強敵
「……今の亜姫がやったでござるか!?」
拙者は驚きを隠せないでいた。
「そうだよ!そうだよ!すごいでしょ!マジで私、最強すぎ!」
大はしゃぎする亜姫、流石にこれはすごいとしか言いようがない。
一発でビル郡を消し飛ばすほどの威力………そして、何より、黒怪の上半身が吹き飛んだ。これには流石の紅氏も驚いて腰を抜かすかもしれない。彼は黒怪を倒す手段を探していたから亜姫の異能力は紅氏の異能力より火力が段違いに高いのだろう。
まぁ、そんなことよりも……
「拙者には異能力がないでござるな……」
絶望だった、これまであらゆるアニメ、ゲーム、ラノベを見てきた者からすれば異能力とはすなわち夢そのもの。そんな、ヲタクの夢が目の前で崩れ落ちたのだ。
「せ、拙者の最強の……能力が………」
「まぁまぁ、そんな、落ち込まないでよ。今度から私がさっきのでドカドカっと倒し………て……」
「亜姫さん!」
亜姫が蹌踉めいて倒れそうになる。
「亜姫!」
拙者は倒れる亜姫の体を支えた。
「あれ……おかしいな…力がでない……や。」
立つことが出来ない亜姫を見て、拙者はその原因がすぐにわかった。
「……さっきの異能力はとんでもない威力が出るかわりに使用すると動けなくなるでござるか……」
見るとさっきまで持っていた銃も無くなっていた。
まぁ、あんな威力のものが連発できると考える方がおかしい。亜姫の異能力は反動が大きいかわりに一撃必殺なのだろう。
一撃必殺……敵を一撃で葬るほどの威力、間違いなく最強の能力………だから、目の前に起こってることが信じられない、信じたくなかった。
「なんで、再生してるんだよ。」
先程吹き飛ばしたはずの黒怪の上半身が元通りに戻っていた。
こちらに近づいてくる、「……こんなの勝てるわけないでござる。」拙者はそう呟く。
「わ…私がもう一発撃てば……」
亜姫は無理して立とうとするが彼女にそんな力は残っていない。蹌踉めいてすぐに倒れてしまう。
「……ごめん……無理っぽい…………ホントにごめん……。」
彼女の瞳に涙を浮かべながら謝った。
拙者には何も言えなかった。彼女に「亜姫は謝る必要は無い」と言わなければないのに言葉が出なかった。
拙者は何もできないでござるか……
また、何もできないでござるか……
……神様、今だけ、今だけでいいから俺に大切なものを守る力をください。
襲いかかってくる黒怪、その黒く鋭い爪が振り下ろされ………
「……ガンッ!!」
振り下ろされた黒い爪が空中で止まった。いや、なにかにぶつかった。
目の前には大きな盾が浮き黒怪の攻撃を防いでいた。
これが拙者の異能力……
なぜかわからないがこれが自分の異能力だと理解できた。使い方もわかる。
王子は浮いた大盾に少し触った。
「弾き飛ばせ…」
そう言うと盾に爪を立てている黒怪が吹き飛んだ。
「……やっば…プリンも最強じゃん。」
亜姫が笑う。
「瑠璃殿、申し訳無いが亜姫を頼むでござる。」
再生し、幾度も襲ってくる怪物。その怪物に立ち向かう拙者……めっちゃカッコいいでござるな。
何度でも立ち上がるそいつの攻撃を王子は全て弾き飛ばした。
時間は残り5分……
このまま、耐えれば……そう考えていると黒怪の奥に人影が視えた。
「紅氏!無事でござるか!」
そう思い声をかける……がそれは紅ではなかった。
そいつは身体は小さく白い服を身に纏い、身体に合わないほど大きな剣を握っていた。
こちらに気付いたのかこちらに向かって走り出した。
走る速さも人間とは言えないような猛スピードだった。
そして、数秒で大盾の目前まで来ると握っていた大剣を振り上げた。
拙者は「弾き飛ばせ!」と大声で叫ぶ。大剣と大盾がぶつかる。「バキッ……」嫌な音が周囲に響く。
どうにか敵を弾き飛ばしたが大盾に亀裂がはしっていた。敵は再び攻撃を開始する、目にも止まらぬ速さで亀裂の入った場所を狙い連撃を入れる。弾き飛ばそうとしたが敵の攻撃が重すぎてそれも叶わなかった。
亀裂が拡がりはじめる、大盾が壊れるのは時間の問題だった。
「………これはマズイでござるな。」
そう考えていると目の前で予想外のことが起こった。先程吹っ飛ばした黒怪がこちらに近づいて来て…………白服を襲い始めた。
白服はこちらへの攻撃をやめ黒怪と戦い始める。
何度も黒怪はバラバラになるがすぐに再生して攻撃する。そんな黒怪に驚きもせず攻撃し続ける白服……間違いなく両方とも化け物だった。
……しかし、これで時間は稼げた。あと数十秒……。
拙者が時計を見た一瞬で白服は黒怪を大剣で遠くに吹き飛ばし、こちらにむかって走り出していた。拙者は盾を構える……が白服は拙者を完全無視した。
気づいたときには遅かった。
「狙いは瑠璃殿と亜姫でござるか!」
白服は真っ直ぐに瑠璃殿へ向かって行く。
「瑠璃殿!逃げるでござる!」
わかっている、亜姫は動けない、瑠璃殿もあれは避けられない。だが、わかっていても叫ぶことしかできない。
動けない二人に大剣が振り下ろされる。
………しかし、次に聞こえたのは叫び声ではなく、金属同士がぶつかる音だった。
「……あっぶねぇ。」
振り下ろされた大剣を紅氏が間一髪で防いでいた。
「時間だ。」
紅氏のその言葉を最後に元いた部屋に戻された。
最近はスプラなんちゃらが人気ですよね……ホント人気ですよね、楽しいですもんね……いや、別にそのせいで小説が短めになってしまっているとかでは無いんですけど……楽しいですよね?
あ、皆さん、今回も読んでくださりありがとうございます。ぜひ、評価やコメントなどもしてくれると作者がゲームより小説を優先する可能性があるかもしれません。(読んでくださるだけでありがたいです。)………では、また、次の日曜日に……