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転生任務、魔獣討伐‼

僕だけが持つ特殊能力。〈異世界アシスタント〉

それは異世界で惨事が起きた時にだけ転生して、その世界で仲間と協力するべく異世界の住人を守るという...超重要な役割だ。

それを何で僕みたいな一般高校生に託されたのか...いまだに不明なのだ。

ちなみに転生される世界は一つだけでなく、毎度転生の時はいろんな異世界を転々としている。

おかげで自分の本当の名前を忘れそうになることがある...そこは難点かな。


この物語はそんな平凡に過ごしていたはずの一般高校生の元に訪れた、大きな変化のお話である。

さて、今日はどこに転生されるのでしょうか...。





 マドリーヌ・ウォーカー     

現在僕が転生した仮の名前だ。本名は風深 橘≪かざみ たちばな≫

ただ今の現状...



超ドデカい魔獣に追われてます…‼!!

「ぎゃぁぁぁぁ‼!助けてぇぇぇ‼!」

(やっぱり僕みたいな一般高校生が魔獣退治だなんて無理があるよお……‼)


 なぜこうなったのか、事の全容をお伝えしよう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・


 部活終わりで草臥れている風深 橘。

橘は中学の頃からバスケ部に所属している。その名残で高校でもバスケをやり始めたが、相変わらずキツイ…とか。

橘の学校のバスケ部顧問は部員を全国に行かせるために超過酷な練習をさせるのだ。

それが耐えられなくて退部した部員も数多くいる。

橘の友達も「そんなキツイなら、部活辞めたら?」とは言うけど、そう言われる度に橘はこう言い返すのだ。

「マジで辞めたい!あれは過酷すぎる!」と。

でも橘の中ではバスケをやり続けたい気持ちのほうが大きいから、やめるにやめられないらしい。

練習は過酷すぎるけど、バスケ自体は嫌いになれないからと、橘はいつもそう心の中で思うのだった。

 それから、今日もそんな疲れの溜まった体を休めるために布団の中に入る。

その時だった。視界は霞み辺りが暗闇にまみれた時、一筋の光を目にした。

そしてその光に飲まれるかのように、自然と足は光の下へと進んでいった。

踏み出した先には見慣れない光景。橘の住む街とは程遠く、RPGなどのゲームでよく見る洋風なつくりの街並み。空気も空も何もかもが別世界のように感じた。

(……‼ここは…どこなんだ…??)

戸惑いを隠せずにはいられず、辺りをきょろきょろと見回すが、本当に見慣れない。夢かと思い試しに頬を抓ってみるが、感覚だって普通にあるみたいだし、なんならちょっと痛いくらい。

とりあえず数回深呼吸をして心を落ち着かせてみる。でも頭はうまく回らない。

人がいないか辺りをもう一度確認してみるとどこからか小さく声がした。声の主をたどってみるが、視界には全く映ることはなくこれまた不思議だ。

耳を澄ませてよく聞くと、足元から微かにその声が聞こえた。

「たちばなク~ン‼あ!やっと気づいてくれた‼」

…これは...なんだ…?猫...?ネズミ…?

「はじめまして‼ボクの名前はチェイロ!キミの使い魔になったネコネズミの妖精さ‼」

「ネ…ネコネズミ…??」

確かに猫とネズミのどっちもに似た見た目をしているが、まさか融合しているなんて到底考えることもできないだろう。

それにしても使い魔になったって…一体どういうことなのか。

「初めての転生、おめでとう‼これからキミには重大な任務が与えられるよ」

「重大な任務…?」

チェイロは顔色を変え、また口を開く。

「いいかい?キミがここに転生されたのは、この世界を救うためなんだ‼」

「世界を救うって…」

混乱はするがとても大きな内容を話しているのはわかる。それに続いてチェイロは説明を始める。

「実は今日この世界で魔獣が暴れ始めて、みんな手に負えない状況になっているんだ!」

「本来なら魔獣を倒す騎士団の人たちが街を守ってくれているけど、よりによって優秀な騎士団の人たちは遠征で街を後にしているから、尚更大変なんだ‼そこで…」

緊迫感のある雰囲気を残しつつ、チェイロは再び顔色を変えることはなく話し続けようとする。

話の組合的に次に出る言葉がなんとなくわかる。

〈重大な任務〉 〈この世界を救う〉

おそらくチェイロの言いたいことは…

『『その魔獣を倒してほしい‼』』「…だろ?」

「協力してくれるのかい?」

「嫌だよ、なんで僕がそんなことしなきゃならないのさ。僕みたいな普通の高校生が戦場に首を突っ込むなんて、どうかしてるよ。」

呆れたように言い返すが、チェイロは黙っていられるはずもなかった。

「キミが協力してくれなかったら、この世界の存続は厳しいんだ‼今はキミしかいないんだ!だからお願いだ、力を貸してくれ‼」

少し間をおいて考えてみるが、それでも自分には関係ないことだと思うから考えは変わらない。

「もう一度言うけど、僕みたいな一般高校生が戦場に出向くなんて出来ないよ。危険だし。」

チェイロは俯いて悲しそうな表情をするが、それを見ないようにうまく視線をそらした。

「…わかったら、僕をもう元の世界に返してもらえるかな?あんまり長居したら気が狂いそうだ。」

「ボクの力でキミを元の世界に戻すことは出来ないよ。」

「は?どういうことだよ...」

「キミが任務を果たせない限り、元の世界に戻ることはできないんだ。」

つまり、いくら戻りたくても必ずはその魔獣を倒さないと一生その世界に閉じ込められたままということになる。魔獣を倒さないとこの世界の存続が厳しいのが現状。倒せないとなると世界もろとも橘も、その世界で野垂れ死ぬことになるのだ。

「は!?それ先に言えよ!」

そうとなると、嫌でも戦場に加勢しなければならないが…

「そういうことなので、橘クン。悪いけどキミは嫌でも戦場に出向くしかない。そしてこの世界の平和を取り戻すことしか今は選択肢がないんだ。」

グッと眉間に皺が寄る。

仕方ないとは言い難い。しかし魔獣を倒さないと元の世界に戻れないのも事実のようだ。

「…はぁ…分かった。協力はするよ。」

「ほんとかい!?それは良かった‼」

パァっと顔色が明るくなったチェイロを見て、多少安堵はするがそれでもって橘は話を続ける。

「ただし、条件がある。」

「条件?」

橘は畏まった雰囲気を醸し出し、チェイロは何を目論んでいるのかと首を傾げる。

「僕に危機が及んだ時にはお前の力を貸せ。」

うーん…と一度考える素振りを見せる。

「あ!そういえば、まだこの世界について説明してなかったね」

「実はこの世界では住民一人一人に魔力が宿っているんだ。その中でもトップレベルに強い魔術者のほとんどが、さっき言った騎士団の優秀隊員に当たるんだ。つまりこの世界にいるからにはキミにも魔力が宿っているはずだよ。」

魔力が宿っているといっても、この世界に来る前も来た後も体には何の異常もなかったし、魔力が宿っているような感じも全然しない。

「試しに呪文を唱えてみようか。ボクが今言うことをキミも続けて言ってみて!」

「異世界の助手≪アナザー・ワールド・アシスタント≫‼続けて!」

「ア…≪アナザー・ワールド・アシスタント≫‼」

(まんまだな…この呪文…)

その瞬間、体全体が軽くなったと同時にそのまま体は宙に浮かんだ。

「え‼なにこれ‼」

「これは浮遊能力だね!魔力で自分の体を軽くし、宙に浮くことができる魔術だよ!」

30秒経つと魔術は自然と解除され、ふらふらと地面に着地した。足元は覚束なくはあったが、感覚を取り戻すのにはあまり時間はかからなかった。

その代わり、橘もこの世界では魔術が使えることが証明され、益々不思議に思えてしまう。

「僕が魔術でできるのは、浮遊能力だけなのか?」

「それは試してみないと分かんない!だから魔獣と戦って自分の力を確かめに行くんだ!」

なるほど…とはならないが…とりあえず、元の世界に戻るためにも橘はその時だけチェイロの言うことに渋々従った。

「それじゃあ、早速問題の魔獣の元へ行くよ!こうしている間にも奴は街を襲い続けているからね。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・


 ということがあり、今に至る。

「ねぇぇぇぇ!!だから言ったじゃん!僕みたいな一般高校生が魔獣退治なんてできるわけないってさぁ‼」

「落ち着いて!橘クン‼さっきやった呪文を唱えるんだ!」

「えぇぇぇ‼今ぁぁ⁉」

全速力で森の中を必死に逃げ続ける橘とチェイロ。

「今しかないよ!ほら!」

「んんもうっ‼分かったよぉ!」

≪アナザー・ワールド・アシスタント≫‼

シュッッ

橘の背中から大きな翼が生えた。

「え…また浮遊能力…?さっきとはちょっと違うけど…」

「ひとまず!あの魔獣は飛ばなさそうだし、一旦の危機からは逃れられたかと…‼」

橘たちは魔獣を見下ろす。

「これからどう攻撃を仕掛けるんだい?」

「もうやだよぉ…帰りたい…」

「何を言っているんだ!ここで逃げ出したらこの世界の存続が危ういって話、さっきしたじゃないか‼」

だって…と言い訳もしたくなるようなところだが、実際に攻撃手段を考えるのにも頭がキャパオーバーしすぎて考えるどころの問題じゃないのだ。

「混乱しすぎてしまう気持ちもわかるけど…ここまで来たことだし、魔獣を倒さないと!」

「…はっ(笑)よく言うよ…お前は何一つ戦いに関与してないくせに。」

鼻で笑い、恨みがあるかのように小声でそっと呟く。

それが図星かってくらいに、チェイロは黙って間をとった。

「…確かに、ボクはこの世界のキミのように大した魔力も宿ってない…ただの使い魔だ。」

小声でそう少し呟くチェイロを見て、少し言い過ぎたかと思うがその瞬間、チェイロは魔獣にそっと近づいていった。

「でも、役には立つ!ボクはキミの使い魔だから!キミが世界を救ってくれるのなら、ボクは囮にだってなんだってなる‼」

そういって、魔獣に追われて必死に逃げていくチェイロを見て、すこしばかりかふつふつと闘争心が沸いてしまう自分がいた。

(あいつは命賭けてこの世界を守ろうとしているのに、僕は自分のことばかり考えていて…その上この世界の危機を一瞬でも見放してしまった。)


クソ…またこれか。


ふと、自分の過去がフラッシュバックした。

思い返せばいつだって自分の責任から目を背け続けた。

それは誰かのためとかではなく、結局は自分のため。自分のことしか考えていなかったから、今この状況でも自分のことばかりしか考えられない。

罪悪感はあるのに、反面仕方のないことだと自分の言い分を正当化することで精一杯だった。


 でも、今は必死に街を守ろうとするチェイロの意志が伝わりすぎていて、自分の無責任さに尚更情けを感じてしまう。

悔しさと情けなさで涙ぐんだ目はグッと力んでいく。

そして、

(…助けたい…‼)

心がそう強く叫んだとき、涙一粒が大きな光となり、自分の手からその光が溢れていくのを感じた。

そして、無意識といっても過言ではない。橘の口から呪文がぽつっと出た。

≪アナザー・ワールド・アシスタント≫‼

その瞬間魔獣をめがけて爆風が襲っていった。

爆風は自然と竜巻となり竜巻は魔獣を飲み込んで、パズルのピースのように砕け散って忽然と消えていった。




 フワッと背中の羽は消えていき、その場で横になるように倒れる。

「これで…終わったのか…?」

ぼーっとした頭にそっとチェイロの声が聞こえてきた。

「…く……たち……橘クン…」

はっと脳が目を覚ます。

「チェイロ……どうして……泣いているんだ…?」

チェイロの涙が橘の額に落ちていった。

「ボク…キミを信じてよかった…キミが勇気を出して敵に立ち向かってくれたおかげで…この世界の平和が…これからも続くんだ…‼」


この世界に魔獣という存在があり続ける限り、この世界がこれからも安泰であるかどうかは民ですら計り知れない。

でも。それでも。明日の平和を…いや、これからの平和を期待してみるのも、悪くないのかもしれない。

橘は魔力を全て使い尽くしたかのようにそっと目を閉じる。

そして願うのだ。

『この世界でも平和が続きますように。』と。




 目を覚ますと、そこはいつもと変わらない橘だけの部屋。

少し寂しい気持ちもあるが、明日からまた頑張ろうという決意も垣間見え、その日は無事に幕を下ろすこととなる。


次回

第二話「これまた転生⁉異世界に行っチャイナ!」


本作品、「異世界の皆さん、手伝います‼」の第一話『転生任務、魔獣討伐‼』をご愛読いただき、誠に感謝いたします。


本作品は、漫画の息抜きのため制作致しました。

物語を作っていくと、私の場合異能力系が多くて流石に「ネタ被りになりそうだな。」と思いつつあったので、今回は異能力×異世界もので書いていきました。

制作期間に割と少し間が空いてしまって、内容が混在しているかもしれませんが、どうかお手柔らかに…っていうのは最初に言っといたほうがよかったかもしれませんね(笑)

とういうことで、次回作も期待していてほしいです。

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