姉、好奇心の赴くまま動く
2023/04/12誤字修正をおこないました。教えてくださった方ありがとうございます。
「今日も張り切って飛ぶよ」
日課となった空を飛ぶ練習にディランやフレディ、自分付きのメイドであるマルチダに
日々動きが俊敏になっていく騎士達に囲まれ毎日少し飛距離を伸ばしていく。
「昨日はマルチダに乗って貰ったから今日はディランお願いね」
毎日、ディランだけではなく屋敷に居る皆に乗ってもらい楽しんでもらっている。
希望者のみだけど初めは緊張し顔を強張らせているが慣れると楽しそうに笑ってくれる。
笑顔が1番だよね。
楽しそうにしている顔を見ると自分も楽しくなってくるし、その日1日は楽しい気分で居られる。
屋敷の雰囲気も明るくなったと執事のジィーロからもお礼を言われた。
「今日の予定は屋敷をぐるりと1周するつもり」
箒に跨り、前にいるディランに声をかけると
「解りました。1周目はゆっくりと進め2周目は速度を上げて飛んでみましょう」
少し硬い声での提案だったが、頷き
「分かったわ」
返事を返した後、左手をディランのお腹に回し
「行くわよ」
左右から風魔法を受け安定した後、下から上へと同じく風魔法を発動させゆっくりと浮き上がる。
屋敷の2階を越え煉瓦色の屋根を見下ろす程、高くなれば初めての飛んだ時同様1度停止をした後、
「前に進むよ」
ディランに声をかけてゆっくりと慎重に前に進んでゆく。
流れる風景とディランの様子を見つつ、下で同じ様に着いて来ている騎士達の動きに目にとめた。
上を見つつ、木々に当たること無く歩いている姿に関心つつ眺めていれば、門外に数人が集まっており忙しなく首を左右に動かし、時折、中の様子を伺っているのが目に入る。
なにをしているのかしら?
初めて見る光景に興味をひかれるが、
「姉様、余所事を考えていませんか?箒の速度が止まりつつありますよ」
ディランの言葉に視線を戻し、
「ごめんね。ディランが可愛くて」
慌て謝りを入れ誤魔化しの言葉を告げれば、
「僕だってこのカッコは不本意でしかありませんが、身長の問題ですので直ぐに解決するつもりです」
拗ねたように声を尖らせながらの言葉に、弟としての可愛さと男してのプライドを出す弟が愛おしく、可愛くてお腹に回していた左腕に力を入れ更に抱き込み
「ずっとこのままでもいいのに」
告げた言葉に、
「姉様なんてあっと言う間に追い抜いてみせますよ」
自信ありげにどこか上から感じるも、
「そうね。大きくなったディランも格好良いのでしょうね」
楽しみだわ。
弟の肩越しから見える風景を楽しみながら、2週目に入り先程より少し速度を上げた。
いつか、自分の身長を追い抜いて今より声も低くなって素敵な婚約者と結婚し家の跡取りになり、お父様の様に格好良くなってお母さまの様に優しくなるのだろう。
まだまだ自分より低くて少し高い声の可愛い姿でいて欲しいけど、
ホゥとため息を落とし
「姉心は複雑だわ」
ポツリと零した言葉に、
「弟心も複雑ですよ」
よく似た言葉が返り首を傾げれば、
「突拍子のない行動を慎んで貰いたいですし、人前に出る時はせめて手や服に着いた土は落としていただきたいです。それと箒に跨る時に足を高く上げるのは止めてください。僕は姉様には常に淑女であって欲しいと思っています」
次々出てくる要望に、愛想笑いで返しながら視線をずらせば再び門外に居る人達が見えた。
変わらず警戒している姿に気になるも、
「聞いていますか?」
ディランの言葉に意識を戻し、
「できるかぎり気をつけるわ」
頷き返事を返せば、
「できるかぎりでは困るのですが」
溜息と共に落とされた言葉に返事を返さず、速度を落とし下降して行く。
下で見守っていた騎士達も慣れたもので一定の距離を取りつつ見守る体制に入った。
ゆっくり慎重に降り、2人同時に地上へ降り立つと
フレディがディランに近づき何かを話しているのを眺めていればマルチダに話しかけられるも、
「ちょっとお花畑に行ってくる」
マルチダの言葉を遮り足早にその場を離れ先程見た裏門へと走る。
途中息が切れ苦しくなり手に持っていた箒に跨り塀を越え裏門へと飛んだ。
先程見たまま屋敷の様子を伺う人達の近くに飛び降り、
「何をしているの?」
声をかければ驚いたのか大きく体を揺らしながら一斉に振り向くも
「なんだ子供か」
安堵の息と共に溢れた言葉に、
「子供だと悪いの?」
不思議に思い問いかければ、
「悪くないさ」
人良さそうな笑顔で中年男性が返事を返してくれたが問いかけた答えが貰えず
「何をしているの?」
今一度同じ質問をすれば、
「ここの屋敷のお嬢様はとんでもない魔法を使う事で有名でな、助けて貰えないかと訴えに来たんだよ」
先程とは違い今度は青年が返事をくれたが、ますます興味が惹かれ
「困っているの?」
言葉を変え問いかけると
「俺らの領地は、長い事雨が降らず作物が育たなくなってしまい、ここのお嬢さんの魔法で雨を降らせて貰おうと来たんた」
なんでもとんでもない程の魔力を持っているらしいから村1つ分の雨ぐらい簡単に降らせてくれるはずだ。
どこか期待に溢れた言葉に、不思議に思い
「お願いに行くのなら、どうして裏門に居るの?」
首を傾げ聞けば
「貴族だからな俺ら平民の願いなんて聞いてくれないだろ。だからな直接本人に頼もうと思ってさ
こうして機会を伺っているんだよ」
視線を外され屋敷内へ視線をむける姿に釣られるように視線を向ければ、
必死に走ってくるディランと騎士達の姿が目に入り驚く中、
「姉様、何をしているのですか!早く屋敷に戻ってください」
息を切らせながら大きな声で告げられた言葉に、青年達の空気に緊張感が走るも気づかず、
「ディラン、あのね、この人達ね、困った事があって私に助けを求めに来てくれたんだって」
だから、話を
急に高くなった視界となぜがお腹に圧迫を感じた後、上下に揺らされるとディランの姿が遠くなっていった。
「姉様!」
鉄と鉄が擦れ合う大きな音と、必死な表情のディランに心配かけまいと
「ちょっと人助けに行ってくるね。行ってきます」
告げた言葉に頷きディランに手を振った。
第9話です。
ようやく話が動き出しました。王道の話の進みですが自ら着いて行っているので誘拐では無いような。
もう数話この展開の話が続きます。
ブックマークや評価ありがとうございます。本当に嬉しいです。
日々熱中症警戒アラームが出ております。本当にご自愛くださいまぜ。
水分摂取はこまめに取ることがお勧めです。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。よろしけれお読みください。
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