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お祖母様の心配と愛情

2022/01/13誤字脱字修正を行っております。


雪の降る季節も中盤に入り、薪の爆せる音に使用人達の声と共に孫娘の元気な挨拶をする声が耳に届き、頭の中に笑顔のエスメと困った様に見守るディランが浮かび思い出し、小さく笑ってしまった。


天真爛漫に話し、突拍子無く動き、無邪気に笑うエスメ。


言葉の並びすら考え抜いて話し、慎重すぎる程考えて動き、貴族の教えを忠実守り微笑むディラン。


真逆とは言わないものの、それぞれの立場を鑑みれば自然と覚えた性格なのだと思うも、


ディランは考えが足らない。


エスメの為だと律し自分の考えや行動を抑え込む。


だからこそ私の、エスメの為だと匂わせた事に、素直に納得するから良いように遊ばれるのだ。


真っ直ぐな考えは旦那様に似ていて好感が持てるけど、王都の社交会で生きて行くのなら今のままではいけない。


笑顔の裏、言葉の裏表の意味を悟らなければ守りたいものも守れない。


幸いな事に、エスメの開発する生活魔法道具や魔法石の生活発展と、他国への売買の収入のお陰で王家や高位貴族はある程度を寛容に見ているが、それが無ければどうなっていたか判らない。


いつ、原因不明の病気と書かれた手紙がくるかもと気が気ではなかった。


そんな姉弟がこの屋敷に来てからは明るくなり、使用人たちも笑顔が多くなり雰囲気も良く働きやすそうにしている。


家令のイルや家政婦長からの評判も良い。


エスメの独り立ちの練習での態度は更に評価も上げ好印象だし、ディランも勤勉で使用人達に敬意を持って接している。


だから、姉弟の様々な話も耳に届く。


キッチンメイド達からの、エスメは作りたいスープがある。


ランドリーメイド達からの、恋の話しを楽しそうに頬を染め聞いている。


クックからの料理のアイディアが斬新でとても参考になる。


執事からのディラン様の考えた政策の手案は中々の物だった。


副騎士団からのディラン様はお考えは理に叶い効率的で動きやすいです。


上級使用人がこれだけの高評価なのだから勿論、下級使用人達からも


エスメ様とディラン様が楽しいそうに寄り添い話をしていて微笑ましい。


エスメ様がディラン様にお叱りお受けていて心が痛んだがすぐ笑い合っていた。


ディラン様はこっそりエスメ様の美味しそうにお菓子を食べる姿を見て嬉しそうに微笑んでる。


エスメ様とフレディさんが楽しそうに顔を寄せ合い内緒話をしていたので気になって見ていたら、ディラン様に悪戯を仕掛けていた。


エスメ様を迎えに来たフレディさんと仲良く話している姿を見て、ありだと思った。


最後の報告は個人の好みなので好きにして欲しいが、声にだし話題にする事は避けるように言い含めた。


細かく報告してくれるのは嬉しいのだが、見過ぎではないだろうか思うも効率が上がっているので、何も言えない状態でもある。


時には頭が痛くなる話もちらほら聞こえてくるものの、今日は、


ディランをエスメの部屋に呼びお揃いの洋服を着るのだと、エスメ付きのメイド達から聞き楽しみにしていた日。


本人達から招待を受けた訳ではないので、さりげなく部屋へ様子を見に行くスケジュールを立て頃合いを伺っていたが、やってきたエスメ付きのメイド達の


「ディラン様がお心を乱されており、エスメ様とフレディさんから部屋を出るように指示されました」


困惑した表情と声に納得し、


「そう、報告ありがとう。しばらくしたら私も様子を見に行くわ」


女主人らしく冷静に指示を出せば、ホッと息を吐き一礼をし部屋から出ていく背中を見送った。


私が手を出さ無くともエスメに絆されて収まるでしょうけど。


ディランの変化は見てわかるほどだった。


心情的要因、外的要因、様々な事が溜まり重なり起こった事でしょう。


息を落とし、エスメの部屋に行く頃合いを見定める為に、信頼の置けるメイドを派遣し、帰ってくるのを待つ。


「これでも息子を育てた母親ですもの。多感期か思春期でしょうね」


王都から届いた息子夫婦の手紙を視界に入れながら大きな声で独り言を呟き、書類作業へと意識を集中させた。


様子を見に行ったメイドが帰り様子を聞けば中々の荒れようの様で、しばらく待つ事に決めた。


2時間程たったであろうか、再びメイドに様子を見に行かせれば、静かになっていたとので席を立ち部屋を出た。


普段より少し足い足取りでエスメの部屋に向かい飴色の扉をメイドにノックさせると、対応に出たフレディがどこか気まずげに視線をさ迷わせた後、


「ディラン様、エスメ様、お祖母様がお見えです」


フレディのお祖母様との言葉に目を細めると

非礼を詫びる目礼をされた。


いつもは大奥様と呼ぶがお祖母様と呼んだ意図と、フレディの言葉に部屋の空気が揺れたを感じ取り、


間が悪かったかしら?


心の中で首をかしげるが、


「廊下は寒いから部屋へ」


エスメの超えにフレディが身体を動かし入室をすると、


エスメの背中にディランが引っ付いて立っており、


「寒い中来ていただいてありがとうございます」


微笑みと共に告げられた言葉に微笑みを返すと


「実はディランはメイクの練習台になっていた為、トテモお見せできる状態では無いのです」


ご挨拶できない非礼をお許しください。


眉を下げ申し訳なさそうな表情と態度で告られた言葉に頷き、


「あら、少し見てみたいきがするけれど」


告げた言葉にディランが体を揺らし驚きを見せたが


「私が途中経過から楽しくなってしまい、とてもお見せできる顔ではないのです。ご容赦ください」


エスメの冷静な態度と言葉に


「分かったわ。お茶をいただきながら待ちますので落としてらっしゃい」


ソファへと視線を向け、非礼の詫びと許可をたぜば


「ありがとうございます。すぐに戻ります」


フレディ、お祖母様にお茶の準備をお願いね。


その言葉を残しエスメはディランを私から見えない様に庇いながら、部屋の両端に置かれている衝立ての中に入って行く。


ソファに座り少しだけディランに視線お向ければ、下を向き表情は見えなかったが、


泣いたのね。


雰囲気から感じ取り視線を窓の外へと向ける。


先程のエスメの話しは嘘だと分かる。


周りを見渡してもメイク道具はどこにも置いて無い。


嘘をついてまでディランを顔を見せたくなかったのは私への配慮ではなく、ディランへの気遣いね。


純心に見えていたけれど、エスメの方が世渡り上手なのかもしれない。


出来ればこう言う嘘をディランに使って欲しいのだけど。


あの真面目なディランには難しいかしら?


だけど、エスメを守りたいと言うのならば腹芸も覚え使いこなさなければ、共倒れになりうることもある。


テーブルの上に置かれた紅茶を飲み、衝立の中の気配を探るも無言のままではエスメもディランも出て来にくいだろう。


「フレディ、最近はどうかしら?」


壁側に控えているフレディに声をかければ、不快を感じない程度の速さで近くまで来て、


「変わりなく過ごさせていただいております」


従者として当たり障りのない返答に微笑み返し、


「王都では雪は降る事があっても積もることはなかったでしょう?困ってはいないかしら?」


「はい。皆様にお心使いをいただき王都にいた時と同様に過ごさせていただいております」


「それは何よりだわ」


たわいの無い会話をしつつ紅茶のおかわりをお願いし改めて部屋を見渡すと、


少し物が少ないかしら?


エスメが物を欲しいと言う言葉はあまり聞いた事がない。

同様ディランも自分の物は必要最低限だけを持つ様にしている感じがある。


道中の帳簿は見たけれど、当たり障りないお金の使い方をしていた。


ディランの性格は息子にそっくりね。


親子だけどこんな所まで似なくても良かったのに。


心の中で王都に居る息子を思い出し、


そういえばあの子も腹芸が苦手で息子の嫁がこなしているとも報告が来てわね。


エスメが生まれる前にあったきりの姿を思い出し、互いの苦労に親近感を感じるも、


我が家の男性達は真っ直ぐに育ちすぎじゃないかしら?


だから面倒くさい人物に好かれるのよ。


以前、お忍びでやってきた人物と息子を思い出し奥歯を噛み締める。


この分じゃ王都でも同じ事になっているでしょう。


自業自得よ、なんとかしなさいと言いたい。が、本人達は狙ってやっているのではなく相手からの好意なので言いたくても言い出せない歯痒さがある。


ため息を落とし、気分を変えるため紅茶を飲み気持ちを落ち着ける。


そろそろ出てくるかしら?


小さな声の話し声が耳に入り意識を集中すれば、


「大丈夫よ。赤みも腫れも引いてるからバレないわ」


「いえ、お祖母様の事です。言葉に出さない優しさないだけで悟ってはいるかと」


良く解っているじゃないディラン。


心の中で頷き、会話に微笑ましさを感じる。


「お祖母様、優しいもんね」


「ええ。尊敬しております」


微笑みながらの言葉だろう。

2つの柔らかく優しい音の声に心が持っていかれる。


もう。こう言うところよ!


旦那様と言い息子と言い孫達に鷲掴みにされた心に言葉にならない声を上げかけるも、何も感じていないように澄まし顔で紅茶飲み、


「そろそろ、お茶の相手が欲しいわ。エスメ様子はどうかしら?」


衝立から出る勇気がでずいる2人に声をかければ、恥ずかしそうに、申し訳さそうに顔を出し、


「お待たせし申し訳ありません」


ディランの言葉に微笑み


「ディランも大変だったわね」


真っ直ぐと表に出してくる感情に苦笑し、


「さ、お茶の相手をして頂戴」


同じ服を着た姉弟を愛でる為に正面に座らせ、メイドとフレディに紅茶とティーフードを準備させた。



第87話


ポタージュが美味しくて毎日飲んでおりましたら、寒波がやってくると聞きました。

再び雪予報も見ました。皆様、外出時はどうぞお気をつけ下さい。



ブッマークや評価をいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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