姉、練習を始める
間も無く夜を迎える空と山々、
足元にはポツポツを灯が点る家々
足早にどこかへ向かっている人々。
眼下に広がる懐かしい風景を眺めつつ
街より少し離れた屋敷に帰りつき、
玄関前で箒から降りていると、
「お帰りなさいませ」
いきなり聞こえた言葉に、全身を
揺らす程に驚き、聞こえた方向に
振り向くと、
イルさんが微笑みながら立っており
「ただいま戻りました」
降りる前に誰もいない事を確認した
つもりったけど確認が足らなかった
事を反省しつつ、帰宅の挨拶を返す
と
「朝はお出迎えができず、
申し訳ございません」
返ってきた言葉に、瞬きをし
「いえ、急な事でしたので」
イルさんの謝罪に気にしていないと
告げたのち、2人で玄関が潜り
「あ、イルさんに頼みたい事が
ありまして」
丁度良いと思い、歩く足を止めない
まま
「長方形の箱とリボンが欲しいのです」
先程、親方さんから受け取った
ネックレスが入るほどの箱とラッピング
をする為のリボンをお願いすると、
「かしこまりました」
自分の考えを察してくれたのか、
微笑みと共に頷きも返り、
帰りまでに良い箱とリボンが揃う事に
安堵していたら
「間も無く晩餐の準備が整います」
半分程、イルさんの言葉を聞き流して
しまったが、
「はい、向かいます」
晩餐の言葉でなんとなく察し、
自室へと入ると同時にイルさんと別れ
最速で晩餐様に身なりを整える段取り
を頭の中で考えつつ、
まずは本棚の横に箒を置いて、
浴槽へ足を向け準備をする。
領にいた頃、いつもお世話になった
3人のメイドさんがいた。
でも、今日は自分1人で準備をする。
卒業後の一人暮らしの練習をしたいと
お祖母様へ手紙でお願いし、叶えて
貰えた。
今日、明日は1人で自分のを事行う。
この屋敷にいる以上、食事は食べたいと
お祖父様が望んでくれた事を今朝の
手紙で書いてあったので、
ありがたく思い、お願いをした。
「さて、お風呂の準備をしつつ、
着替えの準備もして、あ、髪は
そのままでいっか」
今朝、マルチダが編み込んでくれた
髪を解くと自分で結い直す事はできない。
見逃してもらおう。
晩餐が終わったら、
もう一度お風呂だなぁ。
ぼんやりと思いつつ、入浴をする為に
移動をした。




