最強の異能
「時間だ……準備はいいか?」
現在時刻は23時55分、強制転送まであと5分。
俺達4人はグループ通話を使うことで飛ばされてからの合流を早めることにした。
「いつでも大丈夫です。」
「拙者の力見せるときがきた。」
「オッケー!」
「よし、じゃあ、説明通り、飛ばされたら俺は瑠璃の元に向かう。王子と亜姫は同じ部屋から飛ぶから多分同じ場所になるとは思うがバラバラだった場合はそれぞれ瑠璃の場所に集合してくれ。もし、途中で黒怪と遭遇してしまった場合はすぐに報告してくれ。」
「カウント始めるでござる!5……4……3………」
息を呑む、どうか全員が無事であるように祈る。
「2………1……0!」
世界が変わる、見慣れた荒廃した世界。
飛ばされた場所は開けた大きな道、そして、目の前には………黒怪がいた。
「最悪だ。」
俺を捉えたそいつは間髪入れずに襲いかかってきた。
俺は鉄パイプで応戦する。
「すまん、みんな、俺が遭遇した!」
「え、ガチ!ヤバいじゃん!」
「とりあえず、拙者達は集まるでござる。」
「紅さんは大丈夫ですか!?」
「俺は大丈夫だから3人は集まっててく……」
「……ッ!!」
黒怪に殴られイヤホンが外れた。
こいつらがなにに反応して襲ってくるのかわからないため通話の音を抑える目的でつけていたのだが………
「飛ばされた瞬間に見つかったら意味ないけどな……。」
黒怪は倒すことはできないため、俺は合流することができない。合流すれば他の人が襲われる。
「……丁度いい、お前らが音で集まるか試してみたかったんだよな。」
俺は通話とイヤホンの接続を切り、スマホの音量を最大にして瑠璃の「ユメみる」というガチの神曲を爆音で流した。マジ、何回聴いても最高!
音を流しながら戦っていると2体目の黒怪が現れた。
こいつらは音にも反応するのか、これはいいことを知れた。
「………自分から黒怪集めといてなんだが……これ、めっちゃ集まったらヤバくね。」
普通にバカだった。3人のことばかりに気を取られて自分が奴らに有効打が無いことを忘れていた。カッコつけて死ぬとかダサすぎる……なんとかしなくては…………考えてみたが結局、戦う以外の選択肢は存在しなかった。
そんなことを考えていると流していた瑠璃の曲が止まり、電話がかかってきた。
俺は黒怪から距離を取り、電話に出た。
通話が繋がると誰かの荒い息づかいが聞こえてくる。
「おい!大丈夫か!?」
「………紅さん!こっちにも黒怪が…………」
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………王子、亜姫、瑠璃の合流後………。
「………紅氏とは、あとから合流するとして拙者達はとりあえず隠れてこの時間をやり過ごすでござる。」
「そうだよね、異能力?を試すにしても紅がいることが前提だから……」
「………紅さん、大丈夫でしょうか…?」
「紅氏は負けないから大丈夫でござる。」
紅氏がいないということは二人を守るのは拙者の仕事でござる。そう王子は意気込んだ。
隠れるのに丁度良い場所を見つけ、3人で隠れる。
これで紅氏が来るまでなんとか耐えれば……
カタッ……近くで音がした。
瑠璃殿と亜姫も気付き、息を潜める。
そっと音の鳴る方を覗くとそこにはこちらに向かって歩いてくる黒怪の姿があった。
ヤバいでござる、まずいでござる。
このまま、真っ直ぐ来たら間違いなく見つかる。
逃げる?でも、紅氏の話だとすぐに追いつかれてしまうはず…。
いや、勇気を出すでござる。拙者ならできるでござる。王子は自分を鼓舞した。
いつまでも守られる訳にはいかないでござる。
王子は小声で亜姫に「瑠璃殿を頼むでござる。」と伝えた。「え…なに言ってるのプリン。ここにいれば大丈夫だって、隠れてよ、ね、大丈夫だから。」と亜姫は言った。戸惑いが隠せていない。
「亜姫、しっかりするでござる。このままじゃ、3人とも見つかるでござる。紅氏の話では瑠璃殿は戦えない、しかし、拙者達にはまだ可能性があるでござる。ここで3人で見つかり、亜姫と拙者になんの力もなかったら全滅してしまうでござる、全滅するくらいなら拙者の最強の異能力に賭けてみるのもあり……だろ?。」
「最強の異能力ってそんなの……」
「あるでござるよ、大丈夫でござる。」
拙者は亜姫の言葉を遮った、彼女の優しさに甘えていてはこれまでと同じだ。手も足も震えているがこれは武者震いだと自分に言い聞かせる。
「じゃあ、頼んだでござる。」
そう言って拙者は黒怪の前に飛び出した。
黒怪がこちらを向く。心臓の鼓動が煩かった。
「怪物よ!拙者が貴様を倒すでござる。」
ビシッと黒怪に向かって指を指す。
黒怪は勢いよく襲いかかってくる。
拙者は震える拳を握りしめ黒怪に向かって振り下ろす。
………トンッ……と小さく音が鳴る。
……異能力は発動しなかった。
黒怪の鋭い爪がこちらに向かって振り下ろされる。
推しを守って死ねるなら本能!…………亜姫…ごめん。
……死を覚悟した、次の瞬間………
眩しい光が目の前の黒怪を吹き飛ばした。
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「じゃあ、頼んだでござる。」そう、彼は言った。
プリンは昔から何一つ変わってない。焦ると周りの声が聞こえなくなるし、一度決めたらやめないし……自分を大切にしない………。
私はそんな彼が大好きだった。
「太ってるからモテない?」
ちょっと太ってたほうが可愛いよ!
「推しのことしか考えられない?」
いいじゃん!本気で好きっていえるものがあるのはいいことだよ!
「人見知りが酷い、目を見て話せない、人との距離感がわからない…」
プリンなら大丈夫だよ!絶対できるって!周りから嫌なこと言われたらいいなよ、私がガツンと言ってやるから!
私は彼が好きで彼の隣にいたかった。
周りはプリンのどこがいいの?と言うがそんなこと教えられないよ。だって、ありすぎてなにから言っていいかわからないもん!
みんなは私が甘やかしすぎだって言うけど、私がしてるのは今までの恩返し。貰いすぎたものを返してるだけ……返せてるのかはわからないけどね。
でも……まだ、返しきれてない……こんな、意味わかんないところでさよならなんてしたくない。
だから………
「私が守るんだ!」
そう決意すると身体中から力が湧いてきた。
今なら何でもできそう。
今、私がやらなきゃいけないことはプリンを助ける。そのためには遠くになんか………ドカンッ、てやつが欲しい。
そう願うと目の前に何か四角くて大きい銃?みたいなのが現れた。
「わぁ、すごい……じゃないじゃない。」
目の前の超常現象に驚くがそんな場合じゃない。
持ち方が分からないがとりあえず銃口を敵に向けて………引き金を引いた。
「吹っ飛べ!」
銃口からは銃弾……ではなくめっちゃ光り輝くビームみたいなのが出た。
そして、ビームが出終え、プリンを見ると腰を抜かしていた。
目の前の光景を見て、私もその場に座り込んだ。
「あははは………流石にこれはびっくりだよ……。」
隣の瑠璃も驚きの表情だった。
当たり前だ、こんなの驚かないほうがおかしい。
だって………
……私が放ったビームが………敵の上半身とともにその奥のビル郡を全て吹き飛ばしていたんだから………ヤバくね?
大変申し訳ありませんでした。ホンマすんません。マジですんません。昨日の19時に投稿できなくてすみません。言い訳はtwitterでしていますので言い訳が見たい方はぜひ作者のtwitterをみてください……いつも読んでくださる皆様、本当にすみません。次回からはしっかり投稿します。
では……また、日曜日。