姉、気付かされる
親方さんと話を終わらせると、
「贈り物はすぐにできる。待ってろ」
高い背、大きな体、節々太く
手の平が大きい手
親方さんから作られるアクセサリーは、
街だけではなく王都でも人気であるが、
多く数ができる訳では無いので、
価値が上がり、売値が上がっている。
欲しいと希望する人達の元へ届けば
いいが、
親方さんが
「生活魔法道具を作るのが本職であり、
弟子へ技術を教える時間も必要で、
無理だ」
そう、イルさんを通し伝えているので
無理を言いお願いするのは自分以外
おらず、
申し訳ない気持ちもありつつも
「気にしないで。あの人、エスメさん
の事子供か孫の様に思っているから、
そんなの可愛いお願いよ」
コロコロ笑う婦人に頷き、待ってい
間は話相手になってくれるらしく、
「エスメさん、王都はどう?
学園は楽しい?」
婦人の質問に、頷き、これまでの
学園で過ごした日々を話していくと、
あらあら。
まあまあ。
絶妙な相槌を貰い、友達話している
様な気軽さを感じ、
つい、
「ボーイックが学園に来ていないのです」
手紙では知らせていたものの、自分の
口から言った事の無い、内容を話して
しまい、心の中で慌てるが、
「失恋でもしたのかしら?
愛していた人ともう関われない、
話す事もできない。
となると行きづらいわよねぇ」
まるでで日常会話のような気軽さで
帰ってきた言葉に、返事を返せずに
いると、
「彼は将来を考えた、本気の愛だった
かもしれないわ。けれど、違った。
気持ちが大きければ大き程に心は傷は
深くなるものよ」
続けて告げられて言葉が心にしっくり
ハマり、
「失恋。思いもしませんでした」
ポツリとこぼした言葉に、
「エスメさんはディラン様を中心に
しているもの。親愛や家族愛は
十二分に理解できても、
異性や恋人への恋や愛は難しい
かもしれないわね」
婦人は小さく笑いながら教えてくれ、
さらに
「恋人ができたら教えてちょうだいね。
あの人、泣いちゃうかもしれないけど」
視線で親方さんの方を向き告げられた
言葉に、反応に困りつつも、微笑み
「はい。その時が来ましたら」
頷き返すと、
「ディラン様の結婚式は街を上げて
行うけれど、エスメさんの結婚式は
どうするのかしら?」
ご家族のみ?
それとも街全体?
想像をしているのか楽しそうに笑い、
次々に来る質問に、
「どうでしょうか?」
恋愛もしていなければ、恋もしていない
今、その質問に答える事はできず、
曖昧に返事をすると、
「そうねぇ、ディラン様のご婦人になる方
は、器用で心が広い方が良いわねぇ」
ご婦人の言葉は止まらず、
「ディラン様の1番はエスメさんだし、
それを納得し理解ができている方が
良いと思うの」
楽しそうに弾む様に告げられた言葉に
言葉で返事はせずに、困ったように
微笑むと、
「この街の繁栄を表す姉弟なのよ。
そこは理解していただかないと」
楽しそうに笑っていた表情が、急に
真剣な表情に変わり、
「お2人の幼い頃を知る私達にとって、
2人並んで笑い合って過ごして貰うの
事が希望なのよ」
ご婦人の言葉に、領で過ごした
懐かしい思い出が蘇り、心を和ませて
いると、
「なんなら、養子を貰えば良いのでは。
そう思っている人だって多いわ」
思いもしない言葉に、驚きご婦人の
顔を見ると、
「もしもの話よ。良い方と結ばれるのが
1番だけどね」
真剣な表情のままの言葉に、返事が
返せずにいると、
「まぁ、話を聞くにその噂の令嬢だけは
駄目です。冗談ではなく本当に駄目です」
さらに真剣な表情と共に固い声で告げられ
「これは私の勘ですが、その令嬢、
色々やらかしていそうなので、接触しない
方が良いです」
説得される様に告げられた言葉に、
「ですが」
お茶会で助けられた事を伝えるとも、
「良い子なのでしょう。ですが、親が
駄目かもしれません」
返された言葉に、確かにと思いつつ
「領主様達は仲が良く、互いに尊重し
助け合い、愛し合っている事は領民
全員が知っています。
ですから、不倫、隠し子など、
嫌悪感がどこの領よりも感じるのです」
たされた言葉に戸惑いつつ頷き、
「子供に罪はありません。親となった、
大人が心の制御と社会的立場をきちんと
理解していないのが悪いのです」
感情が昂っていいる様で、声も大きくなり
ついに
「いい加減にしないか」
親方さんの静止が入り、
「工房中にお前の声が響いていたぞ」
足された言葉にご婦人は頬を膨らませ
「そうだけど、ちゃんと話さないと」
ご婦人の中にある主張を伝えると
「分かってはいるが、声が大きい」
一言の注意の後、
「すまなかったな」
親方さんより謝罪をもらい、
慌て首を振り、
「いえ、勉強になりました」
そう伝えると、ご夫婦共に
笑ってくれ、
「待たせてすまなかった」
親方さんより手渡されたのは、
綺麗にカットされた一粒の魔法石が
ついたペンダント。
「ありがとうございます」
即座に作ってくれた事と、歓声を上げ
見惚れるようなペンダントに仕上げて
くれた事へのお礼を告げ
「間も無く日が沈む、気をつけて
帰るんだぞ」
ご婦人の引き止めを予想しての
言葉に返事を返し、そのまま玄関から
でて、立てかけていた箒を手にとり
「ありがとうございました」
見送りに来てくれたご夫婦に頭を下げ、
箒に跨り
「気をつけて」
心遣いの言葉に笑顔で頷き屋敷と向かって
飛んだ。




