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姉、気を揉む


先程までの何処か固く

歪さを感じた雰囲気が

甘いミルクの香りと口の中に

広がるはちみつのまろやかさ

で心がほぐされてゆき、


「ねえ、ミランダ。ルイから

手紙とか届いてる?」


何か話題をと考え1番最初に

浮かんだ事を、さらりと言葉に

すると、


自分でも驚く内容でだったが、

なんでもないと表情を作り返事を

待つ。


自分同様にほんの一瞬驚いた表情を

したミランダもなんでもないと、

普段の表情に戻し、持っていた

カップをソーサーに戻し、


「いえ、いただいておりませんわ」


返してくれた返事に、


「え?1通も届いてないの?」


自分も持っていたカップをソーサー

に置き、体を前のめりにし聞き返せば


「ええ。エスメさんの封筒で一緒に

届けられて以来はありませんわ」


ミランダからの答えに、体から力が

抜け、ゆっくりと体を倒し背もたれ

身を預け、


「何してるのよ、ルイ」


視界に広がる天井を見ながら溢した

言葉に、


「エスメさん」


注意の意味を込められミランダに

名前を呼ばれ、


「ごめんなさい」


謝罪をしながら、体を背もたれから離し

背筋を伸ばし座り直すと、


「便りが無いのは問題なく過ごせている。

そう思っておりますの」


なんでも無いように、カップを手に持ち

ロイヤルミルクティーを飲み、

見惚れる程に綺麗な淑女の微笑みを

返してくれた。


が、どう見ても本音を隠しているし、

悟られたくない、探られたくない、を

微笑み混ぜており、


「もう、ルイは何を考えているのよ」


ミランダの気持ちを自分なりに考えると

自然とルイの行動に怒りが湧き、

少し大きな声と早口て告げた言葉の後、


どうせルイ、本人はいないのだから

話したい事を話したって構わないわ。


浮かんだ考えに心の中で盛大に賛同し


「ルイはね、私の身長をあっという間に

越してしまったし、筋肉だってついて

一回り大きくなったの」


誰かに止められる前に話切ってしまえと

勢いよく話し出す、


「だからと言って、性格が変わったと

言う事はなくて、領にいた時のままで

誰にでも優しいし手を差し伸べているわ。

勿論、適切な距離を保ってね」


ミランダが心配することは


何、1つ無い。


絶対に告げなければならない事を

しっかり言葉にして伝え、


「私の事も、気にかけてくれ

守ってくれてるから」


そう伝えると、


「当たり前ですわ」


間髪入れず返ってきたミランダの

言葉に驚きつつ


「う、うん。感謝してる。

いつも、さりげなく遠ざけて

くれてるの」


先程まで話していた速さが遅くなり

つつも話を続け、


「マリーの淑女教育の時は一緒に壁側で

控えているのだけど、何か思う事がある

みたいでしっかり聞いてるし、お茶の

準備は率先して重いテーブルを動かして

くれて助かってるわ」


ルイも何か思う事があるようで、

アメリアとマリーの話を真剣に聞いて

いるし、終わる雰囲気やアメリアからの

小さな合図も見逃さず動いてくれ、


「調子が悪くて昼休憩の散歩にも

嫌な顔せずについて来てくれるし、

学力だって、私に気を遣って2位だけど

本気を出せば1位になれるはずなのにね」


話している内に調子が戻り、ころころを

笑いながら話を続けると、


ミランダは柔らかく微笑み、コナーさん

も仕方ないとばかりに、困った様に眉を

下げ微笑んでおり、


「私が原因なんだけど、ディランが

反抗期の時にルイが手合わせをして

くれたの。凄かったのよ」


流石に手合わせの様子の全てを言葉に

表すのは身振り手振りに擬音まで

入れて表現をしてみると、控えている

3人とコナーさんは楽しそうに笑い、


ミランダも優しく、柔らかに

微笑んでいる。


これで、ルイのことが伝わると

良いのだけど。


恥ずかしがりでは無いと思うのけど

何故かミランダには手紙を送ら無いのは

ルイの中で考えがあると思う。


けれど、ミランダが寂しかっているのは

違うと思うなぁ。


心の中で息を落とし、


帰ったらそれとなく言おう。


そう決め、


「まぁ、1番強かったのは騎士団長だけど

ディランもだけど剣を合わせているのは

とても楽しいみたい」


男の子だよねぇ。


息を溢しつつ言葉も溢せば、


幼子を見守る様な雰囲気とやや呆れが

混ざった雰囲気にそれぞれが思う事が

違うようで、


「私としては2人が楽しいのなら、

良いのだけどね」


楽しそうに笑う2人を見ていると

止めるのが不粋の様に思い、つい

フレディと共に見守ってしまう。


「いつまでも仲良しでいて欲しいな」


姉のささやかな願い。


そんな話をしていると、窓の外は

日が傾き、空の色が変わり出していた。


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