弟は忍耐力と精神力が試される
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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出会いの挨拶も出来ていない内に呼ばれだ、
子犬
と言う名に驚き言葉を紡げないままでいると、
「なんだ、あの時の威勢は嘘かよ」
鼻にかけ、何処か見下されたと感じる言葉と態度にじわりと怒りを生み出すも、自分の地位と姉様を守る立場を思い出し、体を動かさないよう気を付けながら細く深く深呼吸をし、
「お忙しい中、当屋敷へお越しいただきありがとうございます」
貴族らしく微笑みながら挨拶をすれば、
「今更だぞ、お前」
変わらない態度と言葉に微笑みを深くし、
「次期辺境伯様とお会いできて身に余る光栄でございます」
胸に手を当て貴族の礼を告げれば、
「それはどうも」
適当に返されるも、
「囁かではありますがお茶会の準備をしております」
表情を変えないまま、背を向け歩き出す。
不機嫌さを隠さない態度に戸惑いと少しの怒りを覚えるものの、初めて対面する貴族の種類であって知識としては知っているのだ、冷静に対応すれば良い。
落ち着け。感情に振り回されるな。
頭の中で何度も繰り返し、会場へと歩きながら先程乱れてしまった感情を落ち着け後ろの気配に気を配った。
互いの従者に椅子を引かれ腰を下ろせば、メイド達から紅茶が前に置かれ、ティーフードもセットられれば、お茶会は始まりを迎える。
サンドイッチにスコーン。姉様が気に入っているクグロフも乗せてある。
目視で確認し相手を見れば、同じ様に視線でティーフードの確認がをしており、他の品より少しクグロフを見ていた時間が長かったのを感じ、見つめていれば
「あー、ザッカリーだ。よろしくな」
今までに体験したことの無い手短な自己紹介に
「ディランと申します。これからよろしくお願い申し上げます」
貴族特有の笑みで習う様に手短に自己紹介を済ませると、互いにカップに手を伸ばし紅茶に口をつける。
「ディランとは長い付き合いになるんだ。そんな堅苦しい態度は無しで頼む」
マナーに反した態度と口調にざわめく心を感じない振りをし、
「望むままに」
忠誠を表し仕える者の要望に是と返せば、気に入らなかったのか眉間に皺がより
「お前、本当に犬だよな」
吐き捨てられた言葉に微笑みが消えそうになるも、
「私の弟が犬な訳無いでしょう!」
予想していなかった姉の声に慌て体ごと振り向けば、目尻を吊り上げ怒っている雰囲気を隠す事なく近づいてくる姿に慌て椅子から立ち上がり、
「どうされたのです。なぜ怒っているのですか?」
今にも掴み掛からんとする姉様の動きに静止をかける為、手を伸ばし腕を掴むと、
「ディラン。幾ら友達になりたいと言われても、ディランがなりたくない、嫌だと思えば友達にならなくても良いんだよ」
怒りの矛先が自分に向けられ、告げられた言葉の意味に頷けずにいれば、
「何だよ。守って貰わなきゃ自分の意見も言えないのかよ」
テーブルに肩肘を突き、カップそのものを掴む様に持ち紅茶を飲む姿に姉の怒りの感情が膨れ上がり、落ち着ける為にどうすれば良いのか考え出すも、
「姉である私が、弟を守るのは当たり前の事よ」
真っ直ぐな言葉と態度に思わず言葉を失ってしまう。
嬉しくもあり情けなくもあるが、今は自分の感情は後回しにしこの場を立て直す事に意識を向けなければと思うが、
「情けない奴」
ポツリと零された言葉に思わず感情が表に出かけるが、
「ディランは、博識だし誰よりも努力家で忍耐強く、人の痛みを自分の痛みの様に感じ取れる優しい子よ」
情けなくなんて無いわ。
姉の言葉に、顔が火照り掴んでいた腕を引き意識を逸らそうとするも
「貴方にも大好きな家族や使用人達がいるでしょう。困っていれば助けたいと思うし、笑顔になって欲しいと思う事は恥ずかしい事でもなんでもないのよ」
止まる事の無い言葉にザッカリーの反応を伺う様に見れば、不貞腐れた様に横を向きスコーンを大きな口を上げ齧り付いている。
何が起こっているのだろうか。
怒っていた姉は落ち着きをとり戻り優しく見守る様な視線でザッカリーを見ているし、
ザッカリーは様子を伺うかのようにチラチラと姉と自分に視線を向けている。
姉とザッカリーはあの短い会話で互いの感情が解り理解しあっており、
何もわからない自分は、置いて行かれた様に気持ちと感覚に動けずにいる。
どこからとも無く沸き起こる寂しさに姉の腕を掴んでいた手に力を入れると、頭を撫ぜられ
「あの子、ディランと友達になりたいんだけど、どう接せれば友達になれるのか分からなくてあんな態度を取ってしまったのよ」
耳元で告げられた言葉に、姉の顔を見れば笑っており
「同じ年の子なんでしょ?嘘偽りなく本心を話してみたらどうかな?」
お互いは初めましてだもの偽ってしまうと後々、そんな子だと思わなかった。と、喧嘩になるし、偽る事に疲れてもくるわ。
そんな関係、友達じゃないわ。
ゆっくりと告げられる言葉に頷き返すと、
「ディランには貴族とか爵位とか関係無しに本心で語り理解できる友達が居ると良いわね」
慈しむ様な表情に
「彼とはそういう関係になれると思いますか?」
背伸びをし姉の内緒話をするように耳元で話をすれば、
「大丈夫よ」
自分と同じ様に耳元で返事を返してくれ、背中を押してくれたので
「行ってきます」
伸ばしていた足を元に戻し姉を見上げながら告げれば、
「行ってらしゃい」
笑顔で見送られ、先ほど座っていた椅子に腰掛け、にっこり笑い
「お待たせいたしました。腹を割って話し合いましょう」
この言葉に、姉を見ていた視線が自分に戻り驚いた表情へと変わるのが見れた。
第79話
寒波で寒さに震えながら久しぶりにお空の旅に出ました。ルーレットが有難いです
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