姉、食事を楽しむ
1人での晩餐へ行く準備。
改めて考えてみるも、普段と
変わる事は少なく、
「これでドレスなら1人は無理
だけど」
柔らかい布の着慣れたワンピースで
ドレスの様にアレコレをつけ締め
付ける必要はない。
香水はつけない。
匂いはお風呂で取れているけど、
お湯の中に入れたハーブの匂いで
薄まっていると思う。
化粧は薄く、口紅も濃さに気をつけ
髪型はそのまま。
鏡に自分の姿を写し確認を終え、
机に置かれているハンドベルを手に
取り音量に気をつけつつ揺らし鳴ら
せば
「お呼びでございましょうか?」
懐かしい人物がベルの音に気づいて
くれた様で、姿見せてくれたがメイド
としての姿勢を崩していない今は、
声をかけ思い出話に花を咲かせる訳
にはいかず、
「晩餐の場所へ案内を、お願いします」
求められた姿勢を保ち呼んだ理由を
伝えると、
「かしこまりました」
腰を折った一礼ののち、2人で自室を
出て赤く毛足の長い絨毯の上を歩く。
掃除機を作っている時にお世話になった
廊下に頭の中で思い出し笑いを歩き、
扉の前で足を止めた部屋は、
初めてお祖父様とお祖母様と対面した
部屋だわ。
何もかも懐かしく、思い出に浸りつつ
開けられた扉を潜り、先に到着をしていた
お祖父様とお祖母様の笑顔に迎えられ、
引かれた椅子に腰を下ろせば、
すぐに食前酒である白ワインが注がれ、
「では、いただこうか」
お祖父様の一言にお祖母様よりほんの
少し遅く頷き、ナイフとフォークを手に
とった。
前菜にマッシュポテトが添えられた
赤ワインベースのソースがかかった
焼いた肉の時は赤ワインに変わり、
白身の川魚には白ワイン。
まだ、大人ではない事を配慮され
グラスに注がれるワインは半分以下。
無理の無い量を見極め。
酔う量を知る意味も込められている
のかも。
自分が参加できなかった収穫祭の
話や街の雰囲気や流行りなど、
楽しく時に笑いつつも、お祖父様と
お祖母様も時折、グラスに視線を
向け、私の顔色や口調に態度など
注意を向けてくれている。
王都ではできない事もないけど、
ディランの前で酔った醜態を見せる
事はしたくない気持ちを理解して
くれている2人に感謝しつつ、
酔うとどうなるのだろう?
疑問が浮かび、2人が見てくれて
いるのなら甘えてみようと、
「このワイン美味しいですね」
話題になるように言葉にすると、
「気に入ったなら良かった。
少量だが、領でもできてな」
お祖父様の言葉に、
「製造を始めたのですか?」
今まで作っていなかったワインの
話に驚き聞き返すと、
「ええ。産業の収入があるもの。
でも、だからこそワインも生産し
ても良いかもしれないと思ったの」
お祖母様の言う産業は、
生活魔法道具
紙刺繍
で、確かに領の収入はこの2つの
工房が主になっている。
だからと言って頼りきりにするのは
良くない。
そう言う事だろうか?
心の中で首を傾げつつ話に耳を
傾ければ、
「この領にくれば、
新しい事が始められる。
そう言って移住してきた者が多く
いてな、それに答えていたら、
いつの間にかできていた」
お祖父様の言葉に驚き動かしていた
手を止め、お祖母様をみると、
困った様に眉を下げつつも微笑み
「エスメが王都へ行ってすぐ移住した
者が研究者が持ってきた苗が初めて
実り、できたワインなの」
お祖父様の話を引き継ぐ感じの
お祖母様の言葉に
「そうなのですね。明日、街に
出るのが楽しみです」
空から見た街に大きな変化は
見つけられなかった。
けど、歩けば違うのだろう。
明日の事を伝えると、
「ええ。色々な人と話してくる
良いわ」
お祖母様の言葉に返事をし、
「気をつけて行くんだぞ」
お祖父様の言葉にも同じく
頷き、楽しい食事時間は終わり
食後の時間もワインを少しの
つまみもいただきつつ、
話し足りなかった学園での
クラスメイトとの思い出を
話していると、
あっと言う間に世も更け
「そろそろ、おやすみの
時間かと」
イルさんの言葉に、
「もうそんな時間か」
残念そうにお祖父様が言葉を
溢しつつもソファから立ち上がる
ので、お祖母様と共に立ち
「名残惜しいですが」
そう前置きをし、自室に戻る事を
告げると、
「おやすみ、良い夢を」
お祖父様からの就寝の挨拶に
「おやすみなさい」
お祖母様の就寝の挨拶に
「おやすみなさい」
同じ様に挨拶を返し、部屋を出ると
これまた懐かしい人物が自室まで
伴ってくれ、
「おやすみなさいませ」
自室には入らず、部屋の前で
就寝の挨拶を貰い、
「ありがとうございます。
おやすみなさい」
会話は無く自室の前で別れた
事が少し寂しく思うも、
自分がお願いした事だと、
思い直し自室の扉を開け
ベットへと歩き、身を沈めた。




