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西の街、白虎の封印

西の街、白虎の封印に施 明霞の第五班が向かった。

封印は解け、第五班も計画通り戦いに挑んだ。

この戦いで、明霞は何を得られる?


戦いは失うものだけではない。

少なからず、本当に大事なものだって生まれる。


 西の街。白虎の封印解放。


 この街はずっと夕方の景色。紅葉の散る姿は美しい。

しかし、その景色すらも蝕むような暗雲が西の方角から襲ってくる。

風も少し増えてきた。

「愈々ですね。」


 第五班、白虎の封印作戦…

第五班隊員数五十人。前線十五人、後方二十五人、治療班十人。

まず最前線に明霞が向かう。

一時間後、戦闘不能になった場合、前線部隊が出る。

後方部隊まで回るまでに、治療班は明霞の治療を行う。

戦闘可能の状態になったら、再び後方部隊に加勢。または最後尾につく。

討伐が失敗した場合のために、後方が戦っている間に前線の治療を万全にしておく。

繰り返し、派遣する。


 竹林に囲まれた封印石の前で待機している明霞。

風に靡く白い髪は本当に綺麗だ。

「…!」

その瞬間、封印石から魂が抜けたかのように、強烈な風が吹き込んできた。

辺りの竹も葉も大きく揺れる。

風の勢いで閉じた目を開いて言った。

「来ましたね。貴方が西の守り神、白虎様ですか。」

目の前には封印石よりいくらか大きい白い虎が立ちはだかった。

「前線に被害を及ぼしたくないので、私がここで仕留めさせて頂きます。」

明霞の能力、剣術。この能力は刀を使うことで作動される。素早い攻撃も体力を消耗することなくできる。しかし、この能力にも代償はある。それは強い剣術を使えば使うほど、体内の酸素が必要以上に使用されていくことだ。

 明霞は刀に手を添え、鞘から刀を抜く。

「覚悟はよろしいですか…!」

刀を構え、大きく息をし、体内に大量の酸素を送る。

能力発動…

シュッ!

先程までいた場所に明霞の姿はない。

「他所見は良くないですよ。」

なんと白虎の目の前にあったはずの明霞の姿は、一気に背後まで来ていた。

刀は白虎の首をめがけて振られた。

カキンッ‼

「何…!」

それは金属でも斬るかのように硬い感触だった。

「…っ…そういえばそうでしたね…白虎の属性、金…」

白虎の首全体が、金で覆われていた。

刀は少し刃こぼれをした。

「ふっ…これは一本取られましたね…」

「でもまだです…!」

明霞は白虎の攻撃を華麗にかわし、次は頭を狙う。

白虎はそれに追いつくように頭を金で守った。

だが、刀は金を貫通させた。

白虎は人間でもわかるくらいに驚いた様子を見せる。

「どうせこう来るかと思っていたので、予め刀に熱を込めておきました…‼」

ザクッ

頭の一部は吹き飛んだ。

「これでお互い同点ですね。」

しかし、白虎は冷静だ。一撃喰らわしたというのに…

その瞬間、白虎の血液が金に代わり、吹き飛んでなくなった頭の一部を金で補った。

(くっ…やはり…弱点は頭ではなかったか…)

白虎の攻撃をかわしながらも、弱点を考え続けた。

「ヒュっ…」

(…⁉まずい…!考えることに集中しすぎて、呼吸を怠っていた…‼)

速さで上手い具合に気配や姿を消していたが、呼吸にワンテンポのズレがあったせいで、一気に呼吸のリズムが崩れた。

(落ち着かなくては…‼)

だが、その崩れを白虎は見過ごすはずがなかった。

一瞬姿を現した明霞を目掛けて、金属の竹槍を放った。

くはぁっ…‼

槍は背中に命中してしまい、その勢いで地面に叩きつけられるように、落下してしまった。

「っ…はぁっ…はぁ…」

(私が油断してしまったばかりに…っ)

呼吸が乱れ、その上かなりの出血量だ。

監視係の合図で明霞は撤退し、治療のため一時離脱を図った。


 前線部隊参戦。交代の隙を作ってしまったせいか、白虎は街に下りていた。

しかし、前線の隊員達は冷静に作戦を決行する。こういったところは第五班隊員の良いところである。


 前線の作戦内容…

三ターンでそれぞれ分かれて、攻撃をする。

一ターン目は、偵察組の五人で構成されている。

二ターン目は、体力の消耗をさせるため、回避力に長けた者五人で構成されている。

最後の三ターン目は、攻撃力の高い者五人で構成されている。

この順で約一時間以上は粘る。


 作戦開始!

一ターン目、偵察組。彼らの目的は白虎の全ての能力、弱点を炙り出すこと。

もちろん、身体能力もそれなりに良い者が多いため、白虎の体力消耗にも出来たら貢献していくと良い。

忍びの能力で姿を消す者、幻覚を見せる能力者も思うに動けていたため、白虎の足止め、妨害には順調に力を入れることができた。

戦いながらも、能力内容を解析していく。


 二十分後…

死亡者数一人、重傷者三人、軽傷者一人。

死者は出てしまったが、白虎の能力を全て炙り出すことができた。しかし、弱点を知っていた隊員一名が死亡してしまったため、弱点は結局わからないままとなってしまった。


二ターン目、体力消耗組。彼らの目的は、白虎の体力を消耗しまくること。

回避能力に長けた者が多いため、上手く白虎の体力を削ぐことができる。

スピード系に優れた者、精神型攻撃に優れた者もいたため、体力消耗も順調に進んでいった。

攻撃組に負荷を掛けさせないために、最善を尽くして彼らは役目を全うした。


 二十分後…

死者数〇、重傷者二人、軽傷者二人、無傷一人。

死者を出すことなく、彼らは役目を果たした。体力消耗組は他の組より、冷静な者が多いため、そこが役に立ったのだろう。大きな第一歩だ。


最終ターン、攻撃組。彼らの目的は、白虎の討伐。責任重要な役割である。

攻撃力の高い者が多い。明霞の前線で終わりにしてほしいといった願いから、前線では班の中でトップクラスに優秀な者を多く選別している。

火炎能力で、金を溶かし、攻撃を続けていく。偵察組からの弱点の情報がなかったので、攻撃班で探し出すためありとあらゆる箇所を攻撃していった。

しかし、どれだけ攻撃しても白虎が倒れる様子はなかった。

戦いの最中、ある隊員は白虎の弱点に気が付いてしまった。

その瞬間、知ったと同時にその隊員の姿はなくなった。

他の隊員は戦いながらも探すが、姿は見つからず、結果としては行方不明扱いとなった。


 約二十分後…

死亡者数一人、重傷者一人、軽傷者二人、行方不明者一人。

最悪なことに、討伐には成功しなかった。弱点も分かることなく、前線の戦いは終わりを迎えた。


 残念な結果ではあったが、死者数は最低限抑えることができた。前線の重傷者や軽傷者は治療班の元へ行き、後方の隊員と交代をした。

「待ってください…私はもう大丈夫なので…行かせてください…!」

「だ、だめですよ!まだ休んでないと、傷口が開いてしまいます…!完全な治療が済むまでは、ここにいてください!」

「……っ」

明霞の治療はまだ終わっていないため、後方の隊員に加勢することはできない。

このまま治療が終わらなければ、最後尾で再戦を果たすのも、難しいだろう。

「とにかく、今はみんなを信じましょう。私達もできるだけ早く治療できるように最善を尽くしますので…」

「…わかりました。ありがとうございます…」

明霞は優しすぎるがために、隊員達が傷ついてしまうことに負い目を感じてしまうのだ。

最前線で戦った理由だって、できるだけ隊員達を傷つけたくなくて決めたこと。

明霞自身、戦場で戦う立場なら多少傷つく覚悟が必要なことくらいわかっている。

それでも、人が簡単に傷ついているところを見たくない。自分なんかについてきてくれた隊員をそう簡単に手放したくはない。

そういった気持ちが強すぎるせいで、どうにも他人を甘やかしてしまうところがある。

それ故に、明霞は本当の意味であまり他人を上手く信用できない。

でも、そんな明霞を受け入れてくれた者もいる。それはこの班の隊員達だ。

 実は特殊部隊では、大きな事件があるごとに班を組み替える。六つの班といったところは変わらないが、班長も、その班の隊員構成だって毎回バラバラになる。

隊長と副隊長はどんな時も固定で班長を務めるが、その他の班長は元一般隊員だった者が多い。

班長になるには、多くの尊敬、実力が必要となる。

そして今ここで立っている班長達は、本当に仲間からの信用を得られている者。

千年に一度の四神封印解放。この日は、一番特殊部隊が活躍する日だ。

それから、隊員達の中で一番信頼されている隊員がわかる時でもある。

そこに明霞がいる時点で、もう十分信頼されている証だ。

おまけに、この部隊で二番目には尊敬されている存在。だから明霞の班になりたいと願う者も少なくなかった。

明霞自身も自分がどれだけ仲間に信用されているか分かっている。

分かっているからこそ、簡単に傷ついてはほしくない。

ずっとそう思っていたんだ…




 その時、後方も前線の時と同じような攻撃を繰り返していた。

それでも白虎を討伐することはできなかった。死者は出なかったが弱点に気づいた者は、全員が行方不明となってしまっている。


 一時間もすれば、後方部隊の者達も帰って来た。

みんなボロボロだ。

それを明霞は見ていられるはずもなかった。

「最後尾、行かせてください!今度こそ犠牲になってしまった仲間達のために、私が止めを刺してきます…‼」

「明霞班長は一つ勘違いしてます。」

治療班の隊員はそう言い放った。

「犠牲になった人達がどう思っているかは知らないですけど、少なからず私達は本気で死ぬ覚悟を持って戦場に立っています。なので、私達のことは気にする必要はないです。」

「…。」

「私達特殊部隊の役目は、仲間のために戦うことじゃなくて、人類のために戦うこと。大げさかもしれませんが、人類のために命を懸けることって、そうできることじゃないんですよ。でも、他人のことを思いやれる貴方ならできるって思ったから、そう信じたから、私達は貴方を選んだんですよ。」

はっ…

その瞬間、心の中は熱を帯びるかのように熱くなった。

人の本当の温かさに気づいてしまったのだ。今まで行動だけで根拠がなかったのに、言葉にされて初めてわかった気がする。

自分がどれだけ仲間に愛されていたか。

今までそれを分かってあげられなかったのが、本当に情けなく感じる。

「ありがとうございます…」

ただ今は、それだけしか返してやることもできなかった。

「でも、まぁ、明霞班長の気持ちも分からなくもないです。あと、治療はもう終わりましたよ。」


「そういうことなので……最後尾、絶対に倒してきてくださいね、みんな待ってますから!」

「……!」

今ここにいる隊員全員、こんなに輝いて見えたのは初めてだ。

亡くなってしまった隊員も、いつしかの記憶を遡れば、本当に輝いて見える。

「皆さん…本当にありがとうございます。」

隊員は明霞の背を見送りながら、再び戦闘の幕は上がるのであった。




 「白虎様、やっと再戦ができますね。」

白虎は唸りながら、徐々に迫ってくる。

能力解放…

明霞は姿をまた消した。

(みんなは、どこを試しても無効だと言っていた…何か見逃した点は…)

ふと治療中の時話していた監視係の隊員の言葉を思い出した。

『そういえば、前線の時も後方の時も行方不明になった人全員白虎の背後で消えているんですよねぇ。』

(背後……)

明霞は物凄いスピードで、姿を見せることなく白虎の背後に近づいた。

(…!もしかして…!)

明霞は白虎の影を思いっきりに斬りかかった。

すると…

ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼

と、白虎は大きな悲鳴を上げた。

それと同時に白虎の姿はどんどん薄れていった。

空は暗雲から真っ赤な夕日を取り戻し、明かりを取り戻したころ、気が付けばもうそこに白虎の姿はなかった。

だが、行方不明になっていた隊員達は、不思議と白虎のいた場所で気絶していた。



 明霞は監視係の隊員から封印の綱を受け取り、封印石にしっかりと結び付けた。

「封印完了しました。」

ただそう呟いて、明霞達は宿場に戻った。


 後日、行方不明になっていた隊員から話を聞くと、影が弱点じゃないかって気づいた瞬間辺りが真っ暗になっていたと口を揃えて言っていた。きっと神隠し的な類であろうと、話はまとまった。

それにしても、どうして明霞は弱点の正体に気が付いたのに、無事だったんだろうか。

ふむ。答えは簡単だ。それは明霞の能力がすごいからだ。





 西の街、白虎の封印は二名の犠牲の元、果たされた。

青龍の封印では、失ったものが多かったが、戦いは失うことだけではない。

どこか心の奥底で結びつくものも、きっとあるはずなんだ。



次回

第五話「南の街、朱雀の封印」


本作品、「異世界の皆さん、手伝います‼」の第四話『西の街、白虎の封印』をご愛読くださり、誠に感謝いたします。

今回も割と順調に作業が捗りました。

特に書くことはないんですけど、やっぱ小説書くのって楽しいですね。

本当にそれだけです…次回もお楽しみに。

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