東の街、青龍の封印
東の街、青龍の封印に高 勝峰の第三班が向かった。
封印が解け、第三班は綿密な計画で、青龍の封印に挑んだ。
だが、当然の如く犠牲は出てしまった。
失うものは命だけでない。
あの人との思い出だって…
東の街。青龍の封印解放。
「勝峰班長‼今さっき、青龍の封印が解放されました…‼」
「直ちに前線の隊員を派遣しろ!」
第三班、青龍の封印作戦…
第三班隊員数五十名。前線二十人の派遣、護衛に十人の派遣、後方に二十人の派遣と最後尾及び後方の司令官を勝峰が務める。
前線が解放された青龍と戦い、人手不足次第護衛の隊員が加勢する。
約一時間後、倒せなかった場合後方の隊員と交代。
戦闘不能の者が多数の状態になった時、勝峰が加勢する。
無事討伐を成功させた場合、綱の用意をあまりの護衛の隊員に頼む。
そして、勝峰が封印石に綱を巻き終えたら封印成功。
もしこの作戦で青龍の討伐に失敗してしまった場合、作戦を再度練り直すか中央の援護部隊に加勢を要求する。
ゴロゴロ…
森付近で雷雨が起きる。
「これが…噂とされる青龍の能力か。」
青龍。属性は水と噂されているところもあるが、本来は木で、自然を司る神だ。
前線の隊員は雨に打たれながらも、森の中へと進む。
その瞬間…
ドーン‼‼
と、森の中心部から大きな雷が落ちた。
運良くそれで負傷者は出なかったが、あれが直接当たりでもしたら確実に死ぬ。生きていられても丸焦げだ。
風は次第に風力を増し、妨害されながらも前線の隊員は森の中を進んだ。
前線の作戦内容…
まず森の中央まで来たら、森の木を全て伐採する。
木を全て伐採することにより、障害物がなくなり、戦闘の幅を広めることができる。
ただし、雷に直撃してしまう可能性は高くなるので、注意が必要。
伐採班十人、囮・攻撃班十人。
伐採班は、主にスピード能力に長けている者、力のある者で組まれている。
そして青龍は空中を舞う時があるので、浮遊能力が使える者、及び攻撃力の高い者は囮・攻撃班として組まれている。
雷をうまく避け、隊員達は森の中央まで来た。
「作戦開始!」
前線の隊長の指示で各二班は分かれた。
雨風に打たれながらも隊員達は作戦に励む。
ドン!ドン!
木は大きな音を立て次々に倒れていく。
青龍は、色んな方向に雷を落としていった。それで体の一部を負傷した者もいた。
それでも隊員達は作戦を続行し続ける。第三班隊員の良いところ、それは勝峰に似てみんな諦めが悪く、情熱的なのだ。
もし他の隊員だったら諦めるだろということでも、彼らが諦めることは決してない。
なぜなら、隊員全員が勝峰を尊敬しているからだ。
特に尊敬しているのが前線隊長の高 飛龍〈ガオ フェイロン〉。勝峰の弟だ。
飛龍は思い出す。いつかの兄の言葉を。
『叫び続けろ!例え雨風でかき消されようが、お前の声は必ず仲間の心に伝わっている‼だから叫び続けろ!』
飛龍は大きく息をする。雨風の音も、雷の音もお構いなしに叫んだ。
「お前ら‼決して諦めるな‼俺らの唯一の強みは、諦めないことだ‼‼」
その瞬間、木は大きく揺らぎ、ある隊員は言う。
「はっ(笑)当たり前だろ…!後方の奴に苦労なんてかけれるかっての!」
そして森の中で戦い続ける隊員全員、自然と力が漲った。
さっきより力が増した隊員達は、森の伐採ですらあっという間に終えることができた。
第一関門突破。囮で約三名の死者が出てしまったがこれも大きな第一歩だ。
伐採班は役目を終えたため、囮・攻撃班の戦力に加わった。
戦力が上がった今、もちろん油断を見せる者もいた。
最初はうまく押して行けたものの、それを逆手に取られたせいか、約一時間後には死者数十人、生存者数八人、行方不明者数二人、追加護衛の三人が死亡という、残酷な結末を迎えてしまった。
戦闘不能の隊員が多数に達してしまったため、後方の隊員に交代をした。
木は一本も残らず伐採され、もう森とは呼べない平地を後方の隊員達はまっすぐに進んでいく。
後方の作戦内容…
後方の隊員は、前線の隊員よりもいくらか能力が優秀な者が多い。
それをうまく利用して、班を構成した。
まず空中班七人、空中班は主に浮遊能力を持つ者、近距離攻撃に長けた者で構成されている。
そして地上班十三人は、主にスピード能力に長けた者、遠距離攻撃を得意とする者で構成されている。
空中である程度の体力を消耗させた後、地上にやって来たところを、地上班が攻撃を行うといった形だ。
各二班はそれぞれの立ち位置に移動した。
「作戦開始!」
後方隊長の合図とともに、作戦を実行し始めた。
雷は最初の時よりも、酷くなってきていて雨風も相当な勢いで妨害をしてくる。
しかし、後方の隊員の中で唯一雷を操る者がいた。
その隊員のおかげで、雷の攻撃には上手く対抗することができた。
前線の隊員達が結構なくらいに青龍の体力の消耗をしていて、然程攻撃には苦労がなかった。
ここまでは順調だ。ただ油断は禁物だ。押していても青龍はまだ倒れない。
だが、もちろん青龍にも弱点はある。それは火だ。
前線のとある隊員に聞いた話によると、青龍は木属性のため、対抗をするのなら火を使える者が有利であるらしい。
そして、後方の隊員たちの中で火を扱える者は二人いる。
その二人を空中班、地上班で予め分けていたため、これは絶好のチャンスだと思う。
しかし、不都合なことがある。それは雨風が酷いため、火の能力を使ってもすぐかき消されてしまうのだ。
雨風がかなり厄介すぎる。
仕方なく物理型の攻撃を行っていくが、上手く倒すこともできなく、絶望的な状況に隊員達は焦りつつあった。
そしてさらに一時間半の時が過ぎる。
不都合の連鎖が続きすぎて、結果はこれまた失敗に終わる。
死者数七人、生存者数十三人。前線の時よりか犠牲は少なくはあったが、結果としてはどちらにせよ最悪だ。
「あとは、俺に任せろ。」
勝峰は立ち上がる。
その背中は勇ましく、安心感で満ち溢れていた。
これがきっと、隊員たちが勝峰を尊敬する理由である。
負傷をしたある隊員はこう言った。
「一人で行くんすか…‼流石に危険っす‼護衛でもいいんで、俺も連れてってください…‼」
それに対し、共感するように他の隊員もそう言い放った。
「ふっ…いつの間にそんなめんどくせぇ性格になっちまったんだぁ?お前らは。」
鼻で笑いながらも、内心は部下の成長に喜ぶ上司のような気持ちでいた。
「だが、心配は無用だ。俺一人でどうにかしてやる。」
心配そうな顔をする隊員達。ただ心の奥底では勝峰を信じようと思うのであった。
青龍は森以外の範囲も攻撃し始めた。
空は雲で隠れて真っ暗。
(絶対に俺が倒して見せる…この手で…。)
拳を固く握り、勝峰は能力を解放する。
勝峰の能力は強爆破。対象の者に対して強い爆破を与えることができる。念じれば念じるほどより強い爆破を生み出すことができるが、この能力の代償は記憶の一部を消すこと。
強ければ強いほど、消される記憶の範囲が広くなるのだ。
(本当はこの能力は使いたくなかったが…この街のためだ…)
勝峰は手で銃の形を作った。そして青龍に向かって強く念を込め、撃ち放つ。
その瞬間、青龍の元で大きな爆破が起きた。街をも揺れ動かす勢いで。それと同時に、勝峰の中ですごく大事な記憶が抜け落ちた。
ドーーン‼
青龍も体力の消耗のし過ぎと、先程の爆破の威力で森の中へと落ちていった。
勝峰は護衛の隊員を呼んで綱の用意を頼んだ。
そして、すぐさま青龍の元に向かい、止めを刺して封印石に綱をしっかりと巻き付けた。
空はあっという間に明るく晴れ上がる。さっきまで暗かった空にこの太陽は眩しいくらいだ。
街に戻ると、真っ先に隊員達が駆け付けた。
「勝峰班長…!お疲れ様です…‼」
歓声が飛び散っていく中で最初のころと比べるとかなり人数が減ったなと思う一方、その中のただ一人の顔が思い出せなかった。
(…?俺は誰かのことを忘れている…?)
思い出したくても思い出すことができなかった。
(でももうここにはいないし、きっと戦いの最中で死んでしまったのだろうか…)
そう思うだけで、深く気にしようとは思わなかった。
ただその人物は勝峰にとって大切な存在であった。それだけは多分、唯一分かること。
丸一日かかることはなかったが、約二十二人の犠牲の元、青龍の封印は成功した。
そして後日、死亡認定の書類をまとめた時。
勝峰はただひたすら高 飛龍の名前で引っかかっていたのだ。
次回
第四話「西の街、白虎の封印」
本作品、「異世界の皆さん、手伝います‼」の第三話『東の街、青龍の封印』をご愛読くださり、誠に感謝いたします。
今回は、ほんと大変でした…途中でPCがバグって半分以上書いてたデータ全部吹き飛びましたし、散々でした…
でもどうにか取り戻すことができたので、良かったです‼
一日で三話を書き終えることができたので、私としては大満足です。四話も引き続き頑張って制作していこうかと思います。