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姉、全身全霊で楽しむ


あっという間に終わってしまった2回戦。


ディランの勝利だった為、1敗1勝となり最終戦で決着が付くことなった。


2回戦で陣地として使用した雪壁が所々欠けがあり手直しが入るとの事で、再び休憩となり、機嫌良さそうなイルと鳩尾辺りを擦りながら給仕をしてくれる。


「エスメ様から雪玉を投げられるとは予想できず、油断しておりましたが、雪合戦とは楽しゅうございますな」


嬉しそうにほんの少しだけ声を弾ませながらのイルの言葉に、


「イルさんに喜んでいただけて嬉しいです」


イルの感情に釣られるように嬉しくなり声を弾ませ返事を返し、手渡された紅茶を飲む。


「白々しいこと」


火鉢と火魔法石で暖を整え、風魔法石を発動させ風の壁を作り外気を遮断し凍えることの無い様に整えた場所で、お茶を飲み雪合戦を見学をしているお祖母様の声に慌てお祖母様へ視線を向けると、


「私には明後日の方向へ飛んで行く雪玉に、自ら当たりに行った様に見えたけど、気の所為かしら?」


稀に見るお祖母様の貴族の目が笑っていない微笑みに思わず背筋を伸ばすも、


「避けようと動きましたら雪で足が縺れてしまいました」


奥様はこの老体を買い被りすぎておられる。


何も感じていないのか穏やかな笑い声と共に零れた言葉に改てイルさんを眺める。


ロマンスグレーの髪色に目尻を下げ、何時も穏やかに微笑み、やさしい声と言葉使いで接してくれるので、甘え我儘も言いそうになる。


フレディのお爺様なのでどこか似てる所もある。


イルさん視線を外しフレディを眺めると少し顔を悪くし先程から鳩尾を摩ってる事を不思議に思い


「フレディ、どうしたの?」


手を伸ばしフレディのお腹を触れようとするも、


「エスメ様、お気になさらず」


イルさんの声に動きを止め、


「ですが、痛めているのでは?」


顔を動かし視線を合わせ伝えるも、


「身から出た錆でございます。どうぞお気になさらず」


頷く以外受け入れて貰えない雰囲気に納得できないが渋々頷き返し、心の中で息を落とす。


移動の時に光魔法をかけてよう。


イルの言葉にさらに顔色を悪くしてしまったフレディを視界の端に入れ紅茶を一口飲み騎士が整えている会場を見ていると、1人の騎士が近づいて来て、


「大変お待たせいたしました。場が整いました」


一礼と共に告げらた言葉に、紅茶を横に来てくれたイルさんに手渡し、勢い良くた立ち上がり


「ディラン。泣いても笑ってもこれが最後の試合よ。お互い全力を出して戦いましょう」


同じく立ち上がったディランに向かって告げると、


「はい。よろしくお願いいたします」


2回戦の時より表情が柔らかくなり、ディランなりに楽しいんでくれているのだと分かり、


「こちらこそよろしくお願いします」


この言葉を皮切りにお互いの陣へ足を向け、騎士さん達と作戦会議をし3回戦目は真ん中の雪壁に配置に付きお祖父様へ視線を向ける。


ディラン達は作戦会議が白熱しているの少し待つことになってものの、


「これが、最終戦だ。両者気合い入れて挑む様に!」


始め!



お祖父様の開始の言葉と同時に立ち上がり、雪壁を飛んで乗り越え様としたもののつま先が雪壁に引っかかり、地面に打ち付ける音と共に顔から着地をする羽目になった。


瞬時に静寂が広がるも


「大丈夫ですか!?」


「お怪我はありませんか!?」


「どこか痛い所はございますか?」


場の雰囲気が固まり冷えていく中、驚き慌てふためく騎士さん達の声を耳に入れながた痛みを感じる顔を抑えつつ立ち上がり、


「ゆきだまを、なげてください」


余りの恥ずかしさに震え小さな声になってしまったものの、聞き取ってくれた騎士さんが相手の陣に居る騎士達へ雪玉を当てていく。


恥ずかしい。

想像ではハードルを飛ぶ様に軽く乗り越えられるはずだったのに。


痛みを訴えてくる鼻と額を摩り、思考を埋め尽くす恥ずかしさと戦っていると場の雰囲気が元に戻ったのか

野太い歓声と野次が耳に届き、ホッと息を吐いた。


全身に力が入っていたので、体の凝り固まりを感じつつ、先頭に造られた雪壁へ移動できたので少し顔を出し状況を見渡足すと、同じく少しだけ顔を出していたディランと目が合い心配そうな視線を送られたので、

笑って大丈夫だと返す。


折角の雪合戦。

私も雪玉を投げたい。


その想いで前線へ来たのだ。

足元には投げる為に用意された雪玉が積まれている。


1つ左手に持ち、勢い良く立ち上がると渾身の力で雪玉を敵方の騎士へと向かって投げた。


当たったかどうかは解らないまま次から次へと雪玉を投げる。


作戦会議で自分も参加したいと告げれば皆頷いてくれ、真ん中の雪壁に配置してくれたが、無敵らしいので前線で皆の役に立ちたいし、私も皆と一緒に参加して楽しみたかった。


雪玉を投げて思う。

やっぱり心が踊り出すし楽しい。


雪玉を当てれたらいいのだろうけど高望みはしない。


参加できれば十分だ。


行き着く暇もなく雪玉を投げ続けていると足元に合った雪玉が無くなり、一旦雪壁に身を隠し改めて雪玉を探すも見つけられず、


「全部投げちゃった?」


思わずこぼしてしまった言葉に同じ雪壁に身を潜めて居た騎士さんが頷き、


「補充を待つしかないですね」


その言葉に、頷き返すと横から転がる様に雪玉が投げられ、


「エスメ様、雪玉の残り在庫が少なくなっております」


告げられた言葉に頷き返し、


「そろそろ撃って出る時ですね」


真剣な表情で告げると場の雰囲気が一気に高揚し


「では、皆さん。よろしくお願いします!」


気合を入れた大きな声に残っていた騎士達が一斉に立ち上がり雪玉を投げ合う。


見捨ての作戦だけどこれが1番楽しいだろうと、試合も最後だし後半は作戦無しで行こうと決めて実行する。


相手型も同じだったのか少し遅れ全員立ち上がり互いに雪玉を投げ合う。


当たる人も居れば、うまく避ける人も居る。


大混戦の中、遠慮無く互いに雪玉を投げ合い雪玉が無くなると全員でお祖父様へと視線を向け、


「勝敗は残った人数だな」


嬉しそうな表情で顎に撫ぜながらのお祖父様の言葉に、何故か騎士達全員が一斉に座り出すのを戸惑い見ていると、近くにいた若い騎士に座る様に促され、


「番号が数えられますので、エスメ様は最後にお立ち下さい」


告げられた言葉に頷き、お祖父様の声で番号が告げられると両軍1人つづ立ち上がる。


周りを見渡し少しづつ緊張感が増している中、自分1人が座っている状態になりディランと目が合った。


お祖父様の声に立ち上がると、同じくディランも立ち上がるの見て勝敗を理解した。


まさかの同人数。


驚きと共に


「同人数か。よってこの勝負に勝敗は無しだな」


お祖父様の言葉に頷いていると


「どうする。もう1戦するか?」


お祖父様の言葉に騎士団が騒つき浮き足立つのを感じ、口を動かしかけるも


「1度、場を整える必要があるかと思います」


ディランの言葉にお祖父様が頷き、再び休憩の時間となった。


どうしよう。楽しかったからもう1戦したいけど。


歩いていると体が重く感じ疲れが出ているのだと解るものの、先程の雪合戦があまりにも楽しくもう1戦参加したくなる。


「姉様、お疲れが出ているのではありませんか?」


隣を歩いているディランの言葉に頷き


「でも、楽しかったからもう1戦参加したいの」


本音を溢すと


「お気持ちは分かります。ですがここで無理をしてしますとお体を壊す事にもなりかねます」


心配の色を含んだ言葉に、


「風邪を引いてしまったら今日の思い出が楽しく無くなっちゃうわね」


引く決心が付き、


「お祖父様。通常通りこの勝負で終わりたいと思います」


言葉にして告げると、お祖父様は頷き


「分かった。騎士達のみでもう1戦する」


場を整えている騎士達にも聞こえる様に大きな声で告げると是と一斉に返事か返り、ディランと共にフレディとイルから座るように促され、手渡された紅茶を飲み一息ついた。



第93話


書いていてとても楽しかったです。表現不足がとても悔しく、時間がありましたら手直しを入れていきたいと思います。


ブッマークや評価をいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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