姉、夢中で話す
彼女のことを詳しく話すのは
ミランダとコナーさんが初めて
かもしれない。
真剣な表情で聞いてくれる
ミランダ。
時折、眉間に皺を寄せ立ち
目尻が尖ったりと、小さな変化を
見せてくれるコナーさん。
伝えたのは、
名前は知らないが、平民から侯爵家に
養子に入り貴族籍を得て、通学している
女の子がいる。
マリーの薄く淡いピンクの髪よりも
濃いピンク色をしており、
男性生徒に大変人気の様で、
朝、廊下ですれ違う時にいつも
男性生徒に囲まれている事に加え
「毎朝、視線が合ってね。最初の頃は
ルイに気をつけるように言われたわ」
2年程前の事なのに随分昔のように
思い出し、小さく笑いつつ
「結局、何も起こらずお茶会で
助けて貰ったのよ」
素敵な人なのよ。
そう言葉を繋げようとしたが、
「男性生徒は貴族籍の方々ですか?」
コナーさんからの硬い声の質問に、
「と、言う訳ではないみたい。
ボーイック。あ、同じクラスメイト
なのだけど、彼もお姫様だと言って
慕って、と言うより恋してる感じ
だったわ」
少し思い出し告げた言葉に、
「ボーイックという方は、確か
王家御用達の商会のご子息でしたね」
ミランダの言葉に、頷き
「そうよ。その、彼女に恋をしてから
貢ぎ癖があったようで、ルイが少し
呆れながら話してくれたけど」
語尾を濁した言葉を
「貴族では会うたびの手土産や
贈り物を準備するのは当たり前の
行動ですわ」
ミランダが引き継いでくれた。
平民と貴族の常識とマナーの違い。
「それもあるけれど、好きな人の
喜ぶ顔はいつでも見たいじゃない?」
それは、恋とか恋愛とか関係の無い
当たり前の考えだと思う。
そう告げると、
「左様でございますね」
コナーさんが困った様に微笑み
「ええ。そうね」
ミランダも同意だと頷いてくれた。
嬉しい、楽しいと笑ってくれるのに
恋とか恋愛とはか関係ない。
大切の人にそう思って欲しいだけ。
「ただ、ルイが苦言を言うならば
度が過ぎていたのでしょう」
コナーさんの言葉に、
「贈り物や金額を聞いた事はないけれど
ルイが言うなら、そう言う事だと思う」
後にご家族に叱られ怒られていると、
クラスメイトか聞いたから。
「最近は学園にも来てないから、
会えていないの」
寂しく思い溢した言葉に、
ミランダもコナーさんも見守ってくれ、
少し暗くなった雰囲気を変える様に、
「そうだわ。送って貰っている
ハンカチを多めに送っての欲しいの」
お願いの1つを思い出し、なんの脈絡
なく告えると、
「勿論、準備いるわ。
手紙でもそう書かれておりましたわね」
ミランダが頷きつつの不思議そうな
言葉に
「最近、泣いている子をよく見かける
様になって」
理由を伝えれば
「よく?」
コナーさんの言葉が鋭くなり
「理由は聞いてないのだけど、
貴族クラスの女性生徒の子が」
言って良いものか迷いつつも
理由を伝える必要があると思い
口籠もりながら伝えれば
コナーさんだけではなく
ミランダや壁側に控えてくれた
テアさん、ボニーさん、ハンナさんの
怒りの雰囲気も変わり、
「エスメさん」
ミランダの呼びかけに
「はい」
姿勢を正し返事を返すと、
「平民から貴族へとなったその淑女は
今、どのように過ごされているか、
お分かりになりますか?」
珍しく感情が表に漏れており、
怒りを押し殺したミランダの言葉に
「えっと、今年度から上位貴族が所属
するクラスに編入したと聞いたわ」
言葉を詰まらせながら返すと
「泣いている女子生徒と会うのが
多くなった事はいつ頃からですの?」
口調が出会った頃に戻っているのに
気づきつつも、
「今年度に入ってから、かな?」
記憶を辿りに返答すると、
壁側の控えている3人の怒りが
大きくなったのに気づきつつも
3人で控えてくれてたのに
気づかなかった。
話に夢中になっていた事に気づき
心の中で反省しつつ、
なんとなく、ミランダ達が考えて
いる事が分かりつつも
「ほら、将来を決める時期だし、
意見の食い違いがあったのかも
しれないわ」
話の話題になっている女性生徒の
フォローに入るも、
「対策が必要ですね」
コナーさんの言葉と声と怒り
の強さ頷き、はいと返事をする
以外の答えはなかった。




