姉、話を真剣に聞く
平民から貴族籍へと立場が
変わった女性生徒。
貴族籍が無く、卒業が平民として
街で過ごす自分。
立場は違うとはいえ、
中々無い立場でいる女性生徒に
無意識に親しみを感じていたのかも
知れない。
コナーさんの話を聞きながら、頭の
片隅でそんな事を考えていると、
「隣国の事例とよく似ているのです。
警戒しないと言うわけにはいきません」
熱烈に怒りを見せていたコナーさんは
話している内に、少し冷静になってきたのか
それとも、逆なのか、
淡々と告げられて言葉に、
隣国の事例と評された出来ごと思い出す。
確か、平民から子供として向かい入れられ
貴族籍へとなった令嬢を殿下の婚約者が、
いじめをし、殿下が婚約破棄をした。
「えっと、吟遊詩人が歌っていた物語
でしたよね」
記憶が正しいか確かめる為に尋ねると
力一杯頷かれ、
「何もしていない無罪の貴族令嬢を、
なんの権限も無いのに追放したのです」
答えを返してくれたコナーさんの言葉に
私情がたっぷりと含まれており、
「ルイも、貴族がそんな平民というか、
子供が考える事をする訳ないだろう。
て、言っていたから覚えているわ」
この出来事の当人であるミランダが
何も言わず微笑んでいるだけで、
コナーさんと壁側に控えている3人の
怒りだけが膨らんでゆく。
気持ちは分かる。
無いけれど自分の立場なら許す事は
できない。
でも、皆と怒りの大きさの違いは
貴族籍を持っているか、持っていなか。
その違い。
立場が違えば、感じ方が違うのは
当たり前で
「もし、ですよ。もしを前提の話ですが」
コナーさんの言葉に、考えていた事を
中断し、視線をむけ聞く態度を示すと
「仮の話としてお聞きください」
先程までの怒りはどこへ行ったのか
真剣な表情とどこか硬い声に頷き
続きを促すと、
「ディラン様が同じとは言えませんが、
よく似た立場になられたら、
いかがなさいますか?」
問われた言葉に瞬間感情が動いたが
細く息を吐き出し、
「それは、どの立場で返答をすれば
良いですか?」
追放された令嬢の立場なのか?
それとも、追放を言い渡した殿下の
立場か?
話を聞き慎重に考えて答えを出
さないと。
荒ぶる感情を無理やり抑え、質問に
質問を返せば、
「追放を言い渡す側の立場です。
隣国の件は殿下だけではなく将来側近
として働く者達もおりました」
コナーさんの言葉に、息を呑み、
瞬間に言葉にできない感情が爆発
仕掛けたが、アメリアから教えて
もらった感情操作を必死に思い出し、
「そ、そうね。確かにディランは
側近とまではいかないけど、
生徒会役員だけでども」
なんとか言葉を並べ、時間を稼ぎ
冷静になろうとするも、
「叱るかぁ。できれはそこまで
行く前に気づきたいし、注意も
して止めたいな」
なんとか絞り出した答えを
コナーさんに返すと、
「ええ。私達もディラン様がその様な
愚行をするとは思っておりません」
自分の言葉にできない感情を見透かされ
言葉にされた様に感じ、胸の中に
ストンと入ってきた。
そうね。
ディランはそんな事しないわ。
そう言いたかったのだと理解し、
納得でき、頷きを返事にすると
「ですが、闇の魔法はどうでしょう?」
いきなりの単語に理解が追いつかず
はつりと瞬きをすると、
「マリー嬢が光の魔術を使えると
言うならば、闇の魔術を使える者が
どこかに居るはずですわ」
ミランダの言葉に、理解が追いつか
ないまま頷くと、
「闇の魔術は不明とされています。
もし、それは人の感情を操る、鈍らす
のを主とするのならば、書籍に
残す事はしないわ」
続いて告げられた言葉の意味を考え
「悪用されるから」
ボソリと出た答えをこぼすと
「そうですわ。残せば探す者、取得を
しようする者が必ず現れる。そうなれば
秩序が乱れるもの」
「そして、対抗できるのは光の魔法を持つ
者のみです。マリ嬢が居るのならば闇の
魔法を持つ者が生まれているはずです」
ミランダの答えにコナーさんの言葉に
壁側に控えている3人の息を呑む音が
聞こえ、
「光と闇は対比する魔術ということね」
嫌な予感しかしない話の方向に向き
溢した言葉に、
「令嬢達が泣いている件、私の勝手な
憶測ですが、闇の魔法が絡んでいると
思っております」
コナーさんの言葉は誰もが考えの
1つにあった言葉に、
「コナー」
諌めるようにミランダが名を呼ぶも
「ですが、領主ご家族に関わる事、
いつまでもでも、かもやもし、で話を
進めないのは危険です」
自分の意思と考えの元の行動だと
告げるコナーさんに嬉しくも、
ありがたく思い、
「確かにそうね。学園に行ったら
確かめてみるわ」
一応、私も光の魔術を使えるし。
声に出した言葉と心の中で留めた
言葉でコナーさんとミランダ、そして
壁側で見守ってくれた3人に伝えると
張り詰めていた雰囲気が緩み、ミランダと
コナーさんと自分が同時に紅茶を飲み干し、
「新しい紅茶を淹れてまいりますね」
テアさんの言葉に、
「甘いのをお願いします」
お願いをしたのも自然な事だった。




