表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

バトンタッチは突然に

「困るよ! だいたい、依頼を受けたのはカモさんじゃないか、それなのに……」

「そのつもりやったんやけど、これをサボると留年してまうんや……堪忍!」

 苦々しい表情を浮かべる同居人・鴨川浮音に、佐原有作はひどく困惑してしまった。七月も半ばを過ぎて、そろそろ夏休みに差し掛かろうという、ひどく蒸す晩のことである。

「ほんとにすまんけど、今度ばかりは僕もお手上げなんや。――なあに、依頼人は早川のご隠居や。きっと解決に暁にはたんまりと謝礼が出そうやし……」

 風呂上がりで湿った髪をなでながら、浮音は有作に微笑んでみせる。しかし、向かいで麦茶をなめている有作の表情はさえない。

「僕に、カモさんみたいにトントンと謎が解けるとは思えないんだけどな……」

「なに言うてるんや。今まで何度も、君のおかげで事件が解決に向かったことがずいぶんあったやないか。ということは、僕の代理を務めることが出来るのは、きみをおいて他にはいないと、こういうわけや。腕試しと思って、ひとつ受けてくれんやろか……」

 その言葉に、有作はコップを唇へあてたまましばらく考え込んでいたが、

「――そんなに言うんなら、まあ、やってみようかなあ」

「よっしゃ、その言葉を待っとったんや。――ほいじゃ、僕は補講の準備があるよって、先に上がっとるで。おやすみ……」

 それだけ言い残すと、浮音はそのまま二階へと上がっていった。あとに残った有作は、半分ほど残った麦茶を前にして、

「……どうなるかなあ」

 と、ため息交じりにつぶやくばかりだった。


講義は単位を落とさない程度にきちんと出ましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ