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姉、筋肉に受け止められ家令の強さを知る

イルを従者と記載いたしましたが、正しくは家令です。

大変申し訳ございません。



灰色の雲が空を覆い、花びらの様な形の雪が降る中、刺す様に冷たな空気を消し去る様に、雄々しい声や歓声の声が聞こえ始める。


行き交う雪玉


歓喜を上げる声もあれば悔しさを滲ませる声も聞こえる中、雪の壁に身を潜め、ほんの少しだけ顔を出すと騎師団の人達が楽しそうに笑いながら雪玉を投げ合っており、雰囲気に釣られ立ち上がりかけるも、


「行けません、エスメ様」


イルに袖を引かれ、慌て壁に身を隠すと、


「行けません。エスメ様は守られなければならないお立場。その方が自ら出るのは得策とは言えません」


優しい声と言葉に、


「ですが、発案者の私が率先的に出て皆さんを楽しませないと」


言葉を返すが


「素晴らしいお考えでございます。ですが、エスメ様に雪玉が当たればその場で終了してしまいます」


この楽しい時間はすぐに終わってしまいます。


イルの強さを感じる言葉に目を見開き、


「そうですね。どうして気が付かなかったのかしら」


思いつかなかった言葉に何度も頷き、時折頭上を通り過ぎる雪玉を眺める。


時折、壁から顔を少し出し状況を眺める。


始まりから時間が経ってきた為か雪玉の数が少なくなるのを感じ、


「相手側の雪玉が減ってきた気がするわ」


ポツリと独り言を溢すと、


「さようでございますね。もしくは隠し持っているのかと」


イルの言葉が返り、慌て顔をイルに向けると、


「様々な事を考えねばなりませんから」


微笑み告げられた言葉に頷くことしかできずにいたが、


「ですが、こちらの雪玉も残りわずか。攻めに転じてもよろしいかと」


微笑みを深くし告げられた言葉に大きく頷き、少し慣れた壁で状況を見て指示を出していた騎士に視線を向けると、意図が伝わり、両手を広げてくれた。


作戦はこう。


ほんの少し長めに姿を現し、雪玉が自分に向かって投げられたら隣の壁に勢い良く移動する。


自分が囮になり相手の雪玉を減らす作戦だ。


移動するぞ。と言う動きと雰囲気を見せるために、頭を多く出し左右に首を動かし、あえて反対側にある壁の方向へ視線を長く送る。


「エスメ様」


ルイの合図に従い足に力を入れ、手を広げてくれている騎士へ飛び込み、勢い良く抱きつく。


緊張感と高揚感で心臓の音が大きく速くなるのを感じ落ち着こうと深呼吸を数度すると、騎士の方の大きな手で背中を呼吸と同じ速さで撫ぜてくれ、


「ありがとうございます」


胸元から顔を上げ、ゆっくり離しながら微笑み礼を告げると、子供を見る様に穏やかな表情と、


「お怪我がなくて何よりです」


優しい言葉に


「雪玉も当たらなかったから上々かしら?」


頷きながら言葉を返すと、


「エスメ様とイルさんが移動の際、あちらから雪玉は投げられませんでした」


受け止めてくれた騎士の後ろに護衛役としてついてくれていた騎士の方の言葉に


「作戦が読まれていたと言う事でしょうか?」


表情を引き締め告げた言葉に、


「そうかと」


短じかく返事が返り、


「次の作戦も読まれていると考えた方がいいかしら?」


ポツリと溢した言葉に、


「エスメ様やイルさんに雪玉を投げれる人物は誰も居ないかと」


後ろにいた騎士の言葉に不思議に思い見つめると


「エスメ様は女性です雪玉を当てると言うのは騎士道に反します」


イルさんはまぁ、当てた後が。


尻窄みで告げられた言葉になぜか納得できてしまい、


騎士道。


前に行きた時に見た時代劇の武士道というのだよね。


そうなると私が居ると楽しめない?


でも、私に雪玉が当たると試合が終わってしまうし。


頭の中をフル回転させ、どうすればの答えを導き出す。


考え方によっては私、無敵状態だから前線に立っていた方が面白くなる?


え、楽しそう!やってみようかな?


楽しくなる予感に心がそわそわし出し、イルさんに視線を向けるとどこか困った様な雰囲気と小さな笑顔に

受け止めてくれた騎士さんの顔を見ると、こちらも困った表情に、


「ダメ、ですかね?」


恐る恐る尋ねると、


「いえ。やってみる価値はあるかと思います」


焦り、早口で告げられた言葉を聞きイルの視線を向けると頷いてくれたので視線で1番前にある雪壁に視線を向け、次に行く場所を視線で告げ足に力を込めタイミングを図り移動する。


雪玉が投げられる事もなくあっさりと移動でき、雪壁に到着した際もイルさんが身を挺して守る形で2人して雪壁にしゃがみ隠れた。


「イルさん」


高揚する気持ちが抑えられらず、早口でイルさんの名前を呼べば


「素敵な作戦を思いついたようで。お聞かせいただけますか」


柔和な笑顔と声に何度も頷き、


「私、このまま外に出てディランとフレディの所まで歩いて行き雪玉を当ててきます」


できるだけ声を顰めながら告げたはずの言葉に雪壁に身を隠していた騎士達から一斉に視線を向けられ、


「騎士道で私に雪玉を当てられないのなら、私は無敵状態です。先頭を切って乗り混みたいと思います」


意気揚々とイルさんに告げると、少しだけ眉を下げ


「危のうございますよ」


心配の言葉をくれるも笑顔で


「大丈夫!雪合戦だもの。雪玉が投げてこそ楽しいのよ」


告げると、


「さようでございますな」


頷き返してくれ視線を周りに向けると騎士の人達が雪玉を持ち出し、


「では、こちら側はエスメ様を守りディラン様の元へ辿り着かせましょう」


告げられた言葉とは違い、


相手側の騎士達を全滅させます。


と、音無き声が聞こえた気がして戸惑いながらも頷き返すと


「では、エスメ様の合図で一斉に出ますので見極めをお願いいたします」


普段と変わらない笑顔で告げら気を引き締めると騎士達も釣られるように雰囲気が引き締まり、相手側にも雰囲気が変わったことが伝わったのか、互いに様子を伺う時間が続く。


ディランとフレディはどこに居るのかしら?


少し顔を出しか探すと、ディランも様子見で顔を出しており目が合った。


1番奥にある雪壁ね。


なんとしても奥に辿り着かなければ。


手元にある雪玉を持ち、膠着状態を打開すべく立ち上がり、


「ディラン、フレディ」


大きな声で名前を呼べば2人が立ち上がり姿を見せたので手に持っていた雪玉を投げるも、届く事はなく、


「首を洗って待っていないさい!」


自分の言葉をきっかけにイルも騎士達も立ち上がる。


「姉様、危ないですよ」


雪壁から出てディランとフレディに向かって歩き出すとイルもついて来てくれ、騎士達は守る様に着いて着てくれるので


「正々堂々勝負よ」


言葉をきっかけに走り出せばディラン側の騎士達が慌て立ち上がった所を雪玉を当ててゆく。


そうなるといくら自分に向けて雪玉が投げられないと言えども、踏みしめられた雪で足が滑りかけ体が傾くが、


「エスメ様、走ると危のうございますよ」


近くにいたイルに抱き込まれ、転ばずに済み、


「ありがとうございます。歩いて行きます」


見上げ礼を告げ、今度は慎重に歩き出す。


イルさんがいてくれて良かった。危うく転けて皆に心配をかける所だったわ。


真横を雪玉が掠めると、後ろから雪玉が投げられ騎士に当たる。


若い騎士と目が合い、自分に向かって雪玉を投げる姿を見て、避けなければと体に力を入れるも少し後ろから風切る音と前を風が流れたのを感じた後、短い声を共に目が合っていた騎士に雪が当たり身を沈めた。


「血気盛んですね」


イルさんの嬉しそうな声に


「ありがとうございます。流石ですね」


振り向き守ってくれた事へ礼を告げると頷き返てくれた。


数度自分の真横を雪玉が通り抜け、その度にイルさんが雪玉を当てて無事ディランの前に到着し


「覚悟は良い?」


イルさんから雪玉を手渡されディランの前に突き出すと、


「勿論です」


ディランの頷きと共に2人共雪玉を投げる体制に入る。


痛くないようにディランに当てる。


大丈夫。できる。


何度も何度も心の中で唱え、持てる力で雪玉を投げると同時に足を動かしディランに抱き着いた。


「お祖父様!敵将でディランを捕獲しました。私の勝ちです」


審判であるお祖父様へ向かって大きな声で告げると、一瞬呆けた様な表情をしたもののすぐさま破顔し


「確かに見届けた。よって勝者はエスメ隊」


お祖父様の大きな声での審判に歓声が上がり、安堵の息を吐き出しディランから体を離し、


「ディラン、私の勝ちよ」


自分より下にあるディランの顔を見ながら告げると、呆けた表情に後に表情を引き締め、


「ええ。次は負けません」


頷き返してくれた。



第91話


雪マークが点いては消えを繰り返しており戦々恐々しております。


ブッマークや評価をいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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