姉、決闘は1時間後、場所は裏庭
冷たく刺す様な空気を和らげる様に暖炉の火で部屋を温め、仲良くなったメイドさん達に着替えの手伝いと髪を結ってもらう。
早朝に起き朝食の準備は手伝ったものの、理由をのべいつもより早い時間にお暇といただき、ランドリーはお休みをいただいた。
皆さん快く頷き見送っていただいたので、気合と緊張が自然と高まっていく。
寒さを感じない様に提案し作ってもらった火鉢をそばに置き、ドレッサーの椅子に座ると手早く両サイドから髪を掬い、櫛を通し、後ろに纏めると編み込まれてゆく。
いつもはメイドさん達を見習い、動いても落ちな様に硬めに結んだお団子ヘアーだけど今日はメイドさん渾身のブレイドシニヨン。
三つ編みをトップで纏め上げお団子の様に巻き落ちない様に何かで結ばれ、出来上がった。
「この髪型でしたら大丈夫かと思います」
達成感が出ている3人のメイドにお礼を告げると
「頑張って下さい」
「応援しております」
「お話が聞けるのを楽しみにお待ちしております」
言葉と共にスカートを摘み上げ礼を貰い、頷き返し、自室を出る姿を見送られた。
1歩1歩歩く事に高揚感が高まり、途中出会う使用人達に無言で頷かれたり、握り拳を握られ応援されると緊張感が高まってく。
普段なら隣同士の部屋の行き来だが、今回は内密にする為に使用人が在住する屋敷の1室で行われた為、1度、外に出て屋敷へと入って行く。
普段なら、ランドリー室で自分の洋服を洗っている時間だから、相手も油断しているはず。
ごくりと息を飲み込み体を震えるのを抑え込む。
これが武者震いというやつね。
前世も今も文字で知った知識を体感し頷く。
震える足に力を入れ歩くとカツカツと靴か床を鳴らす音に1度止まり深呼吸をし気持ちを整え再び歩き出す。
毎日見ている飴色の扉の前で再び深呼吸し、用意した手紙を確認し、握り拳を作り扉を2度強く叩く。
対応に出てくれた人物の目が自分を捉えると目を大きく開け驚きの表情に
「取り成しを」
普段出さない低く固い声を意識し告げると戸惑いの表情を表に出しつつ、
「エスメ様がお見えです」
振り返り中にいる人物へ対応を求めると慌てる雰囲気は無く落ち着いた言葉で入室許可を出す。
私の雰囲気を感じ取って流石だわ。
関心をし浮だつ気持ちを整え、開けられた扉を潜り出迎えてくれている部屋の主の視界に入れれば、何かを察したのか動いた唇を閉じ、冷静で普段と変わらない表情だが視線で問いかけられ、
「貴方に決闘を申し込むわ」
前日前夜から考え、絶対第一声に言うと決めた言葉を告げると、目を大きく開け驚く姿が懐かしく、愛おしく思うも
「日時は本日、時間は1時間後、場所は裏庭の練習場よ」
できる限り冷静で真剣な表情を作り、ゆっくりと一言一言を区切り、普段より低い声は出しにくく発音しにくいが気にしない。
折角のお祖父様の発案だもの、ここを成功させなければ全てが泡となる。
その為にお祖父様のお力を借り、当人達を除く使用人の皆に黙っていて貰い協力してもらったのだ。
この乗馬服だって、ランドリーメイドの皆が数日前から洗濯からアイロンまで持てる技術を駆使してくれ、仲良しメイドさん達もこの日の為に髪型を試行錯誤し、騎士団の人達は練習場の準備までしてくれた。
勿論、お祖母様も苦笑しながらも終わった後に風邪を引かない様に準備をしてくれると手伝いを買ってくれ、
使用人をまとめているイルも微笑みながら様々な助言くれ協力してくれた。
だから、どんなにが可愛い表情をしても真剣な表情を崩しては行けないし、抱きつきたくなる体を足を踏ん張り動かない様にし、
「詳しくはこの果し状に書いてあるわ」
左手だけで勢い良くかつ強気に見える様に差し出すと、瞬間戸惑いの表情をしたもののすぐ様いつもの表情に戻り、
「決闘、謹んでお受けいたします」
中々みる事のできない目尻を吊り上げ引き締めた表情と強気の態度に見惚れてしまい、
「練習場で待っているわ」
返事を返すのが遅れしまったものの、意識をし敢えてゆっくりと足を動かし部屋から出る事ができ、扉の閉まる音が聞こえたと同時に心の中で安堵の息を吐き、お祖父様の部屋へ向かった。
あんな可愛い表情を見て愛でる事ができないなんて拷問に等しいわ。
表情の1つ1つを忘れない様に思い返しながら進み、見慣れない扉の前に立ちノックをするとイルが出迎えてくれ、
「入っておいで」
お祖父様の声に部屋の中へと足を進めると、お祖母様の姿もあり、
「良く似合うわ」
朗らかに笑い迎え入れてくれたお祖母様とお祖父様に
「伝えて参りました」
緊張していた糸を切り微笑みながら伝えれば、
「2人共、驚いていただろ?」
にやりと笑いながらのお祖父様の言葉に、頷き
「はい。ですが直ぐに冷静になりいつのも表情をしておりました」
先程の人物の態度を伝えると、
「表情が表に出るとは、まだまだね」
扇子で目から下を覆いながらの言葉に首を傾げれば、
「気にしないであげて。彼らも頑張っているのよ」
にっこり微笑みながらの言葉に、理解ができないながらも頷き返すと、
「さて、そろそろ移動時間となりますが、エスメ様、ご準備はよろしいですか?」
懐中時計を手に持ち、イルから問いかけられるも
「勿論です。絶対に勝利を上げてみせます!」
両手を握り締め力強く頷けば、
「その心意気だ」
お祖父様に頭を撫ぜてもらい、全員で練習場へ向かった。
いつもは雪の中に埋もれてる練習場が整えられ、まだ10分も前だと言うのに決闘相手が待っている姿を視界に入り、小走りになるほど速度を上げ近づき
「寒いのに来てくれてありがとう」
つい、いつもの様に声をかけてしまい、慌て、1歩後ろに下がり背筋を伸ばし表情を引き締め、
「ここであったが100年目、覚悟しなさい!」
胸を張り、高々に告げるも、
「先程お会いしましたよね?」
冷静な言葉は聞こえないふりをした。
第89話
こんなに雪が降るならやってみたいことがあります。
芯まで寒さがやってきますね。ご自愛下さい。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
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