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あの日見た花を 後編

準備は順調に進んでいった。

リビングに始まり、玄関や廊下に至るまですべてを今日のための特別仕様にしていく。


「さぁて、ルカが帰ってきたらどんな顔するか楽しみだなぁ!」


意気揚々と準備を進め、サプライズに驚くルカの顔を想像しながらルナに語り掛ける。

…が、ルナはどこか浮かない顔をしていた。


「うーん、計画は順調だし問題ない…………とは思うんだけど」


そう言いながらずっとうんうん唸っている。

言われてみると、リルの方にも何かが引っかかっていた。

ただ、何が引っかかっているのかよくわからない。


「でもまあ、ここまでやってから片付けるのもなぁ」


誕生日のサプライズパーティーの準備はもう終わりを迎えようとしていた。

今さらやめて元に戻す、というのも無理がある。

魔法を使えば全部どうにかすることもできるだろうが、リルはあまり魔法ですべてを片付けるのを好まないタチなのもあって準備のリセットには踏み切らなかった。


「でもなぁ、何か忘れてる…ような…?」


リルも何ともなしに違和感を感じながらも、準備を済ませていった。



そして、そろそろ帰ってくるだろうという時間。リルはそっと息をひそめる。

作戦は

①帰って来たルカが家の内装が変わっていることに気付く。

②気付くと同時に何が起こっているかは察してしまうだろうから、その瞬間に飛び出してプレゼントを渡す。

③そのままリビングにエスコート、パーティーの開催

という流れになっている。


「改めて確認すると呆れるほど単純だな…」


気を散らせるようにしたとはいえ、下手をすれば前日くらいにばれていてもおかしくないくらい稚拙な作戦である。

だが、そんなことを言っている時間も余裕もない。

身体強化を聴覚に一点集中。帰宅の足音を聞き逃さない様に神経を研ぎ澄ます。


「………来たぞ、ルナ」


「そんな風に呟かなくても、考えてることは共有してるんだからわかってる」


ルナからは静かに事実を伝えられるが、そんなことをしている間にいよいよその瞬間はやって来た。

キイ、と音を立てて玄関のドアが開く。


「ただいまー。居るんでしょ?」


「っ!?」


『なんでばれてるの!?リル、何か言ったの!?』


ルナの驚きの声が脳内に響く。


『いやいや俺も何も言ってないって!とりあえず今出なきゃ本当にタイミング逃すぞ!』


リルはルナへの必死の反論と共に、一歩前に踏み出した。


「なんでわかったのか分かんないけど!誕生日おめでとう!それで、これプレゼント!」


このまま何もしないわけにはいかない。とにかく、まず伝えるべきことを伝えに行った。

それと同時に例の花束を手渡す。


「ありがとう!でも、次はもっとうまく隠さないとね?」


いたずらを見破った親のように笑いながらルカは花束を受け取る。


「この花って…オラリオンで出会ったばかりの頃に話してくれたあの花だよね?」


「一目で見破るとか、本当にどこでばれたんだろうな…」


「わかったのは昨日かな…この花のことは見て今すぐにわかっただけなんだけど」


昨日、というと何があっただろうか。

例の本を渡して以降はその本を読みふけっていたように思える。


「何かおかしかったかな…分からない様に準備したつもりだったんだけど」


「うん。昨日までは全く分からなかったんだけどね。」


「昨日、何かばれるようなことしたか…?」


「そりゃもう。どう考えてもあの本はおかしかったでしょ!私が発売を見逃すはずないもん!」


自信満々に言い切る。


「それ…だけ?」


呆気にとられながら呟くと、ルナがふっとリルの横に現れる。


「あー、わかった。何が引っかかってたのか分かったよリル」


「あ、やっぱりルナも居たのね」


「うん。リルに協力してたんだけどルカには簡単にばれちゃってたね」


お手上げだ、と言いたげなジェスチャーと共にルナが言う。

だが、リルはどうしても気になる。何がルナの言う『引っかかっていたこと』なのか。


「あ、その顔は分かってないね?とっても簡単なことだよ」


言われてもリルの頭にその事象は浮かばない。


「…全く解らない。教えてくれ」


「ルカが、あの本を貰って何も強い反論をしてこなかった…言ってしまえば、頑固なルカが素直だったなんておかしいじゃないか!」


ゴン、と鈍い音を響かせながらルナの後頭部にルカのグーパンチが振り下ろされる。


「言い方ってものがるでしょうが!!!間違ってはいないけど!!」


間違ってはいないのか。とは言わない様にリルは口を噤む。


「でも、私の誕生日覚えててくれたことは本当に嬉しかったよ!」


はじけるような笑顔を見て、『やってよかったな』と心から思うリル。

だが、やっぱり一つ思うところがある。


「ばれるような計画しちゃったのは申し訳なかったけどさ…そこは知らないふりしてくれても良かったんじゃない?」


「そこはほら……企みがばれた時の驚いた顔が見たかったから…かな!」


次にサプライズをやるのなら絶対にばれない様にしよう。

そう固く心に誓うリルだった。


はい、そんなわけで一部の頃の二人の簡単なお話でした。

また今後も考えつき次第更新していこうと思います。

次は誰の話を書こうかな…って前に本編書けって話ですね!!

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