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弟は親友と交流を深める

2023/03/05 誤字修正をおこないました。教えてくださった方、ありがとうございます。


止む事の無い雪は除雪をしてもすぐさま積もり、来客を迎える日は準備に加え馬車が移動できる幅や馬車留めから玄関までの道も除雪も何度も繰り返し行う。


「よう」


馬車から降り、顔を合わせた視線を合うと片手を上げ端的な挨拶に苦笑しながらも


「ようこそお越し下さいました」


軽く腰を曲げた礼を返し、すぐさまサンルームへ案内をすると2人して暖炉の暖かさにほっと息を吐き準備した。


ガラスで作られた部屋は館の両端にあり、そちらの1つを使う様にイルに手配をし準備をフレディに告げた。


しんしんと降る雪と雪景色の庭を眺めながらの数日に1度のお茶会を行う。


「今年はよく降るなぁ」


火魔法石を発動させている為に暖かいままの紅茶を飲みながらの言葉に、


「そうなのですか?」


ソーサーにカップを戻し聞く体制を整えると、


「毎年降る事は降るんだが、こんなに連日降った事は少ないし積雪も普段より多いな」


彼が気に入っているブレットを食べながら返ってきた言葉に視線を外に向け


「そうですか」


比べることができる程の経験も体験も無く、頷く事しかできずにいると、


「ここまで降ると諦めもできるよな」


テーブルに右肘を付き同じく外を見ている姿に、


「行儀が悪いですよ」


一言告げると、


「良いんだよ」


にやりと笑いながら返事が返ってくる。


辺境伯の跡取りであり、王位継承権を持つ立場であるものの、王都から距離が離れているからなのか気取らず親しみやすく、相手も気安い仲をとの事で思った事や感じた事を言葉に伝える様にしているが、


乱暴とも言える態度と言葉に戸惑い、呆れつつも彼の態度が報告される事への心配もある。


口を開けてしまうとまた注意をしてしまうので言葉を飲み込むように、サンドイッチに手を伸ばし1口齧る。


ローストビーフを挟んだサンドイッチは噛む程、ブラックペッパーの刺激と肉の味がお互いの良さを引き出し無言で手に持っていたサンドイッチを口の中に入れれば、


「ディランの所のクックは美味いものばかり作るよな」


ブレットを食べ終え、同じくサンドイッチを食べているザッカリーの言葉に、


「ありがとうございます」


同意しつつも、褒め言葉に礼を告げれば


「それにしても、影響力が凄いな」


今度はクグロフを手に持ち食べ始める。


今や街中に広がり誰しもが気軽に作れるお菓子として流行りから定着し出している。勿論ショートブレットも同じ様な流れで定着し、ちょっとしたティーフードから食事まで範囲が広がりつつあった。


それもこれも姉様が気に入り、クックとキッチンメイドに美味しそうだからと案を出し、それを形にクックの腕前と理解力と柔軟性が素晴らしかったのと、嬉々として使用人達が話し広めたのも原因である。


お祖父様もお祖母様も姉様に悪影響は無しとして黙認もしているので更に広がった。


「そんな事はありません」


一応否定の言葉を告げるも、軽く睨まれるも


「ま、領民への貢献具合を見れば仕方ないか」


出された息と共に出た言葉に目を閉じ返事を返す。


姉様の思い付きで作られる生活魔法道具はまず領主の住む館であり我が家である此処で試し運転がされてきた。


万が一の魔法石の暴走などあらゆる出来事に対応できる為でもある。


そこから、様々な使用方法が試され使用人達に託され、使用回数を増やし安定して魔法が発動されるか耐久性はどうかなどを見て、商品に出される。


同時に王都にある魔術省への報告も行われる。


想像できなかった物が生活を楽にし便利に使えるとあれば誰もが喜び買う。


この流れは姉様にも伝えられているはずなのに、なぜか理解ができていないが不思議でならない。


「本人はあまり実感はない様ですよ」


姉様のありのままを伝えれば、


「あー、緘口令か」


王家と高位貴族が決めた事を告げられ、曖昧に微笑み返せば


「ならば仕方無い事だが、鈍すぎる気がするぞ」


どこかが気に食わないらしく、ほんの少し怒りの音がある声に


「常に視線を感じる事も、様々な感情を向けられる事も、当たり前だそうです」


視線を落としカップに入っている紅茶を見つめ、


「気が付いたら1日中見られ続け、様々な感情を向けられる事も悪い意味で慣れてしまった。と、

いつぞや言っておりました」


姉様は自分の心を守る為に、心を鈍くしてるのだろう。


姉様が楽し事や嬉しい事。良く礼の言葉を口にする事、褒める事、それ以外には目を向けない、興味を持たない様にしているのかもしれない。


思考が深く落ちて行くの止める為、カップを持ち上げ冷める事の無い紅茶を一口飲み気持ちの切り替えを図る中、視線を感じ顔を動かせば、


もう1つのサンルームに姉様とメイド達がテーブルを囲み楽しげな雰囲気が見てとれた。


コロコロ変わる表情に何を考えているのかが手に取るように分かる。


「楽しそうだな」


正面から聞こえたザッカリーの声に視線を戻せば、視線は姉様を捕らえておりジッと見ている姿にどのような心情なのかを探ろうとするも、親友を疑う事だと気付きすぐに探るのを止めお互いに姉様を見つめる。


自分達の視線に気づく事は無く、楽しそうに時に話が理解できていないのか曖昧に微笑み頷き返す姿に


「装飾かアクセサリーなどの話ですね」


姉様の表情から推測し告げると


「興味ねぇの?淑女は好きなんだろ」


ザッカリーも姉様の表情から読み取った言葉に


「動きやすい服装を好み、箒に跨る事を好んでおります」


ありのままを告げると


「ふーん」


返事とは言い難い言葉に心の中で首を傾げるも、ザッカリーは姉様から視線を外し


「ディランは外に出れない今、室内でどんな訓練をしてるんだ?」


話題が変わり聞かれるまま返事を返しつつ、時折姉様へと視線を向けるも話題にする事は無く、その日のお茶会は終了を迎えた。


「これからは無理かもな」


降り続ける雪を見上げながらの言葉に、寂しさを覚え


「では、手紙をしたためますので受け取ってください」


するりと出た言葉に、


「待ってる」


笑顔で頷きと共に返してくれたので、頭の中でレターセットはあっただろうか部屋に戻ったら確認をしなければと考えを巡らせつつ、雪の中見えなくなる馬車を見送った。




第83話


お正月が終わってしまいました。今年は計画を立て過ごしたい。と、毎年思っております。


ブッマークや評価をいただきありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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