姉、お祖父様と箒に跨る
お祖母様から乗馬服をいただき意気揚々とディランと空を飛んだ日、空が寒いと学んだ私達は様々な案を出し合い、実行し、空へ飛んだ。
そして、
「火魔法が1番暖かくて身軽で安全だったわね」
盲点だったと発案後すぐさま実行に移せば感想のままで、ディランも言葉には出さないものの満足そうな雰囲気なので、これからは風魔法で空を飛びつつ火魔法で暖が取れる様に発動させる。
後は私が2つの魔法を発動しながらどれだけ飛行時間ができるかに焦点が置かれ今日もディランとフレディや騎士の方々に見守られ箒に跨り、空を飛んでいた。
「エスメ、調子はどうだ?」
いきなり姿を見せたお祖父様に振り向き淑女の礼を、ディランもフレディも胸に手を当て礼を取っているのを目の端で捉え、
「問題無く飛べております」
名指しで問われた事への返事を返す。
「そうか。楽にしてくれ」
お祖父様の言葉にようやく礼を解き、顔を上げるお祖父様の顔を見ると
「外から楽しそうな声が聞こえたから見に来たんだ。良かったら飛んで見せてくれないか」
楽しそうに何処か好奇心の色を出しながらの言葉に頷き、ディランとフレディに視線を向けると視線で頷かれ、数歩離れた後、箒に跨り風と火魔法を発動させる。
何度も繰り返すと意識を集中させず飛べる様になり、上昇するのも難なくできるようになった。
お祖父様と視線が合う程の低空飛行で1度止まりお伺いを立てると、頷き1つ返ってきたのでゆっくりと高度を上げて行く。
1階の窓ガラスを越え、屋敷の屋根が下に見える高さで再び止まる。
様子を伺う為にお祖父様を見下ろすと顔は上に向けられているがディランと何か話をしている感じに、もっと上に行くべきか、それともこのまま停止していた方が良いのか、それと降りた方が良いのかわからず居ると、
「なんだろう?」
違和感を感じ左右に首を動かすも何も分からず首を傾げていると、
「エスメ、降りて来れるか」
お祖父様の大きな声の呼び掛けに急ぎ降り、箒から降りてお祖父様の元へ向かうと
「何度見ても気持ち良さそうだな」
にっこり笑いながらの言葉に、
「はい。風が冷たくて遠くの雪化粧した山々が綺麗に見えて気持ち良いです」
寒さで鼻先を赤くしながら笑顔で返せば
「俺も見てみたい。一緒に乗せてくれないか?」
名案だとばかりににっこり笑いながらの言葉に
「はい!」
お祖父様の楽しそうな雰囲気に釣られる様に笑い返事を返すと、自然と右手を取られ先程飛んだ場所まで歩き、促されるまま箒に跨るとその後ろにお祖父様が位置取り、背中を覆うように抱き包み込まれながら手の上から握られた。
背中に感じるお祖父様の温かさと予想外の体制に驚き戸惑うも、
「エスメ、よろしく頼むな」
耳元から聞こえたお祖父様の声に体を揺らし驚くも、
「は、はい。では飛びます」
上擦りながらも返事を返し、火と風魔法を発動させゆっくりと浮上させた。
「おお、これは凄いな」
驚きと楽しさの音をのせた言葉がすぐ近くから聞こえ、普段より大きく速く打つ心臓と恥ずかしさで集中を切らさない様に必死になりながらも箒の柄を持てる力で握り締めるが、
「エスメもっと高く飛べるか?」
お祖父様の言葉に頷き、風魔法の下から上に上げている力を強め屋敷の屋根を越え目の前には雪化粧をした山々が見える高さまで上がると、
「聞いた通り綺麗だな」
感動したと使える言葉に高度が上がる程に抱き込まれている力と手を上がら握られている力が強くなり、
火照る体をと不正動脈を押さえ込み事に精一杯で数度頷く事で返事をすと、
「エスメ、空を飛ぶのは風魔法を発動であり箒は関係ないとディランに聞いたが合っているか?」
先程までの楽しい雰囲気から一変、真剣な声に、
「はい。仰る通りです」
ほんの少しだけ冷静になれ返事を言葉で返すことができたが、さらにお祖父様の言葉は続き
「なら、俺が箒の柄を持つのでエスメは手を離してみてくれ」
突然の発案に驚くものの、
「離す事は絶対にしない。少しだけ良いんだ。試してくれないか」
更に真剣身を帯びた言葉に戸惑うながらも頷くと、上から握られていた手が離されひんやりとした空気が手の甲を撫ぜられるのを感じ、ゆっくりと片手づつ離し手持ちぶたさになる両手を胸の前で握り締める。
箒の柄から手を離しても自分が風魔法を発動し続ければずっと飛ぶ事はできる。
昔と言う前世で見た通り人だけで飛ぶ事だってできる。
何度も飛んで理解できたけど、どうしても箒に跨り空を飛びたかったので敢えて言わないでいた。
アニメみたいに空中で戦うなんて事が無ければ、箒に跨っていても邪魔にならないし、杖を作って振り回しながら魔法を発動させれば良い。
あ、ちょっとやってみたい。
今度、ディランとフレディの前でやってみよう。
背中の感じるお祖父様の体温と息遣いから意識を逸らす為に考えに没頭するも、
「なるほど。箒は無くても空を飛べるのか」
何かの疑問を感じ納得ができたのか様な言葉に没頭していた意識を戻し、少しだけ視線を上げお祖父様を見上げると、片腕がお腹に回り太腿の上に座るように動かされ、思わず
「あ、あの、お祖父様」
戸惑うの声を上げるも、
「落とす事は無いがしっかり捕まっているんだぞ」
カラカラと笑いながらの言葉に恐る恐る首に手を回し体制を固定させる。
その後はお祖父様の指示で上下に動いたり大きく円を書く様に何度も回り、お祖父様の抱き上げられたままの体制へ地上へ下りた。
箒の柄から降りたお祖父様に抱きあげられたままディランの元へ連れていかれると、
「ディラン、長い時間エスメを借りてすまなかったな」
そんな言葉と共に地面に下ろされ、
「エスメも邪魔をして悪かった」
大きな手と強い力で頭をひと撫ぜし屋敷へと歩いて行った。
ぼんやりとお祖父様の背中を眺めていると、ゆっくりと先程まで行動と温かさを思い出し、
「でぃ、でぃらん」
震える声で隣にいるディランに声をかけると、すぐさま体を向けてくれたので火照る顔と急激に心を支配する恥ずかしさに戸惑い、ディランに行き良く抱きつき、目一杯抱き締める。
「姉様、痛いです」
胸元から聞こえるディランの声に聞こえないフリをし更に力を入れれば、ため息の後、背中に腕が回されあやす様に軽く背中を叩いてくれた。
それでも恥ずかしさと何か沢山の感情が混ざり暴れる心と冷静になれない頭は一向に落ち着かず長い間抱きしめ続け、何とか落ち着け
「ディランごめんね。ありがとう」
ゆっくりとディランの背中から手を離し体を動かせば、自分の背中に回っていたディランの腕も離れお互いの顔が見れる程離れると、
「お気になさらず。ですがもう少し力の加減をしていただけると嬉しいです」
謝りと礼に対しての言葉に頷き返すと
「姉様、もう1度だけ空へ行きませんか?」
微笑みながらのディランの珍しい提案に笑顔で答え、すぐに空へと飛び立った。
乗り慣れた同士なので遠慮なく浮上する中、ディランの視線がある1点に止まっているのに付き
「どうしたの?何か気になることがあった?」
行ってみる?
お祖父様の時はな逆の体制でディランの耳元で問えば
「いえ、お気になさらず。もう少し上がり山々や街並みが見たいです」
首を振り、更に珍しいお願いに嬉しくなりスピードを上げ浮上し、しばらく2人で眼下に広がる街並みや雄大な山々を眺め続けた。
第76話
雪が降って以来、本格的に寒さがやってきましたね。メガネが曇り非常に困っています。
ブッマークや評価をいただき誠にありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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