姉、メイド服を着たならお約束をやりたい
23/01/28 誤字修正をおこないました。教えてくださった方、ありがとうございます。
毎日の中でも少しずつ変化があり、暖かかったり寒かったり繰り返す日々がある。
今日は一段と寒いく感じ、夜明け前から外に居ると耳が痛く感じ呼吸をする度に鼻が痛く冷たい空気が体の中に入り、身震いがする程に寒く感じる。
悴む指を動かし井戸から水を汲みキッチンに運び、水場に貯めたり、鍋をかけお湯を沸かす為に鍋に水を入れ、無くなると再び井戸まで水を汲みに行く。
そうしていると灰色の厚い雲の上から太陽が出ているのか周りが明るくなると、周りに煌めき舞う物に思わず手を伸ばす。
雪と言うよりは薄い氷の様で
ダイヤモンドダストだっけ?
確か空気中の水蒸気が凍る現象だよね?
煌めき舞う氷晶に見惚れているとキッチンの裏口から呼ばれる声に我に返り、慌て水を汲みキッチンへ戻り仕事を始めた。
大きな声での指示が飛び交い、邪魔にならない様にお祖父様とお祖母様に出すお皿を選び終わると、使い終わった鍋などを洗う為に移動する。
休憩と朝食の時間になり、スープと焼きたての白パンを食べながらのお喋りを楽しみ、ランドリーに移動。
自分が前日に着た服やシーツを中心に手洗いをし、乾燥室へ運ぶと、ランドリーメイドさんに託し、今度はハンカチーフやシーツを中心に洗い終わる頃に、フレディの迎えが来てディランの部屋へ戻って行く。
「今日の豆のスープとても美味しかったわ。作る人違うだけでこんなにも味が変わるのね」
フレディと並び歩き会話を楽しむ。
「手塩という言葉がございます。経験や性格など個人の匙加減で同じレシピでも違いが出ているのかと思われます」
「何回も同じレシピで作っても違う味になるのは、その為なのね」
「勿論、クックはプロです。その様な事はありませんよ」
頷き納得をしている中に捕捉された言葉に頷き返し、
「今日はティーフードは洋酒で寝かせたドライフルーツを使ったクグロフですって」
楽しみ。
朝食中に教えて貰った話を伝えると、
「エスメ様が以前話していたドライフルーツですね」
1ヶ月程前に話した言葉を思い出してくれたのか、言葉にしてくれたフレディに
「何度も何度も試作してようやく出来上がったレシピよ。楽しみにしていてね」
ブランデーにドライフルーツをつける話をを雑談の中でした所、話がクックにまで伝わり、様子見と試作に参加していたが、ようやくお披露目ができ、どんな感想を貰えるのか楽しみで足取りかくるディランの元へ向かい、
「ディラン。今日のティーフードは新作のクグロフよ!楽しみにしていてね」
挨拶する前に告げた言葉に、嫌な顔1つせず
「それは楽しみです」
微笑みながら頷いてくれ、その後互いに挨拶をし、数週間前から始まったハンドクリームをディランに塗って貰うも、眉間の皺が深くなってく姿に、
「どうしたの?何かあった?」
声をかけると、
「手が冷たいですね。お体が冷えているのでは無いですか?」
ゆっくりと壊れ物のようににぎられた手からじんわりとディランの暖かさを感じ、
「自覚はなかったけど、そうかも知れないわ」
同じ様にゆっくりと握り返し力無く笑うと、ソファから立つ様に手を引かれ暖炉の前に立ち
「このままでは風邪をひいてしまいます。しばらくこちらで暖を取ってください」
ディランの行動を先読みしたフレディによって準備されたクッションの上にディランと共に腰を下ろした瞬間、ディランを抱え込み、
「ディランはいつも暖かいわね」
悪戯心は芽生え、驚かす為に行動したものの、
「暖炉がついた部屋におりますので」
驚く事なく冷静に返されてしまうも、
「王都に居た時もこうして良く暖炉の前に座ってたわね」
思い出しだ事を言葉に出し告げれば、
「そうですね。僕もまだ幼く、良く姉様の膝の上に座り本を読んでいただき記憶があります」
帰って来た言葉に頷き
「そうそう。ディランがそれではお姉ちゃんの背中が寒いと心配してくれたから、フレディに背中から抱き込んでくれて寒さを凌いだのよね」
期待を込めて横目でフレディを見ると困ったように微笑む姿に、にっこり笑い返すと、ゆっくりとした足取りで近づいてくれ、腰を下ろすと大きな体に背中から抱き込んでくれた。
懐かしい。
まだ自領に来て1年と立って居ないのに、王都での行動を思い出すと懐かしく思える。
薪がはせる音を聞き、誰も口を開く事なく暖かさに微睡みを覚え出すもノックの音が聞こえ
「どうぞ」
ディランの部屋だということを忘れ、微睡みの中で返事をしてしまい扉の開く音で我に返るとイルさんが現れ、
「遅くなってしまい申し訳ありません」
お詫びの言葉と礼に首を傾げると、フレディの体が大きく揺れたのちゆっくりと離れ背中にあった暖かさが無くなると、どこか寂しさを感じるも、抱き込んできたディランが立ち上がり、
「いや、詫びを貰う程、遅くなっては居ない」
イルの詫びに気にしていないと返した後、机に向かう為に体を動かしかけるも
「ディラン様、奥様がお呼びでございます。今すぐに来る様にお言葉を預っております」
イルの言葉に全員が動きを止めたが、
「分かった。姉様、申し訳ありませんがこの部屋でお待ちいただけますか?」
「勿論よ」
頷き返すと
「私もエスメ様と共にこの場で待機いたします」
イルさんの提案にディランが頷き、フレディと連れ部屋から出て行く姿を見送った。
1人暖炉の前に座っているのも寂しく、用意されているハーブーティーを入れる練習をと思い立ち上がるも
「エスメ様、私もハーブティーを淹れてみたくなりまして、茶器に触れる許可をいただけますか?」
思いもよらないイルの言葉に
「勿論です」
頷き返すと、ソファに座るように告げられた為、定位置となっている場所に腰を下ろす。
ワゴンをソファの近くまで動かし、見える様に淹れてくれるイルの手順を眺め、出されたハーブティーに口を告げると、ふんわりとしたカモミールの匂いと、苦味の無い味にホッと息を落とし、
「とても美味しいです」
イルさんの顔を見ながら感想を告げると微笑み返してくれ
「お口に合って何よりでございます」
嬉しそう少し弾んで聞こえた言葉に微笑み、ハーブティーを飲んでいると
「先程は皆様で仲良く暖炉の前にお座りになっておりましたが何をされていたのですか」
イルさんの言葉に、顔を動かし暖炉の間にあるクッションを眺め、
「ディランが私の手が冷たかった事を気にしてくれ、暖炉の前に座る様に提案をしてくれたので、いつもの様にフレディも誘い座っていました」
クッションからイルさんの顔をへと視線を向け告げた言葉に
「王都のお屋敷で、良く座っているお話は聞き及んでおります」
普段と変わらない微笑みで告げられた言葉に、少し恥ずかしくなるも
「ディランが小さかったので私が絵本を読んだり、フレディが読み聞かせをしてくれたり楽しかったです」
大切で楽しい思い出を思い出し言葉にすると、
「良い事でございます」
頷きと共に返ってが、すぐさま
「フレディはエスメ様の役に立っておりますかな?」
聞かれた言葉に、深く頷き
「とても、助けてもらってます」
微笑みを消し、心配の表情を見せたイルさんに、王都で合ったフレディの話を沢山話すと、
「なにぶん、私から見ればまだまだ出来ていない事が多く心配をしておりましたが、お役に立ててる様で安心いたしました」
安心したのか微笑みを見せてくれたので、ホッと息を吐き出し、空になったカップをイルさんに差し出すと目に自分が着ているメイド服が見え、
「イルさん」
思い付いた事を実行しようとイルさんに声をかけると返事をくれ
「私、今、メイドさんに見えますか」
真剣に聞いてしまったが
「さようですな。メイド服ではありますが良くお似合いでございます」
表情1つ返づに答えてくれたイルさんの言葉に自信が付き、立ち上がり、皺がついてしまったスカートを手で伸ばしているとイルさんの
「失礼致します」
言葉と共にメイド服を整えてくれたので、大きく息を吸い、扉の前で立つと測ったかのようなタイミングでノックの音が聞こえたので返事を返し、ディランとフレディが部屋へ入ったのを見届け
背筋を伸ばし
スカートを少し摘み、持ち上げ
腰をゆっくり折り
「お帰りなさいませ、ご主人様」
出迎えの言葉を告げた後、背筋を伸ばし
「紅茶に致しますか?ハーブティーに致しますか?それとも」
一呼吸置き
「お湯に致しますか?」
微笑みながら告げた。
第98話
節分ですね。季節の分け目の日でもありますが、少しでも春めいた便りが届き出してきました。
春、楽しみです。
ブッマークや評価をいただき誠にありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/




