこんでしまった。不覚にも、私が油断をした拍子にあの方は私の尻尾を捕まえた。
「今度はちゃんと手順を踏まえるから……おとなしく、そう、力を抜いて!」
わたしは観念した。彼は暫くそれを動かさないままで居てくれたのだが、私は我慢できずに訴えた。
「ウー、ウー、フー」
体温は39度だった。彼はそのまま私を病院へ連れて行った。
「肝臓に転移がありますね」
病院の杉浦医師は、そういって、私に抗がん剤を処方してくれた。




