姉、最強家令の倒し方を急募する。
2022/12/27誤字修正を行いました教えてくださった方ありがとうございます。
1回戦は、雪玉を当てるのではなく、ディランを捕獲しての勝利となった。
第2回戦は騎士達の入れ替えと場の整える時間を取る為、ディランと休憩に入る。
「ありがとうございます」
イルから手渡された紅茶と飲み、汗を掻いて暖かかった体が冷え始めてきた所で飲んだ紅茶が再び体を温めてくれ、ホッと息を吐いた。
普段通りディランと並び用意された椅子に座り、紅茶の飲んでいるがどうも会話ができず横目でディランを見る。
鼻の頭と頬を赤くし、少し熱めの紅茶に息を吹きかけて冷ましている。
可愛い。
今みたいに鼻の頭や頬を赤く染めるのも可愛いし、試合中の目尻を上げ真剣な表情も可愛い。
お揃いの乗馬服を選んで着てくれたのも嬉しいし可愛い。
全て可愛い。
ディランは可愛いでできている。
チラチラと横目で見ていると、準備が整ったとの知らせに来てくれた騎士の声に
「2回戦も負けないからね」
立ち上がりディランへ向かって告げると、
「よろしくお願い致します」
剣術練習の時によく見る目尻を上げ挑む表情に、頷き、
「フレディ!助っ人よろしくね」
ディランの後ろに控えていたフレディの名を呼べば、
「イル、助っ人をお願いします」
ディランも自分の後ろに控えていたイルさん目に声を掛けた。
各自、助っ人と共に自分の陣地へ歩き出し待機している騎士達を集め作戦会議を始める。
様々な案と意見が飛び交う中、盗み見るようにディランとイルさんを見ると背中を向けていたはずのイルさんが振り向き、目が合い慌て顔を背けフレディの腕を掴む。
「いかがなさいました?」
騎士達の意見を聞くことに集中していたのか、慌て腕を掴んだ事に不思議そうに声をかけられ、
「さっきディランとイルさんに視線を向けたら、イルさんがタイミング良く振り返って驚いて思わず掴んでしまったの」
ごめんなさい。
無意識に掴んでしまった事へ詫びを入れると、
「爺様は背中に目がついていると言われていますからねぇ」
気まずそうに告げられた言葉に驚き、
「目があるの!?」
声を上げると、苦笑され
「ありません。例え話です」
言われた言葉にホッと息を溢し驚き早くなった心音を落ち着かせる為に意識的に呼吸をゆっくりし
「イルさんが味方の時は心強かったけど、敵になったらとても怖い感じがするわ」
目が合った時に感じたままを言葉にすると騎士団とフレディがどこか明後日の方向へ視線を向け、
「大丈夫です。エスメ様にはとても優しいですよ」
「敵方にいても先陣切ってエスメ様を守りに来そうだよな」
「ディラン様を守りつつな」
ぽつりぽつりとこぼされる言葉に理解できないながらも頷くと、フレディにさらりと頭を撫ぜられ
「爺様はエスメ様の事を初孫の如く、可愛く思っておりますのでご安心を」
むしろ危ないのは私や騎士団の人達ですね。
前半の言葉と後半の空笑いを混じった言葉にどう返事を返せば良いのかわからずにいるも、
「イルさんは私には雪玉を投げてこないと言う事?」
袖を引き何処を見ている視線と意識を自分に向けさせ、問えば頷かれたので、
「イルさんの相手はフレディより私がした方が良い?」
浮かんだ案を言葉に出すとフレディと騎士団の人達全員に頷きの返事が返ってきたので、実行する為に様々な作戦を立てた。
両者、作戦が整った所でお祖父様へ視線を向けると頷かれ、
「2回戦だ。この戦いでエスメが勝てばその場で終了となる。ディラン、心して挑めよ」
お祖父様の言葉にディランは頷く事で返事を返し、
「それでは2回戦。始め!」
お祖父様の号令と共に両者雪玉を投げ合う。
1回戦と同じく1番奥の雪壁に配置され、時折頭上を通りすぎる雪玉をフレディを共に見送る。
喜びの雄叫びに悔しそうな言葉。外野の応援の声
参加している人だけでは無く見ている人も一緒に楽しめている事が分かり事前と笑顔になってくるのが自分でも分かった。
皆が笑い合っている場にいる事が嬉しくて楽しくて、だらしなく緩む顔を両手で隠す。
「エスメ様?いかがされました?」
手で顔を隠している為、視界も塞がれている中、心配の雰囲気と尋ねてくれるフレディの言葉に両手を下ろし、
「皆が楽しそな声に嬉しくなって来て顔が緩むのを止められないの」
だらしない顔をして恥ずかしいと思うものの治す事ができずフレディと向き合うと、微笑ましそうに見つめられ
「良い事です。隠す必要はありませんよ」
頬をゆっくりと撫ぜられながらの言葉に、反応を返せずに居ると背中を向けていた雪壁から大きな音が聞こえ、2人して驚き体を揺らすと、
「なにやら良くない気配を察知いたしましたが、気のせいでございますかな?」
遠くにいるはずのイルの声が聞こえ、雪玉に気を付けそっと顔を出すと微笑みながらも途轍もない威圧を感じ、動きを止めていると、近くに居た騎士さんにイルさんの投げた雪玉が当たり、勢い良く倒れた。
「え?雪玉で人が倒れることってあるの?」
溢れてしまった言葉を皮切りに、1人また1人とイルさんの投げた雪玉に沈められ、数人の騎士と自分達以外を地に伏してしまった状態に、呆然とするも、
「エスメ様、ご指示を」
残った騎士からの小声での言葉に意識を取り戻し、
「フレディ、こうなったら正面突破よ!」
考えなどなに1つ浮かばず、思い付いたまま告げ、フレディの腕を掴みイルに向かって歩き出す。
「フレディ、貴方のお祖父様ですもの勝てるわよね」
声を抑えながら早口でフレディに告げるも
「無理です。家族だからこそ勝てません」
キッパリと言い切られてしまうも、
「じゃあ、気を引いて。その間に私が雪玉を当てるから」
先程まで引っ張っていた袖から手を離し、フレディの背中へ身を隠しつつ中々進まないフレディの背中押し歩いていく。
フレディが話しかけている間に、フレディの背中から私がイルさんに雪玉を投げ当てる。
想像はできるものの、実現できるか不安に掻き立てられるも時間は待ってくれず、急に動きを止めたフレディの背中に顔をぶつけるも、
「あー爺様」
しどろもどろのフレディに笑顔の表情なのに何故か威圧が強いイルさんが無言のまま対応しており、
どうにかしないと!
おかしくなる場の雰囲気に焦りが生まれだし、
「イルさん、お覚悟」
自分でも何を言っているのか理解できないまま目を瞑り、手に持っていた雪玉をイルさんに向け投げた。
真横から打撃音によく似た音が聞こえ身を強ばらせるも、
「おやおや、私の負けでございますな」
聞き慣れた優しく穏やかな声が聞こえ恐る恐る目を開けると、胸元に雪玉が当たった様で服に雪が少しついており、
「見事な送球で避ける事が叶いませんでした」
言葉と共に雪がついた胸物と愛おしそうに撫ぜる姿に、当てたのだと実感が湧いてきた時、
背中に何かが触る感触と同時に
「姉様」
呼ばれ、声のする方向へ体ごと向けると、抱きつかれ、
「お祖父様、敵将である姉様を捕獲いたしました」
胸元から聞こえるディランの言葉に視線を向けると、
「エスメの背中への雪玉を当てたのちの捕獲。確認した。よってディランの勝ちだ」
お祖父様の判定が聞こえるもディランの背中に腕を回し、
「そっかぁ、負けちゃったかぁ」
悔しい気持ちなんて無く、自分に抱きついているディランを愛でる事に全力を注いだ。
第92話
指先が悴んでタッチパネルが反応してくれない日々がやってきました。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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